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Legalscapeとは?

株式会社Legalscapeの代表を務めている八木田と申します。もともと大学と大学院ではコンピュータ科学を学んでいましたが、創業期から一貫してビジネス側を担当しています。

本記事では、Legalscapeアドベントカレンダー2021の記念すべき第1回目として、弊社の提供するLegalscapeというサービスについて書かせていただきます。

社会全体やリーガルテック市場における位置づけ、また中長期的な目線での展望については、本アドベントカレンダーを締めくくる12月25日の記事に譲ることとし、この記事では、アドベントカレンダー全体のイントロとして、

・Legalscapeとは、「法律版のGoogle」のようなもの
・そもそもなぜ法律版のGoogleが必要なのか
・それをどのような機能で実現しようとしているのか

といった内容とします。ご興味のある方は、先日取り上げて頂いた記事も是非ご一読ください。

Legalscapeとは、「法律版のGoogle」のようなもの

様々な方にLegalscapeについてご説明する際には、よくこのようにお伝えしています。一言で伝えようとすれば「法律版のGoogle」でよいと思うのですが、少し不正確なところもあり、「ようなもの」という補足をつけるのが妥当かと思います。

このあたりを少しご説明させてください。

まず、大筋「法律版のGoogle」だろうといえるのは、Googleのミッションは「世界中の情報を整理し、世界中の人々がアクセスして使えるようにすること」であるところ、Legalscapeはその一部である「すべての法情報を整理し、アクセスして使えるようにすること」、すなわち「すべての法情報 (legal) を見渡す景色 (-scape) を描き出す」こと、が目的なためです。

ただ、Googleは汎用的に作られた検索エンジンなため、リーガルリサーチ(法にまつわるリサーチ)に必要な機能が搭載されているわけではありません。

膨大で複雑な法情報から情報を引き出すリーガルリサーチという分野については、汎用的なサーチエンジンを超えた、このドメインに特化した解決方法が必要だと考え、Legalscapeはそこに取り組んでいます。

リーガルリサーチは・・・あなたにも(ある程度)関係します

なんらかの法的問題に資する情報を収集・分析することを、リーガルリサーチと呼びます。普段の生活ではなじみのないものですが、すこし視点を変えてみると、実は社会生活のありとあらゆるところに関係していることがわかります。

この記事を書きながらたまたま見つけたニュースで、総務省が日本郵便に行政指導したというものがあります。

そもそも行政指導とはなんで、なぜ総務省にそんな権限があるのだろう? 自分の勤める会社は大丈夫だろうか?

あるいはこちらの方が身近かもしれません。名誉毀損に当たる投稿をリツイートすることについて不法行為責任が認められたというニュースもありました。

どういう投稿をリツイートしたら法に反することになるのか? 自分のリツイートは大丈夫だろうか?

日本のような法治国家においては、社会生活上の決まりのほとんどは法として定められています。そしていずれの記事も、自然人(あなた)や法人(会社など)はなんらかの法的制限の下で活動を行っていて、それに違反するとよろしくなさそうということを示唆しています。

よろしくないことにならないよう、あなたの勤める会社(法人)でも、社会にあまねく存在するひとつの「人」として例に漏れず、法務担当者や顧問の弁護士といったプロが、リーガルリサーチを行った上で、種々のご対応をされていることでしょう。

通常、プロの方々は、まず法令を調べます。法令には法律(立法)と、下位の施行令や施行規則(行政)などがあります。さらに法令ではないもののガイドライン(行政)などもあり、それらの実世界における解釈などが示された判例(司法)なども調べます。

また法令改正の議論がなされた国会議事録(立法)や、パブリックコメント(行政)審議会の報告書なども有用です。

上記を全て解説した法律書だったり、学者の先生が執筆した論文も、非常によく使われます。
※ リンクはいずれも例

現状、プロの方々は、紙の本だったり、バラバラのPDFだったりする情報を各官公庁ウェブサイトの奥底などからかき集めてきて、リサーチをしています。また、Googleを使うだけでは、必要な法情報の10%も見つからないでしょう。

