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#90 「菅原電気事件」大阪地裁(再掲)

2005年6月8日に配信した「会社にケンカを売った社員たち」第90号で取り上げた労働判例を紹介します。


■ 【菅原電気(以下、S社)事件・大阪地裁判決】(2004年3月31日)

▽ <主な争点>
支店長が自らを人員削減対象者に含めたことが退職申入れの意思表示になるか等

1.事件の概要は?

本件は、支店長として人員削減策の策定をS社から指示された際、自らをその対象者にあげたリストを作成し、その後、同社を退職したXが、退職は自発的なものではなく、違法な退職勧奨および違法な解雇によって本来であれば定年まで受けられるべき利益を失ったとして、S社に対し、定年までの賃金等を請求したもの。

2.前提事実および事件の経過は?

<S社およびX等について>

★ S社は電気絶縁材料、電気機械器具および材料、電線、通信用機械器具および材料、包装梱包材料その他化学製品等の輸出入並びに売買等を目的とする会社である。

★ Xは昭和41年1月、S社に雇用され、大阪支店・神戸営業所に勤務した後、大阪支店長を経て、平成12年12月に名古屋支店長となった。

★ 名古屋支店の12年度の売上実績は約33億円、利益実績は約1400万円で、売上・経常利益のいずれもS社の4支店のうち、トップの成績であった。しかし、主要な取引先との取引終了などにより、13年度の利益はマイナス約3700万円となった。

★ Xの妻は13年にくも膜下出血で倒れ、その後療養していた。Xから介護休業の申し出はなかったものの、妻が自宅のある神戸にいることから、S社は金曜日午後の早退や月曜日午後からの出社を認める等していた。

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<Xが退職に至るまでの経緯>

▼ 14年2月13日、S社において、名古屋支店の再構築を議題とする会議が開催された際、S社のA社長はXに対し、支店における利益アップが望めないのであれば、経費を削減するか、12名程度の人員削減を検討するよう指示した。

▼ 同月20日、Xは人員削減対象者11名を記載した文書を作成し、B副社長宛にFAXで送信したが、同文書には対象者の一人として、Xの名前が記載されていた。

▼ 上記文書にXの名前が記載されているのを見たB副社長は驚いたが、支店の業績悪化に対するXなりの責任の取り方であると思った。そして、S社では同月22日に急遽、後任の支店長を内定した。

▼ XはS社が退職の申し入れを受け入れず、自分を慰留してくれると思っていたため、A社長に対し、面談を求め、退職を受け入れた理由を尋ねた。これに対し、同社長は、妻の看護等を理由にXが支店長の職務を満足に行わなかったことを一番のポイントとして挙げるとともに、Xに対し、神戸営業所へ嘱託社員として就職することを勧めたが、Xはこれを拒否し、S社を退職することを選択した。

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