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シンガポールでの永住権取得について

本記事では、シンガポールで経済基盤・生活基盤を築いており、今後もシンガポールで生活していくことを決意している日本人が最も必要としているであろう永住権の概要や、日本人から見たメリットや注意点などを紹介します。

永住権とは

シンガポールでの永住権(Permanent Residency; 以後、PRと省略)とは、一部を除き、シンガポール市民と同等の権利や恩恵を受けられる権利です(ただし、後述の義務も発生する)。

詳細は後述しますが、日本人にとって一番分かりやすいメリットは、Work Pass(Employment PassやS Passなど)なしでも、合法的にシンガポールに滞在し、就労できる点です。

PRなしの場合、外国人は、例え、企業からオファーを受けたとしても、シンガポール政府からWork Passが発行されない場合は、就労できません。また、Work Passは2年更新、かつ、雇用主にひもづいているため、次の更新期間が来た時に申請が却下されてしまった場合、あるいは、コロナ禍のような不況下に陥ってレイオフされてしまった場合、Work Passesが失効し、最悪の場合、国外退去もあり得ます。

一方で、PRを取得した場合、期間の制限を受けずにシンガポールに滞在し、日本に一時帰省しても再入国が可能です(注:再入国には別途許可が別途必要。また永住権は5年おきに更新が必要)。また、Work Passを取得しなくても働くことができます。

昨今、PRを持たない外国人の雇用割合の制限や、Employment Passの審査の厳格化(審査期間の長期化、収入要件の高額化など)などの状況などもあり、Employment Passが必要な外国人はそもそも面接を受けられないケースも多々あります。こういう場合でも、PRを保持している外国人は、オファーを出せばすぐに勤務を開始できるため、市民およびPRを優先的に面接する企業は多くあります。

日本人から見たPRのメリット

滞在・就労だけでもPRのメリットが分かっていただけだと思いますが、それ以外も含め、メリットも紹介します。なお、PRはあくまで外国人という位置付けなので、投票権はありません。

(1) (説明済み)期間の制限を受けずに、合法的にシンガポールに滞在し、シンガポール国外に出ても、再入国できる(別途、再入国許可が必要。またPR自体も5年おきに更新が必要)。

(2) (説明済み)Work Passなしに自由に転職できる。

(3) 数年の後、市民権を申請できる。

日本人のなかで、シンガポール市民権を取得したい人はごく少数だと思います。一方で、日本以外のアジアの発展途上国の人は、シンガポール市民権を取得することで家族の将来を大きく変えることができるため、親が、あるいは子供が市民権を取得できるよう努力している人たちが多くいます。

(4) 自分の配偶者や21歳未満の子供の永住権も申請できる。

自分の配偶者や子供が外国人の場合、滞在ステータスが安定しないため、何らかのタイミングで国外退去せざるを得ない状況に追い込まれる可能性は否定できません。家族が安心して、シンガポールで生活し、働き続けるためには、PRを持っている必要があります。

(5) 親の長期滞在ビザを申請できる。

(6)  シンガポールの年金機構であるCPF(Central Provident Fund)に加入し、老後資産の準備、住宅購入・教育・医療などの優遇措置を受けられる。

CPFは、日本の個人型確定拠出年金のような仕組みであり、毎月、所得の一部を(強制的にではありますが)非課税で年金口座に拠出し、一定年齢に達した時に給付を受けることができます。

CPFは、一般口座(保険・投資・住宅・教育用)、特殊口座(老後資産用)、医療用口座と口座が3つに別れています。一般口座に拠出した資金の一部を公団住宅(HDB)の購入資金にあてたり、子供の教育にあてたりすることができます。医療用口座の資金は医療費の支払いに使えます。また、政府から医療費補助の給付を受ける場合は、医療用口座に振り込まれます(おそらく外国人はCPFの医療口座を持たないため、こういった給付を受けることはできないと思います)。

(CPFについては別途、記事を書きたいと思います)

永住権保有者が果たすべき義務

恩恵を受ける一方で、市民と同等の義務を果たす必要があります。

例えば、シンガポールは徴兵制があり、シンガポール市民権もしくはPRを保有する18〜40歳までの男性には毎年、兵役(National Service)が課せられます。18歳で2年間の兵役につき、その後は、40歳まで毎年2週間の兵役に参加する必要があります。

