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#494 「ハンターダグラスジャパン事件」東京地裁

2019年9月4日に配信した「会社にケンカを売った社員たち」第494号で取り上げた労働判例を紹介します。

■ 【ハンターダグラスジャパン(以下、H社)事件・東京地裁判決】(2018年6月8日)

▽ <主な争点>
転居命令と業務上の必要性など

1.事件の概要は?

本件は、H社の従業員であるXが、同社が平成28年11月4日にした転居命令(本件転居命令)に従わなかったことを解雇事由として29年3月31日付で解雇されたこと(本件解雇)から、H社に対し、本件解雇は客観的合理的理由および社会通念上の相当性を欠き、労働契約法上無効であるなどと主張して、労働契約上の地位の確認、本件転居命令に従う義務のないことの確認、未払賃金の支払等を求めたもの。

2.前提事実および事件の経過は?

<H社およびXについて>

★ H社は、本社はオランダに所在する外資系企業であり、金属製組み立て式天井板および建設外装等、ならびにインテリア・ブラインドその他窓用、扉用日よけ等の輸出入、製造および販売等の事業を営む会社である。

★ Xは、東京都内で共働きの妻と中学生の長男と同居しており、平成20年1月、H社との間で期間の定めのない労働契約を締結した者である。Xの入社時において、「勤務地は東京本社、通勤交通費はH社の認める通勤経路に要する実費につき全額支給」とされていた。

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<本件配置転換、本件転居命令、本件解雇に至った経緯等について>

▼ H社はXが所属する部門事業の業績不振から、27年11月、同事業からの撤退そして同部門の東京の事務所を閉鎖した。同月時点で同部門にいた社員7名のうち、Xを含む4名が同年12月1日付で茨城工場へ異動し(以下「本件配置転換」という)、Xの業務は梱包作業となった。

★ Xの茨城工場への通勤所要時間は電車・バスの乗車時間が2時間45分程度、東京の自宅から最寄駅までは徒歩で約13分であった。

▼ Xは同年12月18日の通勤途中に過失なく車に衝突されたが、約4ヵ月間の休職と40日間のリハビリ勤務を経て、医師から「就労可能」との診断を得た上で28年6月には梱包作業に復職した。

▼ H社は28年11月、Xに対し、12月1日から茨城工場近くに単身で転居するよう命令した(以下「本件転居命令」という)。Xは通勤費を自己負担した上で東京の自宅から通勤したい旨を伝えたが、H社は安全管理の見地から認められないと回答した。

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