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#586 「テトラ・コミュニケーションズ事件」東京地裁(再掲)

2023年4月26日に配信した「会社にケンカを売った社員たち」第586号で取り上げた労働判例を紹介します。


■ 【テトラ・コミュニケーションズ(以下、T社)事件・東京地裁判決】(2021年9月7日)

▽ <主な争点>
弁明の機会を付与されずに行われたけん責処分と損害賠償請求など

1.事件の概要は?

本件は、T社に雇用される労働者であったXが、同社から違法無効な懲戒処分を受けたことによって損害を被ったと主張して、T社に対し、民法709条(不法行為による損害賠償)または会社法350条(代表者の行為についての損害賠償責任)に基づく損害賠償として150万円およびこれに対する遅延損害金の支払を求めたもの。

2.前提事実および事件の経過は?

<T社およびXについて>

★ T社は、情報通信技術に関するコンサルティング業務等を目的とする会社である。

★ Xは、2018年5月、T社との間で労働契約(賃金月額57万円、期間の定めなし、業務内容・システムエンジニア業務およびその他関連業務)を締結し、同社の従業員であった者である。


<本件訴訟提起に至った経緯等について>

▼ Xは2019年5月29日、T社から同月24日に同社のグループウェアに職務と関係のないT社または同社代表者を批判する内容の書き込みをしたことを処分事由とするけん責処分を受け、6月4日、始末書を提出した。

▼ Xは7月2日にもT社からけん責処分を受けた(ただし、7月2日付けん責処分は後に取り消し)。

▼ Xは2020年4月20日、T社のアドミニストレーショングループの担当者であるAから、同社の企業年金の確定拠出年金への移行(以下「DC移行」という)に係る必要書類の提出を求められ、Aに対し、関連資料の送付を求めた上、「この件で、私が不利益を被ることがありましたら、訴訟しますことをお伝えします」とのメッセージ(以下「本件メッセージ」という)を送信した。

▼ これに対し、T社代表者は翌21日、Xに対し、弁明の機会を付与することなく、メールで「2020/4/20 アドミニストレーショングループAさんに対する『訴訟』という単語による脅迫および非協力的な態度」が懲戒事由に該当するとして、けん責処分(以下「本件けん責処分」という)をして同月24日午後6時までに始末書を提出するよう命じた。

▼ Xは同年6月、T社に対し、同月30日付で退職する旨の退職届を提出した。そして、XがT社から違法無効な懲戒処分を受けたことによって損害を被ったと主張して、同社に対し、民法709条または会社法350条に基づく損害賠償として150万円等の支払を求め本件訴訟提起に至った。


<T社の就業規則の定めについて>

★ T社の就業規則には、次の規定(抜粋)がある。

第73条(制裁の種類、程度)
(1)けん責 始末書を徴して将来を戒める

第74条(懲戒事由)
社員が次の各号のいずれかに該当する場合は、懲戒処分を行う。ただし、違反行為が軽微であるか、情状酌量の余地があるかまたは改悛の情が明らかである場合は、懲戒を免除し訓戒にとどめることがある。

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