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#535 「O・S・I事件」東京地裁(再々掲)

2021年4月14日に配信した「会社にケンカを売った社員たち」第535号で取り上げた労働判例を紹介します。


■ 【O・S・I(以下、O社)事件・東京地裁判決】(2020年2月4日)

▽ <主な争点>
賃金総額の25%減額への同意など

1.事件の概要は?

本件は、Xが「O社がセクシュアルハラスメント等を理由にXの賃金を減額し、さらにXが行方不明となり連絡がとれなかったことにより退職したものとみなして就労を拒んだ」と主張して、雇用契約に基づき、O社に対し(1)雇用契約上の権利を有する地位にあることの確認、(2)平成27年10月支払分の未払賃金(減額前の24万円から既払金を控除した残金1万7142円)および同年11月分支給から30年3月支給分までの賃金(24万円の29ヵ月分696万円)の合計697万7142円ならびにこれに対する遅延損害金の支払、(3)30年4月から本判決確定の日まで毎月賃金24万円およびこれに対する遅延損害金の支払を求めるとともに、(4)会社法350条または不法行為に基づき、慰謝料200万円およびこれに対する遅延損害金の支払を求めたもの。

2.前提事実および事件の経過は?

<O社およびXについて>

★ O社は、有料老人ホームの設置設営等を目的とする会社である。

★ Xは、平成25年12月にO社と雇用契約を締結し、デイサービスセンター(以下「本件施設」という)において、機能訓練指導員として就労していた者である。26年3月、XはO社との間で雇用契約に基づく賃金を基本給23万円・機能訓練指導員手当1万円の合計24万円に変更するとの合意をした。

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<Xが退職したとみなされるに至った経緯、本件退職条項等について>

▼ O社の代表者であるAはXに対し、27年7月、(1)Xが同社に無断でアルバイトをした旨、(2)本件施設の女性利用者の家族が、Xが同女性利用者に対してセクハラをしたことを理由として刑事告訴を検討している旨指摘して、3日間謹慎するよう命じ、処分は追って決める旨告げた。

▼ A代表はXに対し、同年8月、従事する業務を介護職員に変更し、その賃金を基本給18万円のみに減額する旨記載のある雇用契約書(以下「本件契約書」という)を交付して、署名押印を求めた。Xはこれに署名押印して、同代表に提出した(以下「本件合意」という)。

▼ O社の従業員で本件施設の管理者であったBはXに対し、同年9月21日、(1)女性利用者がXの存在を理由としてデイサービスの利用を止めたいと申入れをしてきた旨、(2)女性従業員がXに体を触られたと述べている旨指摘した。

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