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失恋と美容院

 リマインダーが自己主張を始めたので重い腕を上げてスマホの画面を傾けるとポップアップが美容院の予約を点滅させた。先週予約した時にはアイツのスケジュールを気にしていたのにと思うとほっとしたような妙な欠落感に溺れそうになった。
 予約した時には予想もしなかった事態に直面して、失恋した直後に髪を切るという行為の気恥ずかしさを初めて認識した私は予約サイトを呼び出した。もちろんキャンセルするためだ。だがキャンセルボタンをタップする直前気が変わった。私は長らく誰かの予定に合わせ続けたせいで休日の午後にぽっかり空いたスケジュールの埋め方を忘れてしまっていたのだ。だから私はキャンセルではなくメニュー変更のボタンをタップした。

カットはやめてヘアエステで艶髪を手に入れよう。
その後には久しぶりに誰かの予定を気にしない休日がたっぷりの時間が待っている。何をして過ごそうか?


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