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#227 「新日本製鐵事件」横浜地裁

2009年2月18日に配信した「会社にケンカを売った社員たち」第227号で取り上げた労働判例を紹介します。

■ 【新日本製鐵(以下、S社)事件・横浜地裁判決】(2007年7月31日)

▽ <主な争点>
定年退職予定者を対象とした長期教育および休業措置の必要性等

1.事件の概要は?

本件は、研究者として雇用されていたXが定年に達する1年前に6ヵ月の教育期間と6ヵ月の休業期間からなる長期教育・休業措置(以下「本件措置」という)の対象者とされたのは違法であると主張し、本件措置により賃金が減額されたとして、雇用契約に基づき、減額分の賃金等の支払いを求めるとともに、それまで従事していた研究から離脱させられたことにより精神的損害を被ったとして、不法行為に基づき、慰謝料の支払いを求めたもの。

2.前提事実および事件の経過は?

<S社およびX等について>

★ S社は、鉄鋼の製造・販売等を目的とする会社であり、東京都に本社を置き、全国9ヵ所に製鉄所、東京に製造所を設置しているほか、エンジニアリング事業部、新素材事業部、技術開発本部等を設けている。

★ S社には、製鉄所および製造所の各地域に所属する従業員をもって組織されている10の労働組合と、各事業部や技術開発本部等に所属する従業員などで組織されている本社労働組合とが存在し、これら11の各労働組合の上部組織として労働組合連合会(以下「連合会」という)がある。

★ S社と連合会は、ユニオンショップ条項を含む労働協約を締結しており、同社と連合会および各労働組合(以下、単に「組合」という)との間で協議、交渉を行う場として、経営審議会、労使委員会および団体交渉が設定されている。

★ X(昭和18年生)は、昭和36年4月、S社の前身であるY社に雇用され、一貫して研究職に従事し、平成11年4月からはS社の技術開発本部先端技術研究所に所属していた。そして、9年4月以降、高純度シリコンの製造研究(以下「本件研究」という)に従事していた。

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<本件措置実施の経緯等について>

▼ S社は、昭和62年3月決算期の経常損益において126億円の損失を計上することとなったため、昭和62年度から平成2年度までの中期総合計画において、約1万9千名の人員削減を図ることとした。

▼ しかしながら、出向や派遣を拡大するだけでは大量の余剰人員を吸収できなかったことから、60歳定年制への移行を3年間停止するほか、定年1年前の従業員を対象に、原則として6ヵ月の教育期間と6ヵ月の休業期間からなる本件措置を実施することとした(平成元年10月にて中止)。

▼ S社は、平成6年度から8年度までの中期経営計画において、健全な経営を維持しうる収益水準の確保と国内外の最強競合者と対抗しうるコスト水準を実現すること等を目的として、7千名規模の人員削減を図ることとし、出向、転籍、早期退職援助措置等とともに本件措置を実施することとした(平成8年3月まで)。

▼ S社は、9年度からの中期経営方針においては、各箇所、各職場の要人員状況、生産状況等に応じて人員措置をとることとし、同年度以降、技術開発本部においてのみ本件措置を実施していた。

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<S社と連合会との労働協約、Xに対する本件措置等について>

★ S社と連合会との間の労働協約55条において、同社は「業務上の必要がある場合には、組合員を臨時休業させることがある」と定めている。

★ 上記労働協約は、70条において賃金等の労働条件については別に定める旨を規定しており、これに基づく「休業手当等に関する覚書」において、休業期間中は賃金を控除して休業手当を支給するものとしている。

▼ S社はXに対し、14年1月、本件措置を実施する旨を告げ、資料を示してその内容を説明した。さらに、同社は本件措置を実施されることに難色を示すXに対し、同年2月にも中期連結経営計画の策定経緯を説明しながら、本件措置に対する理解を求めた。

▼ 同年3月中旬、S社はXに対し、同年4月から本件措置を実施する旨の発令をした。なお、Xに対する本件措置は、同年9月末日までを教育期間、同年10月から15年3月末日までを休業期間とするものであり、教育期間中はXに対して所定の賃金を支払い、休業期間中は上記の「休業手当等に関する覚書」に基づく休業手当を支払うこととされていた。

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