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#401 「アズコムデータセキュリティ事件」東京地裁

2015年12月22日に配信した「会社にケンカを売った社員たち」第401号で取り上げた労働判例を紹介します。

■ 【アズコムデータセキュリティ(以下、A社)事件・東京地裁判決】(2014年12月24日)

▽ <主な争点>
安全配慮義務違反と休職処分の効力など

1.事件の概要は?

XはA社の従業員であったところ、平成25年8月24日以降欠勤し、同年12月3日に休職処分がなされた。

本件は、Xが上記欠勤はA社の安全配慮義務違反に基づくものであり、また、上記休職処分が無効であると主張し、月額給与の支払いを求めるとともに上記安全配慮義務違反、無効な休職処分および無効な賃金減額の通知によって精神的苦痛を受けたと主張して、慰謝料50万円の支払いを求めたもの。

2.前提事実および事件の経過は?

<A社およびXについて>

★ A社は、文書管理のための総合コンサルティング事業、コンピュータシステムに係るソフトウェア等の開発と販売等を目的とする会社である。

★ Xは、平成24年3月、A社との間で年俸960万円で期間の定めのない雇用契約を締結した者である。なお、同社は同年4月から新規に延長保証事業を開始することとし、Xを含む延長保証事業の経験者を中途採用したものである。

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<Xの休職から退職に至った経緯等について>

▼ A社は24年10月、延長保証部門を閉鎖することを決定し、同年12月28日をもってXほか2名の部長職を解雇した。

▼ Xは地位確認および賃金の支払い等を求める労働審判を申し立てたところ、審判がされ、異議が申し立てられたため、訴訟移行した(以下「前件訴訟」という)。前件訴訟において、A社は25年7月、地位確認および未払賃金の請求について認諾した。

▼ XはA社から越谷セキュリティセンターで勤務するよう命じられ、25年8月12日、集配業務に従事した。Xは翌13日から18日まで欠勤し、19日から出勤した。

▼ Xは同月24日、主治医から不安障害と診断された。この診断においては「不安感増大・睡眠障害等の著明であり、就労困難である。治療のため3ヵ月の自宅療養が必要である」との意見が付されており、A社との間で同日から11月30日まで欠勤することで合意した。

▼ Xは同年11月20日、当時のA社常務取締役で現代表者であるBと面談したところ、給与を12月から月額65万5000円(42時間までの残業代を含む)に変更する旨を伝えられた。

▼ Xは11月30日、主治医作成の「病状が改善しているため、復職に関して問題なしと考える」と記載された診断書(以下「本件診断書」という)をA社に送付した。

▼ Xは12月の最初の勤務日である同月2日に出勤しなかった。A社は翌3日、Xが就業規則所定の休職事由である「私傷病による欠勤が3ヵ月を経過しても、なお療養のために休業を必要とするとき」に当たるとして、同日から1年3ヵ月間の休職とした(以下「本件休職処分」という)。

▼ 前件訴訟からのXの代理人(弁護士)はA社に対し、12月5日付の文書において、労務受領拒否を撤回するよう求めた。これに対し、同社は同月12日付の文書で、「Xの疾病が治癒したとの診断書も就業規則に定められた勤務が可能であるとの診断書も提出されていない」と回答した。

▼ Xは上記の欠勤以降、勤務することがなく、26年5月31日でA社を退職した。

3.元社員Xの主な言い分は?

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