なお、EP保有者が自分でPRを申請した場合は、兵役は免除されますが、第2世代(子供)の男児には兵役が課される点に注意が必要です。なお、シンガポール市民権やPRを持つ配偶者をスポンサーとしてPRを申請する場合、スポンサーを第1世代、自分は第2世代となるため、自分に兵役が課されることに注意してください(この点は申請書に書かれていますし、念押しされます)。

永住権の申請方法

申請方法はICAのサイトを参照ください。https://www.ica.gov.sg/apply/PR/apply_PR_who

ここでは例として、(1) EP保有者の自分が第1世代となりPRを申請するケース、(2) シンガポール市民権もしくはPEを持つ配偶者がスポンサー(第1世代)になりPRを申請するケースを紹介します。

どちらも申請はオンラインで行い、審査状況もICAのサイトで確認できます。追加で資料が必要な場合も、最終的な審査結果が出た場合も、ICAから郵便物が送られてきます。

(1) EP保有者の自分が第1世代となりPRを申請するケース

EP保有者が自分で自分のPRを申請する場合、Professionals/Technical Personnel and Skilled Workers Scheme もしくはInvestor Schemeと見なされ、兵役が免除されます。

必要な書類は以下を参照ください。基本的にはEPなどの申請と同じで、公的な身分証(出生証明書、パスポート、EP)、学歴証明書、就労や所得の証明書などです。家族のスポンサーになる場合は、家族の公的な身分証明書が必要です。

https://www.ica.gov.sg/apply/PR/apply_PR_who

(2) シンガポール市民権もしくはPEを持つ配偶者がスポンサー(第1世代)になりPRを申請するケース

前述の通り、配偶者がスポンサーになるケースの場合は、自分が第2世代になるため、兵役につくことになる点に注意してください。

スポンサーは公的な身分証、学歴証明書、就労や所得の証明書の提出を求められます。こちらのスキームの場合、新規にPRになる方は身分証や学歴証明書が必須で、就労や所得の証明書は任意です。こちらは働いていない家族もカバーするスキームのためです。働いている人は、就労や所得の証明を出しましょう。

申請受理された場合の手続き

結果の連絡はメールかと思いきや、郵便物で届きます。郵便物には、EPなどと同じ、IPA(In Principal Approval)レターが入っており、PRの最終許可のための申請をICAで行うように指示が書かれています。実際にICAで申請する前に以下が必要です。

(1) CPFの口座開設の前提として、医療保険である MediShield に健康状況の申告をWeb上で行います。申請内容に問題なければ数営業日内に受理されます。

(2) PR申請用の健康診断を受ける必要があります。内容は最初のWork Passと同様のため、2年以内に診断を受けている場合は、その旨を申告するだけで実際の診断は免除されます。

以上を実施した後、ICAのWebサイトで申請の予約を行います。

予約日当日は、上記IPA、MediShieldの受理通知、健康診断の申告書、過去に提出した書類の原本とコピーを持ってICAに向かい、PRの申請を行います。窓口が混んでいない場合は、手続きは15分くらいで終わり、審査結果も1時間以内くらいで出ます。

おめでとうございます!正式にPRが許可されたら?

審査が通り、正式にPRが許可されたら、その場でこれまでのFIN(外国人用の納税者番号)が破棄され、新規にNRIC(シンガポール市民やPRが持つ識別番号)が発行され、Blue ICと呼ばれる仮のIDが発行されます。

このBlue ICは正規のIDカードが発行されるまでの間の仮のIDであり、NRICが書かれた小さい紙切れのようなものです。後日、ICAもしくは最寄りの事務所で正規のIDカードを受け取る際の引換券にもなります。

FINが破棄され、NRICが発行された旨を雇用主にも伝えましょう。雇用主側もCPF口座に拠出するための手続きを行う必要があります。

おわりに

本記事では、シンガポールでのPRの仕組み、日本人目線で見たメリットや注意点、審査手続きなどを紹介しました。本記事がシンガポールでPRを目指す上での参考になれば幸いです。

CPFについては少し複雑ですので、CPFについての記事も別途書こうと思います。一通り勉強して仕組みがよく分かったら、記事を書いて公開しますので、そちらもぜひご覧ください。



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