リーガルテック業界とLegalscapeの展望
この記事はLegalscape アドベントカレンダー2021の25日目のエントリーです。Legalscape代表の八木田です。
2021年は、Legalscapeにとって、ステージが変わる一年となりました。6月には、1年以上運用してきたβ版をようやく正式版へと昇華させることができ、法律業界におけるトップティアの数多くのお客様にご利用いただけることとなりました。
サービスのPMFに伴い、開発体制の見直し、セールス・CS組織の構築等が必要となり、年の後半からは採用の拡大に注力しています。
そんななか本記事では、これからのLegalscapeの目指すところと、そもそものリーガルテック業界の行く末について、妄想も多分に含まれる形で文章化してみました。
Legalscapeと、そのメンバーの目指すところ
Legalscapeはまだ明確にバリューが言語化できているわけではありませんが、いくつか全員に共通している価値観があります。
その1つが、「取引先や社会にとって本質的かつ現実的な価値を追求すること」です。
たとえば私たちは、儲かるけど社会的に見て必ずしも望ましくないようなことや、短期的には価値があるけど、この業界・社会を見渡したときに、数年後にはなくなってるだろう、といったことには、心はときめきません。
そういったものを含む様々な取り組みの総体が社会を形成しているなかで、それらの存在を否定はしませんが、必ずしも自分たちがわざわざ集まってまでやるべきことではないだろう、という共通認識があります。
私たちは、業界や社会にとって、本質的で、10年後・50年後にもあり続ける、そんな仕組みや基盤を創造していきたいと考えています。
なぜLegalscapeなのか
業界や社会にとっての本質的な解にたどり着くのは、非常に難しいことだと考えています。しかしこれまでに、Legalscapeは独特のポジショニングを築くことができました。
まず、業界や社会にとっての本質的な解には、一社ではたどり着けません。この業界における様々なプレイヤーとの協業を通じてのみ、本当に業界を変えるようなことが成し遂げられると考えています。
Legalscapeは、五大法律事務所の一つである森・濱田松本法律事務所と提携し、またスタートアップとして異例ながら国家プロジェクトのプロジェクトチームに参加するなど、業界のキープレイヤーとの関係を構築しながら事業を進めています。
また、本質的な解を社会実装するためには、技術力が欠かせません。Legalscapeでは、単なるPDF閲覧ツールや書籍の検索ツールを超えて、PDFデータの解析を行うことで構造化を行い、文献間の参照関係(リンク)の解析を行っています。コンピュータ科学のバックグラウンドを持つメンバーたちは、その高い技術力を生かし、この一連のプロセスを通じた法情報の収集・整理に、真っ向から取り組んでいます。
Legalscapeでは、業界や社会にとっての本質的な解を目指すといった高い視座をもち、法情報の基盤たる「リーガル・ウェブ」という仕組みと、その具体的なアプリケーションとしてのLegalscapeを作っています。
今後、リーガルテック業界内では統廃合が起こる
ところで、リーガルテックという業界は少し特殊で、今後自然に業界再編(経営統合・事業集約)が進んでいくと考えています。
そもそも一般に日本のtoB向けスタートアップは統廃合に向かわざるを得ない、と先日シニフィアン共同代表の朝倉裕介さんが仰っていましたが、その中でもリーガルテックは、
①言語・法体系の違いが極めて大きな壁となり海外展開がほぼできない(反面海外からの参入も難しい)、
②リーガル以外の他業務を開拓するのもかなり難しい、
といった2つの特徴があります。
そのため、今は日本のリーガルテック業界は盛り上がりを見せ、たくさんのスタートアップが登場している状況ではありますが、toB向けスタートアップの戦場の中でも特に統廃合が進む可能性が高いと思います。
そんな中、ここから八木田の妄想が多分に入るところですが、リーガルテック業界においては、大きく以下の2つのタイプしか生き残ることはできないと考えています。
①あらゆる取引の際に発生する「契約書」のライフサイクルに関するプラットフォーム企業
企業法務部や法律事務所(toB)の行う業務に占める「契約業務」の割合は、非常に高いものです。契約はあらゆる取引の際に発生し、様々な組織サイズ・事業領域をまたいで必要になるため、当然数的に多いものとなります。
したがって、toBのリーガルテックにおける一つの柱は、やはり契約書関連の何かであろうことは間違いありません。
そして、日本のtoBリーガルテックの多くは、契約書の起案・レビュー・承認・締結・締結後の管理等、契約書が生まれてから一生を終えるまでの複雑かつ長いフロー上のどこかを、うまくシステムでやりましょうというソリューションを提供しています。
そうすると、今後たとえば契約書のレビューを提供する会社が成長したとして、「ネットワーク効果の高い締結部分も抑えよう」「後工程の締結後の管理も抑えよう」などと横展開をしていくことになり、その過程で、それらを提供している小さめの会社を買収していくといった流れが自然発生する(買収によるシナジーが大きい)と思います。
上記の理由で、「契約書」の領域は少数のプラットフォーム企業に集約され、末永く成立すると見ています。
②法情報を整理し、インフラとして整備する企業
ありうるもう一つの柱は、手前味噌ながら、法律業界のすべての業務の前提となる「法情報」そのものを集め、整理し、そして提供する企業です。
というのも、法律業界は特殊で、絶対的なルールやその背景にあたる多様な「法情報」が存在しており、すべてがそこに依拠する必要があります。具体的には、法令(立法)、パブコメやガイドライン(行政)、判例(司法)などに加え、それらを解説する書籍・論文等が存在しています。
法治国家たる日本においては、企業活動から日々の日常に至るまで、様々なところでこれら「法情報」を収集し、まな板の上に載せ、料理することが必要になります。たとえば
新規事業の適法性調査(法務部、法律事務所)
判決文の起案(裁判官)
法律の改正(省庁の担当者)
相続に関する手続きの調査(一般のご家庭)
・・・
などといった、ありとあらゆるものが当てはまります。
①が、toBリーガルテックの主たる提供先である企業法務(法務部/法律事務所)において時間的に多くを占める業務のフローを押さえる勝ち筋であるのに対し、②は、すべての法務従事者、そして果ては一般の方まで幅広く関わる「法」の 根底をなす「法情報」を押さえる勝ち筋ということになります。
Legalscapeは、まさに②の法情報の収集・整理に真っ向から取り組んでいる企業です。
現状、法情報の多くは、未だに電子化されていないか、電子化されていてもPDFで法律書が読める/スキャンされたものが検索できる、といったレベルに留まります。Legalscapeでは、そういった基本的な部分も押さえつつ、PDFデータの解析を行うことで構造化を行い、法情報同士の関連性を解析することによる本質的な仕組み・基盤の構築を目指しています。※ どう本質的かは、先日取り上げて頂いた記事も是非ご一読ください。
このような取り組みこそ、小手先のサービスと異なり、10年先・50年先も存続する「法のインフラ」構築へ通じる道と信じています。
さいごに
本日はアドベントカレンダー最後の回ということもあり、すこし長期的な目線でのお話をさせていただきました。
このようなリーガルテック業界の中で、独特の立ち位置を築けているLegalscapeに少しでも興味を持って頂けた方は、カジュアル面談等もありますので、是非お気軽にご連絡頂ければと思います。
https://legalscape.notion.site/09aeb478072946c18249495b8fb63fcd
お読みいただきありがとうございました。