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#275 「X社事件」東京地裁(再掲)

2010年12月22日に配信した「会社にケンカを売った社員たち」第275号で取り上げた労働判例を紹介します。

■ 【X社事件・東京地裁判決】(2010年4月20日)

▽ <主な争点>
在職中のセクハラ被害や業務外し等を理由とする損害賠償請求等

1.事件の概要は?

本件は、X社を退職したYが、上司であったZの度重なるセクハラにより精神的苦痛を被ったと主張して、X社およびZに対し、不法行為(X社については使用者責任)に基づき、損害賠償を求めるとともに、同社による業務外しや嫌がらせによる精神的苦痛を被ったと主張して、X社に対し、不法行為等に基づき、損害賠償を求めたもの。

2.前提事実および事件の経過は?

<X社、YおよびZについて>

★ X社は、各種光学測定機械器具等の製造販売等を目的とする会社であり、東京都中央区に東京オフィスを開設している。

★ Y(昭和55年生)は、台湾出身の女性であり、平成19年2月、X社との間で、期間の定めなく、就業場所を「東京オフィス」とし、業務内容を「外国営業部での中国、台湾等東アジア地域向け営業サポート」とする雇用契約を締結して、同年4月から勤務していた。

★ Zは、19年4月から20年6月まで、X社の執行役員外国営業部長であった。YとZは外国営業部において直属の上司と部下の関係にあり、台湾等への出張に同行することも多かった。また、仕事上の連絡等のために頻繁にメールのやりとりをしていた。

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<Zによるセクハラの言動とYが退職するまでの経緯等について>

▼ Zは19年6月19日の夜、出張先(台湾)のホテルの部屋で、Yを横抱きに持ち上げるというセクハラ行為をした。

▼ Yは同年9月18日、X社管理部課長のAに対し、上記のセクハラ行為を受けたという事実を報告して相談を求めたところ、X社は事実関係を調査の上、同月27日、Zに命じて、Yに対し、「6月にホテルの部屋で体に触れたこと、その後も配慮の足りない言動を繰り返したことを反省し、今後は同じことをしないと約束する」などという内容の謝罪文を提出させた。

▼ Yは20年4月、A課長に対し、Zに反省の色が見えず、相変わらず手を握られるなどのセクハラを受けたなどという事実を報告して2回目の相談を求めた。

▼ X社は同年5月、YをB副社長(当時)付に異動させた。その後、Yの指揮監督をしたのは、執行役員営業部長のCであった。

▼ X社は同年6月、外国営業部を廃止して営業部外国営業課を設置するとともに、Zを課長に降格して、東日本営業所(埼玉県川口市)に異動させた。

▼ Yは、X社が同年8月頃、Yに代えて、中国出身のDを台湾営業担当に充てたことに強い不満とストレスを感じた。

▼ Yは同年9月5日、不眠、抑うつ気分、意欲低下を訴えて、病院を受診し、「セクハラをきっかけに起こった社内のいじめを原因にしたうつ病」、「向後3ヵ月間の自宅療養を要する」という診断を受けた。

▼ Yは同月16日から休職していたところ、本件訴え提起(同年11月)後の21年2月、X社を退職し、台湾に帰国した。

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<X社におけるセクハラ防止規定等について>

★ X社の就業規則には、セクハラの防止について、次の規定がある。

15.セクハラの防止
-1.行為の禁止
(1)社員は職場においてセクハラを行ってはなりません。
-3.処分
社員は、禁止される行為に該当する事実が認められた場合は、「賞罰委員会規定」により処分されます。処分には、その重きにより降格等があります。

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