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#161 「りそな銀行事件」東京地裁

2006年11月15日に配信した「会社にケンカを売った社員たち」第161号で取り上げた労働判例を紹介します。

■ 【りそな銀行(以下、R社)事件・東京地裁判決】(2006年1月31日)

▽ <主な争点>
不正行為等を理由とする懲戒解雇・諭旨解雇/退職届の効力

1.事件の概要は?

本件は、R社の従業員であるXおよびYが、同社に対し、それぞれ社内ルールに反する過剰接待等を理由とする懲戒処分(Xは懲戒解雇、Yは諭旨退職処分であり、以下、一括して「本件懲戒処分」という)の無効を主張して、労働契約上の地位確認および賃金支払いを求めたもの。

2.前提事実および事件の経過は?

<R社、XおよびYについて>

★ R社は平成15年3月、埼玉りそな銀行を会社分割したあさひ銀行と大和銀行との合併により設立された銀行業法に基づく銀行業務を営む会社であり、同社を主力銀行とする融資取引先の中心は中小企業である。

★ Xは昭和58年4月、R社の前身である埼玉銀行に入社し、13年10月から15年11月までの間、あさひ銀行H支店において、副支店長として勤務し、同月、ローン事業部次長職、16年4月には人材サービス部付となった。

★ Yは3年4月、R社の前身である協和埼玉銀行に入社し、13年11月から16年3月までの間、H支店において、融資課長として勤務し、同年4月、人材サービス部付となった。

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<本件融資およびA社からの接待等について>

▼ R社は、めん類・冷凍食品の製造・販売等を業とする中小企業であるA社に対し、12年2月、東京信用保証協会の斡旋融資による5000万円の融資を行い、さらにH支店において、Xらを担当者として、14年12月から9ヵ月間、18回にわたり、約4億5000万円の融資を行った(以下「本件融資」という)。

▼ Xは約11ヵ月間15回にわたり、Yは約9ヵ月間14回にわたり、XがR社に1回届けたほかは無届でA社からゴルフ等の接待を受け、そのうちの5回は社内通達により、取引先からの接待を一切禁止されていた期間に行われていた。

★ H支店の扱う融資案件のうち、専決融資については、支店長が、融資額が一定額を上回るなど、リスクの高い案件に必要な本部稟議決済については東京融資第一部が、それぞれ最終的な決済権限を有していた。

★ 他方、副支店長および融資課長は、支店長または本部の上記決済に供するために、融資対象が与信先として適切か、財務内容は健全か、事業内容に問題がないかなどの債務者判断および資金使途は妥当か、返済原資・返済条件は妥当か、適正な収益確保は可能か、保全は妥当かなどの案件判断を総合的に検証するものとされていた。

★ 15年5月、R社はいわゆる「りそなショック」を受けて、社内通達を出し、「取引先との接待・被接待について」「宴席、ゴルフは禁止する」、「当行を激励する会の申し出等を受けた場合も現在の状況を説明し、丁重にお断りすること」などを周知した。

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<A社の返済状況および本件懲戒処分等について>

▼ A社は本件融資のうち最後の融資から間もない15年9月および10月にそれぞれ返済を怠り、その後、16年8月にはR社から内容証明郵便により、各短期貸付金および長期貸付金の一括弁済を督促された。

▼ 17年1月、A社は東京地裁に対し、民事再生手続開始申立てを行ったが、同年6月には同手続が廃止され、同年7月、破産手続開始決定がなされた。

▼ R社は16年4月、(1)社内ルールに反する過剰接待、(2)融資不可事案についての融資の実行と継続、(3)稟議書の虚偽記載、(4)社内ルール違反融資による多大な損失の発生、(5)指導、監督責任の懈怠、(6)当社名誉信用の毀損という就業規則違反行為を理由として、Xを懲戒解雇処分とした。

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