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#599 「トヨタモビリティ事件」東京地裁(再掲)

2023年11月1日に配信した「会社にケンカを売った社員たち」第599号で取り上げた労働判例を紹介します。


■ 【トヨタモビリティ(以下、T社)事件・東京地裁判決】(2022年9月2日)

▽ <主な争点>
運転免許停止処分中の自動車運転行為を理由とした懲戒解雇の効力など

1.事件の概要は?

本件は、T社との間で雇用契約を締結していたXが同社に対し、懲戒解雇が無効であると主張して、雇用契約上の権利を有する地位にあることの確認を求めるとともに、2020年3月分の未払賃金26万6725円およびこれに対する遅延損害金ならびに同年4月から本判決確定の日まで、毎月25日かぎり賃金月額35万5000円およびこれに対する遅延損害金の支払を求め、上記地位確認請求が認容されない場合の予備的請求として、退職金513万6550円およびこれに対する遅延損害金の支払を求めたもの。

2.前提事実および事件の経過は?

<T社およびXについて>

★ T社は、自動車その他各種輸送用機器の販売、賃貸および修理等を目的とする会社である。

★ Xは、1993年頃、T社との間で期間の定めのない雇用契約を締結し、2003年以降は営業職として勤務していた者である。


<本件免停処分、本件運転行為、本件懲戒解雇に至った経緯等について>

▼ Xは2019年8月頃、自動車の運転中に携帯電話用装置を使用したことにより6回目の検挙をされ、30日間の免停処分を受けたが、短期講習(受講により免停処分の期間が短縮されるもの)を受講しなかった。

▼ Xは同年9月頃、信号に従わなかったことにより検挙され、11月下旬から60日間の免停処分(以下「本件免停処分」という)を受けることとなり、上司(店長)に対し、本件免停処分を受けることを報告した。

▼ Xは本件免停処分を受けていた期間中である同年12月4日、重要な顧客から代車を届けるよう求められたが、店舗に運転を依頼できる職員がいなかった。Xは上司に具体的な状況を報告して対応を諮ることをしないまま、親しい関係にある別の顧客に相談した結果、当該別の顧客にその後の運転を依頼することとし、勤務先の店舗から約1.3km離れた待ち合わせ場所の商業施設までT社の社用車を運転した(以下「本件運転行為」という)。

▼ T社は2020年2月、本件運転行為が懲戒事由に該当するとしてXを諭旨退職とする旨の決定をし、Xに通知した。その後、Xが代理人を選任し、退職に応じない意思を表明したことから、同社は同年5月1日、Xを懲戒解雇とする旨の決定をし、同月26日にT社代理人がX代理人に対し、Xを懲戒解雇(以下「本件懲戒解雇」という)する旨の意思表示をした。

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