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#546 「メディカル・ケア・サービス事件」東京地裁

2021年9月22日に配信した「会社にケンカを売った社員たち」第546号で取り上げた労働判例を紹介します。

■ 【メディカル・ケア・サービス(以下、M社)事件・東京地裁判決】(2020年3月27日)

▽ <主な争点>
有期雇用契約の試用期間中の解雇など

1.事件の概要は?

本件は、M社と有期雇用契約を締結したXが同社に対し、(1)解雇は無効であるとして、民法536条(債務者の危険負担等)2項に基づき、雇用期間満了日までの月例賃金合計68万4000円および遅延損害金、(2)M社の使用人らによるパワーハラスメントがあったとして、不法行為(使用者責任を含む)に基づき、慰謝料300万円および弁護士費用30万円ならびに遅延損害金の支払を求めたもの。

2.前提事実および事件の経過は?

<M社およびXについて>

★ M社は、介護保険法による認知症対応型共同生活介護事業等を目的とする会社である。

★ Xは、平成30年7月にM社に採用され、グループホームにおいて入居者の介護・生活援助等の業務を行っていた者である。

★ XとM社との間の雇用契約は、雇用期間を同年7月1日から12月31日までとされており、「原則3ヵ月」とする試用期間も設けられていた。

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<本件解雇に至った経緯等について>

▼ グループホームではXを含む従業員らに対し、就労を開始した日に礼節や言葉遣い、認知症に関する知識、虐待や不適切な対応に関する心構え等を説明した。

▼ グループホームの施設長であるAは同日から1週間経たないうちにエリアマネージャーのBに対し、Xが入居者に対し、小学生のような言葉遣いをしたり、執拗に戦争の話をしたりするなど、配慮に欠ける言動に及んだ旨訴えた。

▼ Xは上記のような言動を注意した他の従業員らに対し、反省の態度を示すどころか、反抗的な態度を示し、個々の業務についても何度も同じ誤りを繰り返した。

▼ このため、入居者はXに対する嫌悪感を口にし、従業員はXと同じシフトで仕事をする際にはストレスが大きく、不眠や胃痛等の体調不良が生じる旨訴えた。

▼ このような中、7月中旬頃、AはXの担当業務を入居者と直接接する介護から、記録作業を中心とするものに変更した。

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