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#22 「丸一商店事件」大阪地裁

2004年1月21日に配信した「会社にケンカを売った社員たち」第22号で取り上げた労働判例を紹介します。


■ 用語の解説

中小企業退職金共済(中退共)制度」とは、昭和34年に中小企業退職金共済法に基づき設けられた中小企業のための国の退職金制度で、中小企業者の相互共済と国の援助で退職金制度を確立し、これによって中小企業の従業員の福祉の増進と中小企業の振興に寄与することを目的としている。事業主が勤労者退職金共済機構・中退共本部と退職金共済契約を結び、毎月の掛金を金融機関に納付し、従業員が退職したときは、その従業員に機構・中退共本部から退職金が直接支払われる。

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■ 【丸一商店(以下、M社)事件・大阪地裁判決】(1998年10月30日)

▽ <主な争点>
規定のない退職金支払義務、残業手当の請求など

1.事件の概要は?

本件は、XがM社に解雇されたとして同社に対し、解雇予告手当および退職金の支払いを求めたもの。これに対してM社は、Xは事務引継ぎをせずに勝手に退職した任意退職であり、また退職金規定もないから退職金の支払義務はないとして争った。

2.前提事実および事件の経過は?

<Xについて>

★ Xは、平成2年5月、M社に雇用され、以後事務員として勤務していた者である。

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<Xの退職の意思表示、M社の退職金制度等について>

▼ 9年9月、M社のE代表がXに対し、「新しい事務員も雇ったことだし、残業をやめてくれ。残業をつけるならその分ボーナスから差し引く」と告げたところ、Xはこれに難色を示した。

▼ 同月末日、E代表から「来月から残業代は支払えない。残業をつけないか、それがいやなら辞めてくれ」と告げられたXは同日即座に「それでは辞めさせてもらいます」と退職の意思表示をした。

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