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#234 「ケイビィ事件」大阪地裁

2009年5月27日に配信した「会社にケンカを売った社員たち」第234号で取り上げた労働判例を紹介します。

■ 【ケイビィ(以下、K社)事件・大阪地裁判決】(2008年9月26日)

▽ <主な争点>
試用期間中に行われた解雇の有効性等について

1.事件の概要は?

本件は、試用期間中に解雇されたXが、通勤手当の支払い、費用償還および慰謝料の支払いに加えて、主位的に違法解雇を理由とする逸失利益の賠償、予備的に解雇予告手当の支払いをK社に対し、求めたもの。

2.前提事実および事件の経過は?

<Xおよび本件雇用契約書について>

▼ Xは、平成19年1月、K社の代表者であるAの面接を受け、その後、同社から採用内定の通知を受けた。

▼ K社は、同年2月、以下の内容の雇用契約書(以下「本件雇用契約書」という)にA代表の記名押印をして、Xに交付した。
(1)雇用内容・・・EC事業部、金融関連事業部での事務作業等
(2)雇用期間・・・期間の定めなし。ただし、入社後3ヵ月を試用期間とする。
(3)就業場所・・・本社内
(4)就業時間・・・午前9時30分から午後6時30分まで
(5)休 日・・・土・日曜日および祝祭日、年末年始、夏季休暇
(6)給 与・・・年俸600万円とし、年俸の75%を12分割し、月々支給。残りを賞与として支給。ただし、試用期間中は月給23万円。毎月末日締め、翌月25日支払。
(7)賞 与・・・年2回(8月と12月)。会社の業績により支払日の変更または支給しないことがある。額は本人の成績勤務態度、能力等を勘案して定める。ただし、年俸で定められた賞与額がある場合の賞与額はこのかぎりではない。

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<本件解雇に至った経緯等>

▼ Xは19年4月2日、K社に出社し、A代表に対し、自らの署名押印をした本件雇用契約書および身元保証契約書等の書類を提出したところ、同代表から喫茶店に誘われた。A代表は同店において、Xに対し、新たに設立する投資顧問会社の代表者に就任するように申し入れ、本件雇用契約書のみを返還した。これに対し、Xは本件雇用契約書と同一の労働条件が保障されることを条件にその申し入れを受け入れた。

▼ 同月5日、Xは投資顧問業を目的とするF社を設立し、その代表取締役に就任した。A代表はF社の設立に際して、Xに対し、同社の代表者印を交付するとともに、同年5月25日、設立に要する費用として10万円を振り込みにより交付した。

▼ Xは同年4月2日から6月26日まで、K社の事務所に出勤し、同社のEC事業(インターネットによる通信販売)の業務に従事する一方で、A代表の指示を受けて、F社の投資顧問業登録等の開業準備を行っていた。

★ K社は、X名義の預金口座に次のとおり金員を振り込んだ
   19年5月25日 33万円(上記の費用10万円を含む)
   同年6月25日 23万円
   同年7月25日 37万8445円

▼ 同年6月25日、A代表はXに対し、K社の業績低下を理由に、同年7月以降の賃金を月額23万円に据え置くとともに、賞与をXの成績とK社の業績に応じて支給する内容に労働条件を変更する旨通告した上、Xがこの条件を受け入れなければ、辞めてもらう旨述べた。

▼ 翌26日、Xが態度を明らかにしなかったところ、A代表はXに対し、「6月26日付をもって、貴殿を解雇する。なお、30日分の平均賃金を支給します」と記載した「辞令」と題する書面を交付し、解雇の意思表示をした(以下「本件解雇」という)。

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