#185 「パッション・コジマ事件」東京地裁
2007年6月20日に配信した「会社にケンカを売った社員たち」第185号で取り上げた労働判例を紹介します。
■ 【パッション(以下、P社)・コジマ(以下、K社)事件・東京地裁判決】(2006年11月24日)
▽ <主な争点>
試用期間付の雇用契約と普通解雇
1.事件の概要は?
本件は、P社と雇用契約を締結し、K社の店舗で販売員として就業していたXが、試用期間についての説明を雇用契約締結時に受けておらず、P社から不当に解雇されたとして、P社に対する地位確認、P社・K社両社に対する解雇予告手当、逸失利益相当の損害賠償および慰謝料の支払いの一部を請求したもの。
これに対して、P社はXが勝手に職場を放棄した行為等から解雇は有効であり、Xが試用期間中の者でXの責めに帰すべき事由による解雇ゆえ、解雇予告手当支給の必要がないこと、K社はそもそもXとは雇用関係になく、使用者責任を含む損害賠償責任および労働者派遣業法上の責任を何ら負っていないことをそれぞれ主張し、争っている。
2.前提事実および事件の経過は?
<P社、K社およびXについて>
★ P社は、メーカーからの委託業務として宣伝販売員をメーカーの指示する派遣先に供給することを請け負うなどしている業務請負業の会社である。
★ K社は、関東を地盤とする総合家電量販店を経営する会社である。
★ P社は平成18年3月頃、求人広告を掲載してマッサージチェアの販売員のアルバイトを募集し、Xはこれに応募した。XはP社と面接した後、同年4月14日には1ヵ月間の試用期間とすることを前提に同社と雇用契約を締結した。
★ その後、XはP社が販売協力員の調達を請け負ったS社の製品および販売に関する研修を受けた後、K社のN店に販売協力員として勤務することになった。
★ K社は、メーカーから販売協力員を受け入れるにあたっては、自社製品だけではなく他社製品あるいはメーカーが重点販売のため送り込んだ製品以外のK社の店舗で取り扱っている電気製品についても店の売り上げを上げることを目的とすることを条件にしていた。
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<本件解雇に至った経緯>
▼ XはK社のN店のマッサージチェア売り場にS社からの販売協力員ということで勤務をはじめた際、S社を通じてK社のN店長に宛てて、派遣販売員登録申請書の裏面にある遵守事項確認書にある遵守事項の内容を確認している。なお、Xが勤務する売り場には、他のメーカーから3名の販売協力員が入っていた。
▼ XがN店に勤務して間もなく、他の販売協力員からXの勤務ぶりについてクレームが出てきた。具体的には、「Xは他の販売協力員とのコミュニケーションがうまくとれず、売り場のチームワークを乱していること、Xが他社製品の販売や周辺売り場への協力に消極的で、他社の販売協力員やN店の販売従業員に負担がかかっていること」が主なクレームの内容であった。
▼ Xが他社の製品であるマッサージチェアを必要以上に値引きして顧客に販売したことから、K社はS社に苦情を申し入れ、S社はXの雇用元であるP社に苦情を申し入れていた。また、Xの一連の勤務ぶりが原因で、その後P社はS社との取引を失うに至った。
▼ このようなXの勤務ぶりから、同年4月30日、K社N店の店長はS社と協議の上、Xの販売協力員としての店舗への受け入れを中止することに合意し、S社はその旨およびXの勤務事情をP社に伝えた。
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