#287 「三菱重工業事件」神戸地裁姫路支部
2011年6月8日に配信した「会社にケンカを売った社員たち」第287号で取り上げた労働判例を紹介します。
■ 【三菱重工業(以下、M社)事件・神戸地裁姫路支部判決】(2010年12月8日)
▽ <主な争点>
請負会社従業員と注文会社との間に黙示の労働契約が成立しているか否か等
1.事件の概要は?
本件は、T社(請負会社)に雇用され、同社とM社(注文会社)との間の業務請負契約に基づき、M社の製作所において就労を開始したXが、同契約は労働者の供給を目的とするもので、職業安定法第44条* および労働基準法6条** に違反して無効であり、また同目的を有するX・T社間の労働契約も無効であって、X・M社間には就労開始当初から期限の定めのない黙示の労働契約が成立している等と主張して、M社に対し、労働契約上の権利を有する地位にあることの確認を求めたもの。
* 職業安定法 第44条(労働者供給事業の禁止)
「何人も、次条に規定する場合を除くほか、労働者供給事業を行い、又はその労働者供給事業を行う者から供給される労働者を自らの指揮命令の下に労働させてはならない。」
** 労働基準法 第6条(中間搾取の排除)
「何人も、法律に基いて許される場合の外、業として他人の就業に介入して利益を得てはならない。」
2.前提事実および事件の経過は?
<M社、T社およびXについて>
★ M社は、船舶および艦艇の建造、販売、修理および救難解体等を業とする会社である。
★ T社は、金属プレス加工および板金プレス加工、労働者派遣事業等を業とする会社である。
★ Xは、平成12年5月、T社との間で雇用契約を締結し、現在までM社の製作所において、業務に従事する者である。
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<M社・T社間の契約形態の推移等について>
▼ M社は平成12年頃、T社との間で同社を請負人とする業務請負契約を締結した。
★ T社従業員の労働時間管理は同社がしており、M社はしておらず、欠勤や休日出勤等についても、M社の許可が必要であったり、M社から指示がされたりことはなかった。
★ M社・T社間の請負代金額は品質、コスト、納期等を踏まえて、両者間の交渉で決定していたが、これとXの賃金とは連動しておらず、その具体的な額についてはT社が独自に決定しており、同決定にM社は関与しておらず、賃金の明細書もT社が発行していた。
▼ M社は平成18年3月、T社との間で労働者派遣に関する基本契約を締結し、同年4月より労働者派遣を開始することを個別契約によって決定した。
★ M社はT社との契約関係を業務請負から労働者派遣に切り替えたことに伴い、それまではT社が自社の社員に対し支給していた工具類につき、同年4月以降は自ら支給することとし、また、M社の製作所へ通門する際に必要な通門許可証についても、派遣労働者用のものに変更した。
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