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#550 「地方公務員災害補償基金事件」横浜地裁

2021年11月17日に配信した「会社にケンカを売った社員たち」第550号で取り上げた労働判例を紹介します。

■ 【地方公務員災害補償基金事件・横浜地裁判決】(2020年2月19日)

▽ <主な争点>
時間外勤務の必要性、うつ病発症の公務起因性など

1.事件の概要は?

本件は、Y町の職員であったXが在職中に発症したうつ病は過大な業務に伴う心理的負荷によるものである旨主張して、地方公務員災害補償基金から、上記うつ病は公務外の災害である旨の認定を受けたため、同基金に対して、公務外認定の取消しを求める処分の取消訴訟(行政事件訴訟法3条2項)の事案である。

地方公務員の公務災害補償制度においては、まず、公務上外の認定が行われ(地方公務員災害補償法45条1項)、次に各種の補償給付の請求(同法24条以下)がされる二段階の仕組みとされているところ、公務外の認定を受けた地方公務員は第1段目の公務外認定に対する取消訴訟を提起することになる。

2.前提事実および事件の経過は?

<Xについて>

★ Xは、平成18年4月、神奈川県のY町役場に採用された地方公務員であったが、25年6月に退職した者である。なお、Xは24年4月から行政推進部総務課主事として選挙管理委員会、法令審査等に関する業務等に従事していた。

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<Xのうつ病発症、退職、提訴に至った経緯等について>

▼ Xは24年11月7日、上司に「仕事を続けていく自信がない」等と述べて退職の申出をしたが、同申出を撤回した。その後、Xは同月14日午前中に仕事を休み(心療内科を受診し、うつ病の診断書を取得)、午後に出勤したものの、翌15日の1日と16日午前中に仕事を休んだ。

▼ その後Xは出勤を継続したものの、12月11日の勤務時間中に所在不明となり、家族に発見され、自宅に連れ戻された。Xは同月24日、うつ病の診断書を取得し、Y町に提出した。その後、25年6月にY町役場を退職した。

▼ Xはうつ病が公務に起因するとして、27年2月、地方公務員災害補償法に基づき、公務災害認定請求を行ったが、28年9月、公務外の災害と認定する旨の処分がなされ、その後の審査請求も棄却されたため、当該処分の取消しを求めて提訴した。

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<関係法令等の定め、認定基準等について>

★ 地方公務員災害補償法施行規則1条の2、同規則別表第1第9号は、人の生命にかかわる事故への遭遇その他強度の精神的または肉体的負荷を与える事象を伴う業務に従事したため生じた精神および行動の障害ならびにこれに付随する疾病を公務上の災害と定めている。

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