見出し画像

#100 「中田建材事件」東京地裁(再掲)

2005年8月24日に配信した「会社にケンカを売った社員たち」第100号で取り上げた労働判例を紹介します。


■ 【中田建材(以下、N社)事件・東京地裁判決】(2000年3月22日)

▽ <主な争点>
求人票とは異なる内容の雇用契約の締結/試用期間の延長等

1.事件の概要は?

本件は、N社の従業員であったXが、(a)一年間の賃金額を580万円とする合意があったにもかかわらず、N社が合意に係る賃金を支払わないのは債務不履行であること、(b)N社がXの試用期間14日を3ヵ月としたこと、(c)見習期間という趣旨の試用期間3ヵ月経過後、N社がさらに3ヵ月延長したことなどは詐欺にあたるとして、合意に係る約定の賃金からすでに支払いを受けた賃金を控除した残金221万円余りの損害賠償等を求めたもの。

2.前提事実および事件の経過は?

<N社がXを雇い入れるまでの経緯>

▼ N社は施工管理責任者を雇い入れる目的で、平成9年11月、公共職業安定所(以下「職安」という)に求人手続をした。その際、求人票には「基本給は金35万円~45万円、賞与は年2回で計4ヵ月分」と記載されていた。この求人票を見たXはN社に就職すれば、年間で金560万円~720万円が支払われると考えていた。

▼ Xが社会保険労務士(以下「社労士」という)であるCの面接を受けた際、Cは「Xが本当に現場の施工管理責任者としての能力があるのなら、年間で金580万円を支払ってもよいが、現場の施工管理者として能力があるかどうかを確認するために3ヵ月間の試用期間を設ける」と述べた。

▼ その後、N社のA代表およびB専務は社労士Cの立会いの下にXと面接し、「とりあえず入社後の3ヵ月間は日給1万3,000円で働いてもらう」とXに申し入れ、Xはこれを了承し、同年12月からN社において働きはじめた。その際、XはN社との間で雇用通知書を取り交わし、これに自署した。

--------------------------------------------------------------------------

<XがN社にて勤務を開始した後の経緯>

▼ Xを実際に働かせてみたところ、現場の施工管理責任者としての能力が欠如していたことが判明したため、N社としてはXを施工管理責任者ではなく、工事担当の従業員としてならば雇うことができるという結論に至った。

▼ N社はXが工事担当の従業員として雇うことができるかどうかを見極めるために3ヵ月間の試用期間が満了する時点において、さらに試用期間を延長することにし、その旨をXに伝えた。

▼ 10年4月、N社はXを工事担当の従業員として正式に雇うことができると判断し、Xとの間で雇用通知書を取り交わし、Xはこれに自署した。なお、雇用通知書には「職種は工事担当、給与月額は計31万500円」と記載されていた。

▼ 同年10月、N社はXに対し、解雇する旨の意思表示をした。

--------------------------------------------------------------------------

<N社の就業規則について>

★ N社の就業規則には次のような定めがある。

ここから先は

1,547字

¥ 100

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?