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15th-逆さまの悪魔-

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非常に苦しい中学時代を終え、高校に入学した琴音は新しい生活を楽しもうとしたが、思うようにいかない日々の中で食べる意欲を失ってしまい、摂食障害に陥る。 —これは自分を奪われた少女た…
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#長編小説

第三十八話「前へ進む」長編小説「15th-逆さまの悪魔-」(最終話)

 ネムと病院の外で会ってから、一ヶ月ほど経った。琴音は久しぶりに書道教室に出席した。  …

文野麗
3日前
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第三十七話「ネムの言葉」長編小説「15th-逆さまの悪魔-」

 順調に身体を回復させ、二人で様子を見ながら慎重に約束をして、琴音はようやくネムと会える…

文野麗
4日前
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第三十六話「仮初の努力」長編小説「15th-逆さまの悪魔-」

 琴音は入院から二十日経って退院した。すぐには学校へ通えないので、自宅で療養する。  母…

文野麗
5日前
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第三十五話「見舞い客たち」長編小説「15th-逆さまの悪魔-」

 高熱によって朦朧となった意識の中で、琴音は自分を悩ませる様々な苦悩を次々と目の当たりに…

文野麗
6日前
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第三十四話「好かれる努力の顛末(中学校の思い出)」長編小説「15th-逆さまの悪魔-」

 中学時代のことである。豊子が全ての権力を手にして支配しているパート内では最低の扱いを受…

文野麗
7日前
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第三十三話「高熱にうかされて」長編小説「15th-逆さまの悪魔-」

――なんで麻理恵にあんなこと言ったんだろう。私のせいで麻理恵は傷ついた。麻理恵のお腹の子…

文野麗
8日前
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第三十二話「急病」長編小説「15th-逆さまの悪魔-」

 琴音は頭痛で早朝に目を覚ました。身体中がまるで絞られているかのように痛む。呼吸もしにくく、激しく咳こんでしまう。喉と鼻の粘膜が乾いて痛い。  急な体調の悪さに琴音が二時間くらい苦しんだ頃、 「もう起きなさい」  と母が部屋の前にやってきた。 「起きられない」 「え、何て言ってんの? 聞こえない」  ろれつが回らない上声を出す体力がなくて、琴音ははっきり話せなかった。 「起きられない」 「入るよ」  母は赤い顔をして呼吸に苦しむ娘の様子を見て、異常を悟ったら

第三十一話「ありふれた一日のはずだった」長編小説「15th-逆さまの悪魔-」

 麻理恵と遊んだ日から五日ほど経った。この日も琴音は昨日までと似たような気分で一日を過ご…

文野麗
1か月前
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第三十話「麻理恵に気づかされる」長編小説「15th-逆さまの悪魔-」

 琴音が寝る前寝転がってネムのブログを読み返していたら、麻理恵からのメッセージが入った。…

文野麗
1か月前
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第二十九話「歌羽の吐露」長編小説「15th-逆さまの悪魔-」

 歌羽は初めて自分の過去を語り出した。  私は小学校のときクラスでひどいいじめに遭ってい…

文野麗
1か月前
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第二十八話「琴音の吐露」長編作品「15th-逆さまの悪魔-」

 ほんの少しだけ意識を変え、医療用の栄養ドリンクを我慢して飲むようにしたところ、悪化する…

文野麗
1か月前
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第二十七話「心に寒風が吹いて」長編小説「15th-逆さまの悪魔-」

 カウンセラーの女性は、いつも通り白衣姿で病院の待合室に現れた。琴音は珍しく笑顔を見せ、…

文野麗
1か月前

第二十六話「自分との対話」長編小説「15th-逆さまの悪魔-」

 琴音は書道教室で、この頃更に細くなり静脈が透けて見える右腕を動かしながら、半紙に向かっ…

文野麗
1か月前

第二十五話「何度も着せられた濡れ衣(中学校の思い出)」長編小説「15th-逆さまの悪魔-」

 琴音が中学生の頃、部活では楽器ごとのパート別に練習する時間があった。  この日は秋だった。三年生は琴音と豊子の二人で、他に二年生と一年生の部員が二人ずつ、全員で六人のパートメンバーがいた。一日一日、みるみるうちに日が短くなっていって、トランペットパートが練習している部屋の外は薄暗かった。明かりは白色灯のはずなのに部屋の中はどこか赤味を帯びていた。暖房が音を立てながら暖かい空気を巡らせていた。  トランペットパートは冷暖房が直接快適な温度に保ってくれる教室の一室を練習場所