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渡航禁止の未承認国家、ナゴルノ・カラバフ


先日、『引きこもりバックパッカー:マイペースにゆるく海外を旅する思考法』という本をKindleにて出版しました。期間限定で1節毎無料公開しています。
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公開済みの記事はこちらから↓
https://note.com/ryo11193/m/m599114c5ac6f


日本に居場所がないなら海外を旅すればいい。「海外に興味があるけどハードルを感じている」「これまでと違った景色をみたい人」「引きこもりがちな人」
そんな人たちがこれまでよりも旅が身近になるような、マイペースなゆるい旅とは? 海外旅に興味がある人、引きこもり生活に飽きた人、新しい自分に出会いたい人、必読。”引きこもりながら”海外を旅してきた筆者が提唱する、脱力系バックパッカー論。
りょいち                                 1997年生まれ。東京都出身。同じFラン大学に2度落ち、行ける大学がなくなる。約3年間の引きこもりの後、中学英語もわからない中、初海外で所持金6万円とバックパック1つ単身でジョージアへ。それがきっかけでそのまま4ヶ月間で計15ヶ国を旅した後、ワーホリビザで2ヶ月間オーストラリアへ。帰国後はインターンを経た後、ベンチャー企業でフリーランスとして活動しつつ、自身でIT企業を起業。
(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)



ナゴルノ・カラバフ(別名:アルツァフ共和国)という未承認国家に行ったときのことです。

未承認国家とは、国家としての機能を満たしているのの、他国に国として認められていないという国のことをいいます。この国は隣国のアルメニアとアゼルバイジャンという国が、ナゴルノ・カラバフを巡って揉めています。

いわゆるナゴルノカラバフ戦争と呼ばれるものが未だ未解決で、執筆時の直近だと2016年の4月に戦闘がありました。それもあって2019年2月6日現在、外務省のホームページには「渡航中止勧告」がでています。 

「渡航中止勧告」が出ているとはいえ、ナゴルノ・カラバフはアルメニア人が住んでいる国で、1ヶ月間アルメニアにいたぼくとしては「アルメニア人がいるなら大丈夫だろう」という安心感があり、何かあっても自己責任ということで行くことにしました。

1ヶ月アルメニアにいたのにナゴルノ・カラバフの存在を知らなかったのですが、ゲストハウスで引きこもっていたときに出会った人がきっかけで、この怪しげな国の存在を知ることになりました。当時のレートで2,000円ほどの交通費で行くことが出来ました。

 実際にどんな国かワクワクして行ってみると、「渡航中止勧告」が出ているような危ない国にはとても思えませんでした。

まず日本人の少ないマイナーな国に行くとよくあるのですが、日本人が珍しいので気さくに話しかけてきます。ナゴルノ・カラバフの国境付近では、軍人さんに「一緒に写真撮ってくれ」といわれ、写真を撮ったり。英語もわからない自分に優しく道案内してくれたり、帰り道を歩いているとヒッチハイクしていないのに、突如目の前で車が止まり目的地まで乗せてくれたり。

首都のステパナケルトからバスで、ナゴルノ・カラバフの戦争地で爪痕残るシューシという街に行ってきたときのことです。

シューシは人がほとんどいない、陰鬱な雰囲気を持つ街でしたが、とても温かい街でした。街を散策していると洗車中のお兄さんに「家に来て」といきなり合図されました。警戒しながら入ってみると、奥さんと子供3人の計5人家族で紅茶を出して迎え入れてくれたのです。

その家族は一切英語が話せません。今にも壊れそうな紛争地域の家で、共通言語が一切ない日本人とアルメニア人がジェスチャーのみで意思疎通をする異様な空間でした。帰る際にメモ用紙をお土産にくれたのが嬉しくて、お返しに日本から持ってきたカイロを渡すと、使い方が分からずに戸惑った表情をしていたのも思い出のひとつです。

だれかの映像では見たことのあるような光景も、自分が体験すると受け取り方が全く変わってきます。彼らはスマホではなくガラケーを使っていました。ぼくたちはスマホで無料コンテンツを消費できる贅沢な民族なのだと、当たり前の日常に感謝することができましたし、今ぼくたちが享受している恩恵に気が付きました。

 ホスピタリティの語源は旅人や異人などの来訪者をもてなすことだといわれています。

それがたとえ「敵対する人」(hostile)でも、その人が傷ついているときは、その人を心からもてなし、癒そうとするその行為をホスピタリティとされていました、それゆえ、もてなしを意味する「オレタリティ」(hairality)と、歓待する宿泊施設を意味する「ホテル」 (hotel)と、傷ついた人を癒す「病院」(hospital)は、語源として結びついてきたそうです。(注3)

しかし今日、ホスピタリティといわれているものは料金を支払う人に対して提供されるサービスにすぎません。

料金を支払う人に対してホスピタリティが提供されるケースはありますが、ナゴルノ・カラバフではそうではなく、無条件に迎え入れてくれました。

ホスピタリティはタダではありません。その人の時間やお金などのコストがかかっています。これまで、日本人のぼくたちのほうが彼らより豊かだと思っていましたが、それは物理的な豊かさであって、日本国内の生活をみても精神的な豊かさまで勝るとは言い切れないように感じます。 

とはいえ、もちろんアルメニア人の中にも観光客を騙そうとする人はいます。タクシー運転手は荷物を拉致してお金をせびってきたり、今後会うこともない観光客と割り切って利己的な行動を取るひとも一部います。しかしその反面、上記に書いたように、もう二度と会わないかもしれない観光客の日本人にも優しくする人もいます。旅の洗礼を受けても、それを上回る旅の恩恵を受けました。渡航中止勧告が出てる国に行ったことで、サービス購入者でもないただの観光客に、無条件の良質なホスピタリティにふれることになったのです。

(注3):「現代観光学」遠藤英樹・橋本和也・神田孝治 編著 寺岡伸悟・山口誠・須永和博・森正人 著『現代観光学-ツーリズムから「いま」がみえる』(新曜社、2019年1月31日)、120・121頁


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次回は第2章「海外のストレスフリーな働き方」を無料公開します。

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