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#15 「東日本旅客鉄道事件」東京地裁(再掲)

2003年11月26日に配信した「会社にケンカを売った社員たち」第15号で取り上げた労働判例を紹介します。


■ 用語の解説

借地借家法」は、建物の賃貸借契約の更新、効力等に関し特別の定めをする法律で、同法第28条に「建物賃貸借契約においては、その賃貸期間の満了により、当該賃貸借契約が当然に終了するのではなく、契約が終了するためには期間満了のほかに賃貸人が更新を拒絶することが正当と認められる事由の存在が要件となる」旨が定められている。

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■ 【東日本旅客鉄道(以下、H社)事件・東京地裁判決】(1997年6月23日)

▽ <主な争点>
独身寮に入居している社員が使用制限年齢を超えていることを理由とする部屋の明渡し要求

1.事件の概要は?

本件は、H社がその従業員であるXに対し、Xは寮の利用規程に定められた使用制限年齢を超えていることを理由として、Xが占有している寮の一室の明渡しおよび使用料等相当の損害金の支払いを求めたもの。

2.前提事実および事件の経過は?

<Xの社宅への居住状況等について>

★ Xは、昭和53年の日本国有鉄道(以下、国鉄)入社と同時に社宅である寮に入居し、昭和63年7月からはH社の杉並寮に居住していた者である。なお、Xは昭和34年生まれで本訴提起時には36歳であった。

★ 杉並寮の一ヵ月の使用料は平成7年4月当時4,830円、光熱水料金は4,800円で合計9,630円だったが、8年4月より使用料は6,000円(合計10,800円)に改訂された。

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<H社の社宅等利用規程について>

★ H社は設立時(昭和62年)から「社宅および社員宿泊所等業務・利用規程」を制定し、これに基づいて社宅・寮の管理運営をしていた。

★ H社設立当時の社宅等利用規程では、「社宅等に居住できる期間については、別に定めるところによる」、「居住期間を経過した場合には、30日以内に寮を明渡さなければならない」とされていたが、居住期間に関して別に定めるものはなかった。

▼ H社は平成3年1月改正の社宅等利用規程において、「寮に居住できる期間は、独身の社員等にあっては満35歳となった日の属する月の末日までとする」と改訂し、その附則で「7年3月末までの間にかぎり、満35歳とあるのを満40歳とする」と定め、改正された規程を社内報に掲載するとともに、各事業所に配布し、備え置いて従業員に周知した。

3.社員Xの言い分は?

1)本件賃室使用関係には借地借家法(以下、借家法)が適用される!

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