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#607 「龍生自動車事件」東京地裁

2024年2月21日に配信した「会社にケンカを売った社員たち」第607号で取り上げた労働判例を紹介します。


■ 【龍生自動車(以下、R社)事件・東京地裁判決】(2021年10月28日)

▽ <主な争点>
会社解散・清算を前提とした解雇など

1.事件の概要は?

本件は、R社と労働契約を締結したXが会社解散に伴う解雇をされたことについて、同社に対し、(1)当該解雇が無効であると主張して、労働契約上の権利を有する地位にあることの確認ならびに解雇後の賃金月額19万3894円およびこれらに対する遅延損害金の支払を求めるとともに、(2)R社による違法な解雇および本件訴訟における不誠実な態度が不法行為を構成すると主張して、同社に対し、慰謝料100万円の支払を求めたもの。

2.前提事実および事件の経過は?

<R社およびXについて>

★ R社は、一般旅客自動車運送事業等を業とする会社である。

★ Xは、R社と労働契約を締結し、2002年11月以降、タクシー乗務員として勤務してきた者である。


<Xの解雇、R社の解散・清算手続に至った経緯等について>

[新型コロナウイルス感染症の感染拡大と緊急事態宣言の発出]
▼ 2020年の年初頃から、国内外で新型コロナウイルス感染症の感染が拡大したことを受け、内閣総理大臣は同年4月7日、新型インフルエンザ等対策特別措置法32条1項に基づき、東京都等を緊急事態措置を実施すべき区域とする緊急事態宣言を発出した。

[Xの解雇]
▼ R社はXに対し、2020年4月15日、近年の売上低下および新型コロナウイルス感染症拡大に伴うさらなる売上の激減により事業の継続が不可能な事態に至ったとして、就業規則27条1項13号に基づき、同年5月20日をもって解雇するとの意思表示をした(以下「本件解雇」といい、本件解雇からその効果が発生するまでの期間を「本件解雇予告期間」という)。なお、同社はXのほか全ての従業員に対しも本件解雇と同様の解雇の意思表示をした。

[R社の解散と予備的解雇]
▼ R社は本件解雇予告期間中の事業譲渡に向けて、候補企業と交渉したが、同年5月14日、成就しないことが確定した。

▼ R社は同年6月2日、臨時株主総会の決議により解散し、清算手続が開始した。

▼ R社はXに対し、同年7月28日、同社が清算手続に入ったなどとして、就業規則27条1項13号に基づき、予備的に同年8月31日をもって解雇するとの意思表示をした。

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