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#69 「グレイワールドワイド事件」東京地裁

2005年1月5日に配信した「会社にケンカを売った社員たち」第69号で取り上げた労働判例を紹介します。


■ 【グレイワールドワイド(以下、G社)事件・東京地裁判決】(2003年9月22日)

▽ <主な争点>
私用メールで上司を誹謗中傷したこと等を理由になされた解雇

1.事件の概要は?

本件は、G社に勤務していたXが同社に対し、就業時間中の私用メール、人事情報の漏洩等を理由になされた解雇は無効であると主張して、労働契約上の地位の確認ならびに賃金等の支払いを求めたもの。

2.前提事実および事件の経過は?

<G社およびXについて>

★ G社は広告企画、ブランド構築等を主たる業務とする外資系企業である。

▼ Xは昭和54年2月、G社に採用され、平成元年11月からはインターナショナル・コーディネーターとして、主に秘書業務、英文による情報提供業務、翻訳業務等に従事していた者である。

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<本件解雇に至った経緯等について>

▼ Xは13年5月23日から同年6月19日までの出勤日20日間にG社から貸与されたパソコンを使用して私用メール49通(うち就業時間内は39通)を送受信したが、G社の取引先や競合会社の従業員を含む友人らに送信した私用メールの中には、G社が行った人事についての不満や、上司に対する批判が含まれていた。

★ G社では従業員に就業時間中の私用メールを禁止する旨の規則や命令はなく、X以外にも就業時間中に私用メールを送受信したことのある従業員は複数いた。

▼ Xは同年5月30日、同月28日に実施されたG社従業員の昇格人事の一覧(個人名および新しい肩書が併記されたもの)をG社の元社員2名にメールで送信した。

▼ XはすでにG社を退職することを決意していたYから、G社と競合関係にあるK社の従業員を紹介してほしいと頼まれたため、同年5月29日、K社の社員に対し、Yを紹介する内容のメールを送信した。

▼ G社は同年6月19日、Xが機密漏洩をしたことについての懲戒処分を決定するためであるとして、Xに対し、無期限の出勤停止を命じた。

▼ G社は同年9月28日、(a)就業時間中の私用メール、(b)私用メール中の上司の誹謗中傷、(c)人事情報の漏洩、(d)他の従業員の転職の斡旋などが就業規則上の解雇事由に当たるとして、Xに対し、同月30日付で解雇する旨の意思表示をした(以下「本件解雇」という)。

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<G社の就業規則の定めについて>

★ G社の就業規則には、以下のような定めがある。

第35条1項 従業員が次の各号の一に該当する場合は解雇する。

1.第37条によって、懲戒解雇の処分を受けたとき
2および3(省略)
4.業務能力または勤務成績が著しく不良のとき
5.その他前各号に準ずるやむを得ない事由のあるとき

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