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#81 「ザ・スポーツコネクション事件」東京地裁

2005年3月30日に配信した「会社にケンカを売った社員たち」第81号で取り上げた労働判例を紹介します。


■ 参考条文

★ 労働基準法

第41条(労働時間等に関する規定の適用除外)
この章、第6章及び第6章の2で定める労働時間、休憩及び休日に関する規定は、次の各号の一に該当する労働者については適用しない。
1.(略)
2.事業の種類にかかわらず監督若しくは管理の地位にある者又は機密の事務を取り扱う者
3.(略)

第93条(効力)
就業規則で定める基準に達しない労働条件を定める労働契約は、その部分については無効とする。この場合において無効となった部分は就業規則で定める基準による。

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■ 【ザ・スポーツコネクション(以下、S社)事件・東京地裁判決】(2000年8月7日)

▽ <主な争点>
振替休日事後取得の取扱変更

1.事件の概要は?

S社では、公休日に出勤した従業員について「2年以内に振替休日を取得すること」を認めていたが、「2ヵ月以内に振替休日を取得すること」に取扱いを改めるとともに、「課長代理以上の役職者は、振替休日を取得していない分の公休日について、振替休日の取得を一切認めないこと」を決定した。

本件は、上記の決定が有効であると思い込んでいたXが平成11年2月15日をもってS社を退職する旨の申し出をしたが、実際には上記決定は無効であり、したがって、Xの退職の申し出は錯誤により無効であるから、Xが退職したのは11年2月15日ではなく、振替休日をすべて取得したものとして計算した場合の退職日である同年8月15日であること等を理由にS社に対し、未払賃金等の支払いを求めたもの。

2.前提事実および事件の経過は?

<S社およびXについて>

★ S社は、スポーツクラブの経営等を目的とする会社である。

▼ X(女性)は、昭和58年3月にS社に入社した者である。Xは平成7年6月に総括部経理課長代理、8年4月には経理課長に就任したが、役職に対する手当として1ヵ月当たり約3万円程度の支給を受けていた。

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<S社の就業規則の定め、公休日出勤の取扱いについて>

★ S社は就業規則により、年間の公休日を101日と定め、1ヵ月当たりの勤務のローテーションを組んで、あらかじめ公休日等を具体的に特定して個々の従業員ごとに割り当てていた。また、同就業規則には「業務の都合でやむを得ない場合は、公休日を1週間以内の他の日と振り替えることがある」旨の定めがあった。

★ S社は公休日の出勤について、「(a)業務上の都合により従業員が公休日に出勤する場合は、事前に所属長経由で公休日に出勤する旨の届出をしなければならない、(b)事前の届出のない場合には公休日の出勤を認めない、(c)公休日に出勤した場合は、原則として当月または翌月のローテーション内で調整し振り替えて公休日を取得しなければならない、(d)やむを得ず振替休日を取得できない場合は、満2年間にかぎり残数が保留され消滅しない」という取扱いをしてきた。

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<本件公休日出勤の取扱いの変更等について>

▼ S社は10年12月16日、従業員が公休日に出勤した場合の上記の取扱いを「出勤した公休日から2ヵ月が経過した後は公休日を他の日に振り替えて取得することはできない」という取扱いに改め(以下「本件公休日出勤の取扱いの変更」という)、その旨を従業員に通知した。

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