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#138 「インターネットサファリ事件」東京地裁

2006年5月31日に配信した「会社にケンカを売った社員たち」第138号で取り上げた労働判例を紹介します。


■ 参考条文

★ 労働基準法 第38条の2(労働時間の算定)
労働者が労働時間の全部又は一部について事業場外で業務に従事した場合において、労働時間を算定し難いときは、所定労働時間労働したものとみなす。ただし、当該業務を遂行するためには通常所定労働時間を超えて労働することが必要となる場合においては、当該業務に関しては、命令で定めるところにより、当該業務の遂行に通常必要とされる時間労働したものとみなす。
2.(略)
3.(略)

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■ 【インターネットサファリ(以下、I社)事件・東京地裁判決】(2005年12月9日)

▽ <主な争点>
事業場外労働のみなし労働時間制が適用されるか否か

1.事件の概要は?

本件は、I社を退職したXが在勤中の残業代および給与から不当に控除を受けた分の未払い賃金の支払いを請求したのに対して、I社はXについては事業場外労働によるみなし労働時間制が適用されること、控除分については適法でXの同意があったことなどを理由にいずれも支払い義務がないとして争ったもの。

2.前提事実および事件の経過は?

<I社およびXについて>

★ I社は、コンピュータソフトウェアの設計、開発ならびに労働者派遣事業に基づく特定労働者派遣事業および一般労働者派遣事業等を目的とする会社である。

★ Xは平成13年12月、I社の正社員として採用され、東京本社にて勤務し、その後名古屋支社勤務となったが、16年2月に退職した。

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<Xの仕事内容およびI社による指揮・監督等について>

★ Xの東京本社での主な仕事内容は(a)公共職業安定所からの求職者の面接、派遣スタッフの経歴書の作成、(b)派遣スタッフの登録、派遣先企業との面接の段取り、協力会社への引渡し、(c)新規の顧客の開拓等であり、このうち、事務所外で仕事をするのは、(b)のうちの協力会社への引渡し、(c)の2つであった。

▼ Xは14年1月から東京本社に勤務しながら、名古屋の担当となり、名古屋の協力会社等の客先へのスタッフ提案や電話・メール対応、名古屋の派遣先企業との面接のスケジュール管理をしており、内勤がメインの仕事であった。

▼ 14年7月、Xは名古屋支社に勤務することになったが、仕事内容は東京本社勤務当時と同様であった。

★ Xは東京本社および名古屋支社での勤務時においても、始業9時から終業21時まで1時間の休憩を除いて少なくとも1日11時間の勤務をしていた。

★ 東京本社および地方支社の営業担当社員の指揮、監督については、社長のAが直接行っており、派遣スタッフの派遣先との契約金額、諸条件も最終的な決定権限は同人が掌握していた。

▼ XはA社長の従業員への振る舞いや一方的な減給、従業員が次々に辞めてゆく状況を目の当たりにし、心身ともに疲れたので、15年11月、同年12月末で退職する意思を表明した。すると、A社長は給与面の改善を口頭で約束したものの、その後処遇面での改善が一向に見られなかったので、Xは16年2月末でI社を退職した。

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<共和会費の控除について>

★ Xは13年12月から16年2月まで、I社から支給される給与から毎月1300円の共和会費の控除を受けた。

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