見出し画像

#593 「沖縄科学技術大学院大学学園事件」那覇地裁

2023年8月2日に配信した「会社にケンカを売った社員たち」第593号で取り上げた労働判例を紹介します。


■ 【学校法人 沖縄科学技術大学院大学学園(以下、O法人)事件・那覇地裁判決】(2022年3月23日)

▽ <主な争点>
雇止め法理の適用、労働契約法19条2号該当性など

1.事件の概要は?

本件は、XがO法人との間で有期雇用契約を締結し、1度の更新を経たものの、同法人から2019年3月31日の雇用期間満了をもって雇止め(本件雇止め)をされたところ、本件雇止めは客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められないなどと主張して、O法人に対し、労働契約上の権利を有する地位にあることの確認を求めるとともに、本件雇止め後の賃金として(1)2019年4月から2020年4月までの確定賃金および遅延損害金の支払を、(2)2020年5月から毎月17日かぎり月額39万6655円および遅延損害金の支払をそれぞれ求めたもの。

2.前提事実および事件の経過は?

<O法人およびX等について>

★ O法人は、国際的に卓越した科学技術に関する教育および研究を実施することにより、沖縄の自律的発展と、世界の科学技術の向上に寄与することを目的として設立された学校法人であり、診療所、保健センター等を設立、運営している。

★ Xは、看護師資格を有し、2016年11月1日から2018年10月31日までを雇用期間としてO法人に採用され、同法人の運営する診療所(クリニック)で看護師業務に従事した者である。

★ XとO法人との間の雇用契約書には「本契約は、契約期間満了時の業務量およびO法人の財務状況、その他を判断し、Xに対して契約更新を提示し、Xの承諾を以って、更新が成立するものとする。」旨定められており、労働条件通知書には、「契約更新の可能性:あり」との記載があった。


<本件労働契約、本件雇止めに至った経緯等について>

▼ Xが勤務していたクリニックの開院時間は、1週当たり合計16時間であったが、2017年7月末、同クリニックの唯一の医師が退職したことから、管理者不在となったため、同年8月1日より休診となった。そのため、Xは保健センターにおける患者対応業務等に従事することとなった。

▼ XとO法人は、2018年11月1日、契約更新手続を経た上で、同日から2019年3月31日までを雇用期間とする雇用契約を更新した(以下、更新の前後を問わず「本件労働契約」という)。なお、Xの配属部署はクリニックから保健センターに変更となった。

▼ Xは2019年1月、上司であるA博士からクリニックの開院時間短縮に伴う業務縮小という理由により、同年4月1日以降の本件労働契約の更新は行わない旨を告知され、「クリニックの開院時間短縮に伴う業務縮小のため」との理由を記載した雇止めに関する通知書を交付された。

▼ Xは同年2月、O法人による雇止めの撤回を求めて沖縄労働局に対してあっせんの申請をし(労働契約法19条柱書所定の本件労働契約の更新の申込みに該当する)、同法人もあっせん手続に参加したものの、同年5月、紛争の解決が見込めないとして、あっせん打切りとされた。

ここから先は

3,649字
この記事のみ ¥ 100

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?