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#53 「岩手第一事件」盛岡地裁

2004年9月8日に配信した「会社にケンカを売った社員たち」第53号で取り上げた労働判例を紹介します。


■ 参考条文

★ 労働基準法 第32条(労働時間)

使用者は、労働者に、休憩時間を除き1週間について40時間を超えて、労働させてはならない。
 使用者は、1週間の各日については、労働者に、休憩時間を除き1日について8時間を超えて、労働させてはならない。

★ 労働基準法 第32条の2(1箇月単位の変形労働時間制)

使用者は、当該事業場に労働者の過半数で組織する労働組合がある場合においてはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がない場合においては労働者の過半数を代表する者との書面による協定により、又は就業規則その他これに準ずるものにより、1箇月以内の一定の期間を平均し1週間当たりの労働時間が前条第1項の労働時間を超えない定めをしたときは、同条の規定にかかわらず、その定めにより、特定された週において同項の労働時間又は特定された日において同条第2項の労働時間を超えて、労働させることができる。

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■ 【岩手第一(以下、I社)事件・盛岡地裁判決】(2001年2月16日)

▽ <主な争点>
一ヵ月単位の変形労働時間制の有効要件

1.事件の概要は?

本件は、I社で自動車学校の指導員として勤務しているTらが同社就業規則の1ヵ月単位の変形労働時間制は、労働基準法(以下「労基法」)に定める変形労働時間制の有効要件を満たさず、無効であるとして、その規定の無効確認を求めたもの。

2.前提事実および事件の経過は?

<I社およびTらについて>

★ I社は自動車学校の経営を目的とする会社であり、TらはI社の経営する自動車学校において指導員として稼動している者である。

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<I社の就業規則の定め、変形労働時間制等について>

★ I社の平成10年10月4日施行の就業規則(以下「本件就業規則」という)は、19条が1ヵ月単位の変形労働時間制の採用について、20条が勤務時間等の変更について、24条が休日について、以下の通り定めている。

(勤務時間)
第19条
 社員の所定労働時間は、毎月21日を起算日とする1ヵ月単位の変形労働時間制とし、1週間の労働時間は1ヵ月を平均して40時間以内とする。
 1日の労働時間は7時間10分以内とし、始業・終業の時刻および休憩の時間は、先番、後番の二交替制で職務毎に次の通りとする。

指 導 員
[先 番]

始業時刻 午前8時45分   終業時刻 午後5時15分
休憩時間 午前11時55分より午後0時55分まで
実働時間 7時間10分
[後 番]
始業時刻 午前11時40分   終業時刻 午後7時35分
休憩時間 午後2時50分より3時15分まで
     午後5時15分より5時35分まで
実働時間 7時間10分

 ~省略~
 各変形期間内の特定の日については、1日の労働時間を短縮し、変形期間の法定労働時間を超えないように勤務割表を作成するものとする。
 交替勤務の転換は、別に定める勤務割表に従い行う。

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