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#286 「N社ほか事件」大阪地裁

2011年5月25日に配信した「会社にケンカを売った社員たち」第286号で取り上げた労働判例を紹介します。

■ 【N社ほか事件・大阪地裁判決】(2010年2月26日)

▽ <主な争点>
セクハラ行為の有無を確認するための面談においてされた退職勧奨行為の違法性等

1.事件の概要は?

本件は、Xが(1)女性従業員Aに対するセクハラ行為を行った事実の有無を確認するために行われた面談(本件面談)において、N社からセクハラ行為を理由に違法な退職勧奨(実質的には解雇)がなされたとして、同社に対して損害賠償(定年までの給与1892万円、退職金差額328万8700円、慰謝料500万円、弁護士費用270万円)を請求するとともに、(2)Xの退職にあたって、労働組合がN社と協議調整するなどしてXを救済する義務を果たさなかったとして、同組合に対して損害賠償(慰謝料100万円、弁護士費用10万円)を求めたもの。

なお、本件面談において、N社はXに対し、自主退職するか、賞罰委員会を開催し、Xに対する処分等を決める手続をするかの選択肢があることを告げたところ、Xは自主退職する旨述べた上で自己都合を理由とする退職届を提出し、同社はこれを受理した。

2.前提事実および事件の経過は?

<N社およびXについて>

★ N社は、各種自動車の販売、修理等を業とする会社である。

★ Xは、昭和53年9月、N社に入社した。また、XはN社労働組合(以下「本件組合」という)の組合員であった。

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<本件面談、Xの退職届提出に至った経緯等について>

▼ Xは平成19年7月、当時N社Y店店長であったBの立会いの下、N社営業本部第一営業本部次長のCと面談(以下「本件面談」という)を行った。

▼ 本件面談において、C次長はXに対し、XがN社の女性従業員Aに対してセクハラ行為を行った事実の有無を確認したところ、XはAの自宅に宿泊したことおよびAとホテルに行って性的関係を持ったことを認めたものの、いずれもAの同意の下で行ったものであり、セクハラ行為ではないと述べた。

▼ C次長は本件面談において、Xに対し、自主退職するか、翌日予定されている賞罰委員会を開催し、Xに対する処分等を決める手続をするかどちらかの選択肢があることを告げたところ(以下「本件退職勧奨行為」という)、Xは自主退職する旨述べた上で、N社に対し、自己都合を理由とする退職届を提出し、同社はこれを受理した。

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