そして仮に100%が見つかったとしても、検索機能だけでは「平成26年会社法改正の条文のbefore/afterと、それに関する審議会議事録を見たい」といったリーガルリサーチ特有のニーズに応えることは難しいでしょう。

弊社では、まずはプロの法務従事者向けに、膨大な時間を要するリーガルリサーチを支援するツールLegalscapeと、それを支えるデータ基盤「リーガル・ウェブ」を作っています。
※ このデータ基盤は、手前味噌ながら、今後30年50年と続いていく日本における法のインフラたる余地を十分に備えていると考えていますが、そちらの解説は本アドベントカレンダーを締めくくる12月25日の記事に譲ることとします

ユーザーから見た、Legalscapeの提供する価値

実は、Legalscapeに近いサービスとして、最近は法律書の検索閲覧サービスが複数登場しています。これらサービスとLegalscapeが明確に違うのは、情報の広がりと、機能の深さです。

Legalscapeは、いろいろなところに散らばっている法情報を一元化し、すべて検索できるようにしています。現在の対象は、1,000冊近い法律書、7,000件以上の法令、2万件(全件)のパブリックコメント、一部のガイドラインなどです。

他の法情報の検索閲覧サービスでは書籍の取り扱いが中心であり、パブリックコメントやガイドラインは取り扱われていません。また書籍に関しても法律書に限っていうと、その掲載冊数は Legalscape より少ない状況です。

リーガルリサーチにおいては、基本的に漏れがあることが許されず、膨大で複雑な法情報からリサーチをすることが求められます。Legalscapeとしては、このニーズを満たすため、すべての法情報を対象にし、これらをひと目で見渡せるよう整理するという課題に真向から挑戦しています。

また、他の法律書の検索閲覧サービスは、単にPDFを画像化したものを検索閲覧するビューワーに留まっています。それにも一定の価値がある(紙と違って検索できるなど)と考えているのですが、これだと膨大で複雑な法情報を取り扱うのは、結局目で読む人間のままです。

Legalscapeでは、PDFデータからテキストを抽出し、章構造等を復元し、さらにリンクを付与しています。これにより、例えば、文書内の検索体験を向上させています。

下画面は、「公開買付け」「公告」といった2つのキーワードで検索した際の画面です。利用者は、目次のオレンジで記載された部分とその数字を見るだけで、読むべきどうかを判断できます。オレンジの部分は、全てのキーワードがヒットしたセクションを示しているためです。

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また、「今読んでいる文献”を”参照している文献のリストを見る」という、逆引き機能も搭載しています。

これまでは、プロでも金商法27条の2について書いてありそうな本はどれかな、などとあたりをつけながら探していましたが、しばしば漏れがありました。

下画面は、金商法27条の2”を”参照している書籍・法令・ガイドラインを、右側のペインで一覧表示しています。ここを見ていくことで、漏れのないリサーチが可能になっています。

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まだまだ、提供範囲・機能面について改善すべき点はありつつも、上記の機能をはじめとする工夫によって、リーガルリサーチの実務が大きく変わることがご理解頂けたかと思います。

これからも、法治国家たる日本における、法のインフラたるサービスとそのデータ基盤のありかたを探求していきたいと考えています。

さいごに

少しでも興味を持っていただいた方は、先日取り上げて頂いた記事も是非ご一読ください。

また、弊社では採用を行っています!カジュアル面談等もありますので、是非お気軽にご連絡頂ければと思います。

明日からは、Legalscapeのとても優秀なエンジニアによる技術的な記事を中心に投稿させていただきます。

また、本アドベントカレンダーを締めくくる12月25日の投稿では、Legalscapeのリーガルテックにおける位置づけや、社会に与える影響、今後の展望等といった抽象度高めの話とさせていただきます。

お読みいただきありがとうございました。明日は、弊社CTO城戸による投稿となります。乞うご期待!