#412 「X商事事件」東京地裁(再掲)
2016年5月25日に配信した「会社にケンカを売った社員たち」第412号で取り上げた労働判例を紹介します。
■ 【X商事事件・東京地裁判決】(2015年3月13日)
▽ <主な争点>
産休・育休中の退職扱いなど
1.事件の概要は?
本件は、Aが育児休業後の復職予定日である平成25年6月17日以降、X商事(X社)に出社していないことについて同社に帰責性がある旨主張し、AおよびX社間の雇用契約に基づき同日以降の賃金の支払を求めるとともに、同社が産前産後休業中のAに退職通知を送付するなどした行為が違法である旨主張し、不法行為に基づく損害賠償(慰謝料)を求めたもの。
2.前提事実および事件の経過は?
<X社およびAについて>
★ X社は、昭和47年に設立された洋酒の輸入等を行う会社であり、従業員数は20名ないし25名程度で、その男女比は概ね3:2程度である。
★ Aは、平成20年9月にX社と雇用契約を締結した者である。
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<Aの出産までの経緯、本件退職通知等について>
▼ Aは平成23年10月頃に妊娠していることが判明したため、X社の専務取締役にあらかじめ報告した上で、24年1月、同社の人事担当であるC同席の下、代表者であるBと面談し、産前産後休業および育児休業を取得したい旨を伝えたところ、B代表はこれを承諾した。
▼ Aは24年2月、出産予定日が同年6月23日であることを前提に育児休業申出書をX社に提出して同年8月1日から25年6月23日までの育休の取得を申し出た。また、24年4月、休暇届を提出し、同年5月14日および15日の有給休暇の取得ならびに5月16日から8月18日までの産休の取得をそれぞれ申請した。
▼ Aは出産予定日よりも早い24年6月17日に出産した。
▼ 同年6月18日と21日、AはCから電話で「B代表からAを退職扱いにするよう指示があった」旨を告げられたため、退職扱いの撤回を求めた。
▼ 同年6月30日、退職金として現金3万2500円が同封された退職通知(以下「本件退職通知」という)がX社からA宛てに送付されたが、その後、同社はAの退職扱いを取り消し、A宛てに育児休業許可通知(育児休業期間を「24年8月13日~25年6月16日」、職場復帰予定日を「25年6月17日」とする)を送付した。
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<あっせん手続の申立て、その後の交渉等について>
▼ 25年4月、AはX社に対して就労証明書の発行を依頼したが、同社が直ちに就労証明書を発行しなかったことから、Aは状況についての説明を得るため、Cとの間で電話またはメールでやり取りをした。
▼ 同年5月、Aは東京都労働局に対し、あっせんを申し出た。あっせん手続にはCが出席したが、一回の期日のみで不調により終了した。
▼ Aは同年6月12日付内容証明郵便でX社に対し、同社の責めに帰すべき事由により就労不能となっていること、雇用関係の終了を認めるものではないことなどを伝えた上で給与の支払を求めるなどしたが、解決の見通しが立たなかったため、同年8月7日、労働審判を申し立てた。
▼ X社は同年8月29日、代理人弁護士を介して「X社はAに対し、解雇の通知、退職勧奨および復職の拒絶をした事実はなく、再三にわたり面談に赴くよう連絡をした。同社はAに対し、本書面到達後直ちに出社するよう本書面をもって通知する」旨を記載した通知書を送付した。
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