冬の匂い
そうだったなと。
冷え込んだ日にふと思い出した冬の匂い。
しんと静まり返った冬の夜空を見上げると
金色の星と共に
その冬の空気が頬を通じて伝わってくる。
そして何故か嬉しくなってわくわくして
口角が自然と上がってくるから不思議だ。
見上げたその瞳に映る夜の色と冷たい空気が
夜の一段と冷えた冬の匂いとひとつになる。
その様を見ている事が私は大好きだ。
まるで
夜の闇にゆっくりと沈んで行きそうな感覚が
眠りにつく瞬間によく似ていてとても安心するのだ。
冬の夜に雪が降ると
辺り一面音という音が消え
ひっそりと鳴りを潜める。
静謐な冬の夜の世界。
その空間があまりに穏やかであまりに美しいから
とても嬉しくて幸せな気持ちになるのだ。
その静かな音のない空間は
耳で感じるよりも身体全体で感じる方が心地よい。
頭の中が
心の中が
ザワついていた日常の思考が
優しく解き放たれて私を自由にしてくれる。
冬の夜空を見上げてみる。
その漆黒の中に散りばめられた黄金色の星屑の中に
私も吸い込まれて溶けてしまえたらいいのに。