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#395 「P社事件」東京地裁

2015年9月30日に配信した「会社にケンカを売った社員たち」第395号で取り上げた労働判例を紹介します。

■ 【P社事件・東京地裁判決】(2014年12月24日)

▽ <主な争点>
社会保険の加入手続を履行しなかったことが不法行為に当たるかなど

1.事件の概要は?

本件は、平成15年4月にP社に入社し、18年8月に休業するまで稼働していたXが(1)入社時から現在に至るまでの間、同社の代表者であるAから継続的にパワーハラスメントやセクシャルハラスメント等を受け、これにより人格権を侵害され、精神的苦痛を被った旨主張して、Aに対し不法行為に基づき、P社に対し会社法350条(代表者の行為についての損害賠償責任)または債務不履行(労働契約上の職場環境配慮義務・健康配慮義務違反)に基づき、損害賠償(2200万円)等の支払いを求めるとともに、(2)15年5月から16年10月までの間の時間外労働等に対する割増賃金について、Aらが労働時間の適正な管理を怠り、Xの割増賃金請求を封じ、割増賃金を支払っていないことが不法行為を構成する旨主張して、不法行為に基づき、上記割増賃金相当額の損害賠償(各自1576万円余)等の支払いを求めたもの。

2.前提事実および事件の経過は?

<P社およびXについて>

★ P社は、商業デザインの企画、制作、販売等を業とする会社であり、従業員数は常時7名前後である。

★ Xは、平成15年4月、P社との間で労働契約を締結し、以後、同社においてグラフィックデザイン等の業務に従事していたところ、頸肩腕症候群・右手腱鞘炎(以下「本件疾病」という)に罹患し、18年8月15日以降、出勤していない。なお、本件疾病は19年2月、労働災害として認定された。

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<社会保険加入手続の遅滞等について>

★ P社は求人票の「加入保険等」欄に「雇用・労災・健康・厚生」と記載しており、同社がXについて社会保険として厚生年金加入の手続をとることを前提として、XおよびP社は労働契約を締結していた。

★ Xは入社後、Aに対し、早急に社会保険の加入手続をとるように求めたにもかかわらず、Aは約1年にわたり社会保険への加入手続を遅滞させていた。

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<慰謝料等の支払請求について>

▼ XはAおよびP社に対し、21年3月、Aの違法なセクハラ・パワハラ等による損害賠償として、慰謝料および弁護士費用の合計2200万円の支払請求を行った。

3.社員Xの主な言い分は?

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