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#561 「洛陽交運事件」京都地裁

2022年4月27日に配信した「会社にケンカを売った社員たち」第561号で取り上げた労働判例を紹介します。

■ 【洛陽交運(以下、R社)事件・京都地裁判決】(2017年6月29日)

▽ <主な争点>
定額残業代に関する対価性要件の判断方法など

1.事件の概要は?

本件は、R社の従業員であるXが同社に対し、(1)2013年3月22日から2016年2月19日までの時間外・深夜早朝勤務手当235万4107円ならびに遅延損害金の支払を求めるとともに、(2)労働基準法114条に基づく付加金198万6992円およびこれに対する遅延損害金の支払を求めたもの。

2.前提事実および事件の経過は?

<R社およびXについて>

★ R社は、自動車による運送事業を営む会社である。

★ Xは、2010年3月、R社とタクシー乗務員として労働契約を締結した者である。


<R社の就業規則の定め、賃金体系等について>

★ R社がXに支払った給与は、月払給与と臨時給与からなる。

★ R社の就業規則には、乗務員の賃金について次の定めがある。

(ア)旧就業規則(1998年4月1日施行)
第50条
乗務員の賃金は、基準内賃金と基準外賃金とをもって構成し、基準内賃金は本給皆勤手当、家族手当その他に分け、基準外賃金は時間外勤務手当、深夜勤務手当その他としてその細部ならびに賃金体系は別に定める。

(イ)新就業規則(2015年9月21日一部改定)
第49条
乗務員の賃金は、基準内賃金と基準外賃金をもって構成し、基準内賃金は基本給とし、基準外賃金は時間外勤務手当、深夜勤務手当、休日出勤手当に分け、その細部ならびに賃金体系は別に定める。

★ 2012年5月21日以降、R社では労働組合との協定に基づき、タクシー乗務員賃金体系表を改定したが、給与明細書では法定計算額ではなく、基準外賃金等の各手当額のみが表示されて支給され、給与計算システム上も法定計算額が基準外賃金等による額を上回る場合に差額を支給する仕組みとなっておらず、法定計算額との大小いかんにかかわらず、基準外賃金等が支払われていた。

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