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#180 「滋賀ウチダ事件」大津地裁(再掲)

2007年4月4日に配信した「会社にケンカを売った社員たち」第180号で取り上げた労働判例を紹介します。

■ 【滋賀ウチダ(以下、S社)事件・大津地裁判決】(2006年10月13日)

▽ <主な争点>
成果主義の導入の合理性/事業場外労働のみなし制の適用

1.事件の概要は?

本件は、S社において配送等の業務を担当しているXが、就業規則の変更による給与規程の変更は不利益変更であり、効力が生じないとして、改定後の賃金と従前のそれとの差額の支払い、また、Xには事業場外のみなし労働時間制は適用されず、未払いの時間外勤務手当があるとして、その支払いをS社に対して求めたもの。

2.前提事実および事件の経過は?

<S社およびXについて>

★ S社は事務用教育用機械器具、用具の販売等を目的とする会社である。

★ Xは平成元年11月、システムエンジニアとしてS社に雇用されたが、6年1月から業務課調達担当となり、14年5月からは配送等の業務に配置転換された。

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<本件改定に至った経緯とXの基本給の変動等について>

▼ S社では14年度上半期において売上の減少により、約3500万円の赤字が発生し、同期は約1300万円余りの経常損失を計上することとなった。そこで、同社は再建計画を検討した結果、管理職の役職手当を15年2月から7月まで、課長10%、部次長15%、取締役20%カットすることとした。

▼ S社は契約社員の契約解除、借入金の金利低減、契約社員への雇用形態変更など経費削減策を行う一方、昇給を維持することが困難になることが予想されたため、業績が回復せず、給与財源がかぎられた中で社員の意欲を維持するためには、同社に対する貢献を給与等に反映できる給与体系にせざるを得ないと判断した。

▼ そこで、S社は15年3月から給与規程の改定(以下「本件改定」という)を行い、給与体系を変更し、能力給を引き上げる一方、本件改定以前は、50歳以下の社員は考課係数0.6で初めて減額され、51歳以上の社員は0.85で減額の対象となっていたところ、本件改定後は50歳までの社員は考課係数0.9から減額が可能となり、51歳以上の社員は1.0から減額が可能となった。

★ なお、過度に不利益が及ばないように、「3年連続で基本給の減額はしない」、「当該社員が受けた最高の基本給額を基準として、減額の累計がその1割を超える金額とならないこととする」制限を設けている。

★ 本件改定は、S社の合同朝礼において説明され、減額の対象となった社員には個別に説明がされたが、Xは納得しなかった。また、本件改定後の就業規則は、15年9月に労働基準監督署に届けられた。

★ S社では、減額された社員は各年度ともXを含み、15年度には考課対象者37名のうち3名、16年度は34名のうち2名、17年度は34名のうち2名となっている。

★ Xの13年度以降の基本給は以下のように変動した。

13年度  25万4800円(前年比+3600円)
14年度  25万5800円(前年比+1000円)
15年度  24万4100円(前年比-1万1700円)
16年度  23万6900円(前年比-7200円)
17年度  23万6900円(前年比±0円)

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<S社における出退管理等について>

★ S社は1ヵ月単位の変形労働時間制を採用し、「始業時刻8時45分、終業時刻17時15分、休憩時間は12時から13時までの1時間であり、時間外勤務を行う場合は、終業時刻から15分間の休憩を与える」とされている。

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