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#376 「地方公務員減給処分等取消請求事件」東京地裁(再掲)

2014年12月24日に配信した「会社にケンカを売った社員たち」第376号で取り上げた労働判例を紹介します。

■ 【地方公務員減給処分等取消請求事件・東京地裁判決】(2014年1月30日)

▽ <主な争点>
同僚のICカードを窃取したことを理由とする懲戒処分など

1.事件の概要は?

本件は、警視庁巡査であったXが、警視総監から平成22年3月19日付で地方公務員法29条(懲戒)1項1号、3号に基づく減給100分の10、3ヵ月の懲戒処分(本件減給処分)およびXに係る辞職承認処分(本件辞職承認処分)を受けたことに関し、本件各処分はいずれも違法であると主張して、各取消しを求めたもの。

Xは警視庁甲警察署の単身寮(本件居室)に居住していたところ、21年11月19日、本件居室において、同僚職員Aほか1名の警察官と飲酒した。その後、XはAと記名のあるICカードを同年12月18日時点のチャージ金が118円となるまで使用した。22年2月6日、Xは初任補修教養を中止する措置を受け実家に帰宅後、荷物を整理するため、上司らとともに本件居室に赴いたところ、同居室内で本件ICカードが発見された。

Xは22年2月9日、警視総監宛の辞職願を提出した。甲署署長は同月17日、警視総監に対し、Xが本件ICカードを窃取したことを理由として懲戒上申するとともに、Xに係る辞職承認上申をした。

2.前提事実および事件の経過は?

<Xについて>

★ Xは、平成20年、警視庁巡査として採用され、21年9月、警視庁甲警察署(以下「甲署」という)地域課に配属され、同署の単身寮(以下「本件居室」という)に居住していた者である。

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<本件各処分に至った経緯等について>

▼ Xは21年11月19日、本件居室において、同僚職員のA巡査ほか1名の警察官と飲酒などをした。

▼ XはAの記名があるスイカカード(以下「本件ICカード」という)を同年12月18日時点のチャージ金が118円(なお、同年11月18日におけるチャージ金の残額は4346円であった)となるまで使用した。

▼ Xは22年1月、初任補修教養(初任教養およびその後の職場実習を終了した巡査に対して行われる基礎的な教育訓練)を受けるため、同年3月30日までの予定で警察学校に入校したが、同年2月3日、Xの素行不良や規則違反があったとして上記初任補修教養を中止する措置を受けて甲署に戻り、同署を訪れた父親とともに実家に帰宅した。

▼ Xは同年2月6日、荷物を整理するため、Xの上司であり、甲署地域課課長代理であったB警部および同署警務課のC警部補とともに本件居室に赴いたところ、同居室内で本件ICカードが発見された。

▼ Xは同月9日、警視総監宛の辞職願(以下「本件辞職願」という)を作成し、同書面に署名、押印し、甲署警務課の課長代理であったD警部に提出した。

▼ Xは同月10日、甲署署長宛の始末書(以下「本件始末書」という)を作成し、同書面に署名、押印した。また、XはB警部が口授してC警部補がパソコンに入力して作成した供述調書(以下「本件供述調書」という)の末尾に署名、押印した。本件始末書および本件供述調書には、Xが本件ICカードを窃取したことを自認する旨の記載がある。

▼ 甲署署長は同月17日、警視総監に対し、Xが本件ICカードを窃取したことを理由として懲戒上申をするとともに、Xに係る辞職承認上申をした。

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<本件各処分等について>

▼ 警視総監は上記上申を受け、上記事由が地方公務員法29条(懲戒)1項3号所定の「全体の奉仕者たるにふさわしくない非行のあった場合」に該当し、さらに同法33条(信用失墜行為の禁止)で禁止されている「職の信用を傷づけ、又は職員の職全体の不名誉となるような行為」にも該当するとして、Xに対し、22年3月19日付で同法29条1項1号、3号に基づく減給100分の10、3ヵ月の本件減給処分および本件辞職承認処分をし、同日、甲署長はXに対し、本件各処分に係る辞令等を交付した。

★ 本件減給処分に係る処分説明書における処分理由(以下「本件懲戒事由」という)は「21年11月19日午後11時30分頃、甲署単身寮において、同僚職員のICカード1枚を窃取するなど、警察官としてあるまじき行為をなし、著しく規律を乱した」というものであった。

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