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#201 「日本航空インターナショナル事件」東京地裁(再掲)

2008年2月6日に配信した「会社にケンカを売った社員たち」第201号で取り上げた労働判例を紹介します。

■ 参考条文

★ 育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律
(以下「育児・介護休業法」という)

第19条 事業主は、小学校就学の始期に達するまでの子を養育する労働者であって次の各号のいずれにも該当しないものが当該子を養育するために請求した場合においては、午後10時から午前5時までの間(以下この条において「深夜」という。)において労働させてはならない。ただし、事業の正常な運営を妨げる場合は、この限りでない。
1.当該事業主に引き続き雇用された期間が1年に満たない労働者
2.当該請求に係る深夜において、常態として当該子を保育することができる当該子の同居の家族その他の厚生労働省令で定める者がいる場合における当該労働者
3.前2号に掲げるもののほか、当該請求をできないこととすることについて合理的な理由があると認められる労働者として厚生労働省令で定めるもの

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■ 【日本航空インターナショナル(以下、J社)事件・東京地裁判決】(2007年3月26日)

▽ <主な争点>
少数派組合所属の深夜業免除者に対する乗務割当/育児・介護休業法と使用者義務

1.事件の概要は?

本件は、客室乗務員としてJ社に雇用され、同社の深夜業免除制度に基づいて深夜業免除の申請をしたAらが、J社によって無給日と指定された日(MSH)について、同社に対し、主位的に債務の本旨にしたがった労務の提供をしたにもかかわらず、当該日の就労を拒否された(主位的請求原因)、当該日に就労義務はなく、J社から勤務指示を受けたその余の日についてはいずれも勤務に従事した(予備的請求原因)と主張して、当該日にかかる賃金の支払いを求め、予備的に当該日にかかる休業手当の支払いを求めたもの。

2.前提事実および事件の経過は?

<J社およびAら4名について>

★ J社は、国際線および国内幹線における定期航空運送事業等を目的とする会社である。

★ Aは昭和55年、Bは53年、Cは58年、Dは56年にいずれも客室乗務員としてJ社に雇用され、Aらが賃金または休業手当の支払いを請求している期間(以下「本件請求期間」という)は、国際線への乗務を主とする成田基地に配置されていた。

★ Dを除くAら3名は、現在もJ社に勤務しており、Dは平成18年1月に同社を退職した。なお、Aらはいずれも少数派組合である日本航空客室乗務員組合の組合員である。

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<J社における深夜業免除制度について>

★ 深夜業免除を申請した客室乗務員については、午後10時から午前5時(以下「深夜時間帯」という)の勤務が免除される。

★ 客室乗務員が深夜業の免除を申請し、不就業が発生した場合には無給となる。すなわち、J社の賃金規程14条3号は、「客室乗務員が深夜業の免除を請求し、不就業が発生した場合」についての賃金の支払いは、その都度決定する旨規定しているところ、J社は16年7月、「客室乗務員が深夜業の免除を請求し、不就業が発生した場合」については賃金を支払わない旨決定した。

★ 業務手当一般保障は、不就業日が発生した日数分について案分して停止される。すなわち、客室乗務員が所定の乗務員編成の一員として、乗務に従事した場合あるいはJ社または他社の航空機に便乗した場合には乗務手当が支払われるが、この額が1ヵ月あたり65時間に相当する乗務手当額を下回る場合にはその差額が乗務手当一般保障として支払われていたところ、J社は客室乗務員諸手当規程16条1項8号を新設し、「客室乗務員が深夜業の免除を請求し、不就業が発生した場合」については業務手当一般保障が停止される旨規定した。

★ なお、J社に勤務する全客室乗務員の約85%により組織されているジャル労働組合(以下「JALFIO」という)は、上記各規程およびこれにしたがった取扱いに合意している。また、上記合意に際し、J社はJALFIOに対し、「深夜業免除の希望者数はコントロールできる性質のものではなく、かつ、事業計画に基づき作成する深夜業免除パターンの数も変動するものであることから、勤務日数の保障はしかねるものの、さらなる工夫の継続により与件に大幅な変更が生じないかぎり、当面の間、1暦月において5日間の勤務日を確保する」旨約した。

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<Aらの勤務実績等について>

▼ Aらは、本件請求期間において、深夜業免除を申請し、J社における深夜業免除制度の適用を受けた。Aら客室乗務員の具体的な労務内容は、J社から毎月指定される勤務割によって特定されたが、多くても月に2回程度しかアサイン(割り当て)されなかった。

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