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#392 「国家公務員(訓告・人事異動等)国家賠償請求事件」東京地裁

2015年8月19日に配信した「会社にケンカを売った社員たち」第392号で取り上げた労働判例を紹介します。

■ 【国家公務員(訓告・人事異動等)国家賠償請求事件・東京地裁判決】(2014年3月11日)

▽ <主な争点>
セクハラ行為を理由とする訓告、その後の人事異動など

1.事件の概要は?

本件は、N府に勤務するXが平成21年3月28日から同年4月5日まで海外出張した際(本件海外出張)、同行した部下である女性職員Aに対し、セクシュアル・ハラスメント(セクハラ)に該当する行為をしたとして訓告を受けたことにつき、訓告原因が不存在であり、訓告手続に違法性があったなどと主張して、同訓告とそれに伴う違法な人事異動により損害を受けたなどと主張して、国に対し、国家賠償法(国賠法)1条1項に基づき、損害賠償等の支払いを求めたもの。

2.前提事実および事件の経過は?

<XおよびAについて>

★ Xは、旧経済企画庁に採用された後、数度の異動を経て、平成19年11月、N府政策統括官(経済財政分析担当)付参事官(海外担当)付(以下「参事官(海外担当)付」という)補佐に配置換えとなり、本件海外出張時も同職にあった者である。

★ Aは、平成20年4月、N府に採用された後、本件海外出張時、参事官(海外担当)付として勤務しており、Xの直属の部下であった者である。

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<本件海外出張、本件訓告、本件人事異動に至った経緯等について>

▼ XとAは21年3月28日から4月5日まで、モスクワ(ロシア)、プラハ(チェコ)およびフランクフルト(ドイツ)への出張(以下「本件海外出張」という)を命じられた。

▼ Aは同年4月6日、本件海外出張中にXからセクハラを受けたとして、N府のセクハラ相談員に相談した。

▼ N府大臣官房人事課(以下「人事課」という)は、Aからのヒアリングにおいて、Xが(1)本件海外出張中、Aと飲食を共にした際、許可なくその手に触れたこと、(2)本件海外出張中、Aの過去の恋愛経験について繰り返し質問したこと、(3)本件海外出張から帰国した直後、成田空港において、Aに対し、「愛してはいけない人を愛してしまった」と言ったことなどのセクハラ行為(以下、それぞれ「本件行為(1)~(3)」、併せて「本件各行為」という)を受けた旨の訴えを受けた。

▼ N府事務次官は本件各行為をセクハラと認定し、22年2月、Xに対し、本件各行為は「人事院規則10-10(セクハラの防止等)」および「N府本府におけるセクハラの防止等に関する規程」に反するものであるとして、訓告を行った(以下「本件訓告」という)。

★ 本件訓告書には、XのAに対する行為等について「その意に反して手を触れる、あるいは不用意な発言等により、同職員に不快の念を抱かせ、帰国後の業務遂行に支障が生じる事態が発生した」との記載がある。

★ N府の訓告規程によると、「訓告」は、職員の非違行為が懲戒処分(国家公務員法82条に規定する懲戒処分)を行うまでに至らない場合に、当該職員に非違行為に対する責任を自覚させるとともに服務を厳正に保持するために指導監督上の措置として行うものであり、訓告を行うまでに至らないと認められる場合には厳重注意を行うものとされている。

▼ Xは21年5月、参事官(海外担当)付補佐からN府B局総務課課長補佐に異動となった(以下「本件人事異動」という)。

3.職員Xの主な言い分は?

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