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テキストカバレッジ:レガ鯖杯準決勝 なかみ(BUGスモッグ)VSてち(Lands)

(筆:サカイ)

コンボデッキ(Combo Deck)は、アーキタイプ、またはデッキタイプの1つ。コンボによって勝利することを目的としたデッキの総称。
                      ―MTG Wikiより引用

コンボデッキ。
MTGに限らず、TCGにおいては大なり小なり「コンボ」の概念は存在するが「コンボデッキ」とまで言えば基本的には「コンボによる勝利を目指す」デッキのことを指す。

しかし「勝利を目指す」といったところでそのベクトルの大小はデッキにより様々だ。ましてカードプールの広大なレガシーにおいてはなおのこと。
マナ加速から瞬殺を狙う、ハンデスによる前方確認からの惨殺、そもそも成立すれば妨害が困難、除去や打ち消しで減速をかけつつ隙あらば仕掛ける・・・等。

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筆者の考えるレガシー「コンボ」の代表例。
すぐ殺す。すぐじゃなくても殺す。

いずれにせよ、多様な殺意が60枚の形をして襲ってくるという点では共通している。それがコンボデッキというものだ。

さて、今更自明の理を前置きにしたのは他でもない。
今回ご紹介するレガ鯖杯準決勝は、前回に引き続き「必殺のコンボ」を擁するデッキ同士のマッチアップが故である。

プレイヤーとデッキの紹介に入ろう。

まずはスイスラウンド1位通過、プレイヤーネームなかみ。
使用デッキは「BUGスモッグ」。
最新エキスパンション「ストリクスヘイヴン」において収録された《ウィザーブルームの初学者》及び《セッジムーアの魔女》と《煙霧の連鎖》のコンボを搭載した、コントロールベースの所謂「隙あらば一撃必殺」を狙うコンボデッキだ。

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「魔技」の誘発条件を見てすぐに《煙霧の連鎖》が思いつく人すげー

コンボをフィニッシュに据えてこそいるが、あくまで体裁としてはコントロールデッキであり《自然の怒りのタイタン、ウーロ》や《精神を刻むもの、ジェイス》等のフィニッシャーもきちんと用意されている。

除去、ハンデスなどで妨害をはさみつつ、単体ではあまり強力とはいえないコンボパーツの脇を令和のパワーカードで固め、それを《森の知恵》から強引に噛み合わせようという意図がデッキリストからは垣間見える。

前回大会優勝者にして、レガ鯖杯ではSE常連のなかみが操る新時代的コントロール&コンボの50:50(フィフティ・フィフティ)。
スイスを1位通過から準決勝まで順調にここまでコマを進めてきたあたり、期待を伺わせるものがある。


これを迎え撃つのは、プレイヤーネームてち。
聞けばプレイ歴20年を超える大ベテランとのこと。
使用するデッキは「Lands」、所謂「土地単」だ。

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「土地単」とはいっても普通にスペルは入っている。

その名の通り、土地を主軸に組まれており古今東西の強力な土地カードとそれをサポートするカードが満載だ。
《暗黒の深部》+《演劇の舞台》のマリッドレイジコンボを基本勝利手段とし、それを素早く展開するための《踏査》、デッキを掘り進めつつパーツを再利用する《壌土からの生命》、《燃え柳の木立》+《罰する火》のシナジーにより小型生物を殲滅しつつ、《リシャーダの港》と《不毛の大地》で相手のマナ基盤へのプレッシャーをかける。


こうして並べ立てるだけでも「土地【単】」といいきるにはあまりに多彩なギミックが採用されている。アーキタイプとして成立した時期こそ古いが、現在でも《死者の原野》の登場等でいまなお強化され続けており、デッキを操るてちと同じくレガシーの中で長い年月変化を遂げつつも生き残ってきた。

先に述べたとおりマリッドレイジコンボを基本勝利手段に据えているとはいえ、独自の能力を持つ土地による妨害能力を活かし盤面へ干渉しつつコンボ成立を目指すという点では、奇しくもなかみのBUGスモッグ同様「隙あらば」系のコンボ/コントロールデッキだともいえよう。


新登場のコンボ VS 歴戦のコンボ、かつお互いコントロールライクな妨害有りきの鍔迫り合い。
準決勝の戦いの行方に注目しよう。


・G1

お互いに7枚キープでゲームスタート。

先手は順位が上のなかみ。
《汚染された三角州》から《冠雪の島》、そして《思案》。レガシーのフェアデッキらしい立ち上がりだが、デッキトップ3枚を確認した後渋い声色で「シャッフルで」と宣う。

これに対しててち、「よしッ」と握りこぶしなリアクションを返す。
・・・土地単というアーキタイプ故、キャントリップスペルを使うデッキへの恨みめいたものでもあるのだろうか。

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実際土地単は概してフェアデッキには強いが「よしッ」の真意は果たして

さておき、てちがターンを受けると《リシャーダの港》→《モックス・ダイアモンド》→《溶鉄の渦》・・・なかみとは対照的に手札を惜しげもなく展開していく。

負けじとなかみも返しで《森の知恵》を設置。
互いに長期的に見て影響力のある置物を見せあい、ロングゲームの構えを提示した形だ。

ただ、ターンを受けたてちはコレに対して「まだデッキがわからないな・・・」とデッキの断定までにはいかない様子。土地の色と《森の知恵》でフェア寄りな判断はできるがされどその詳細は、といったところか。
小考した後2枚目の《リシャーダの港》を置くと、《ヴァラクートの探検》を設置!

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アド取りの鎌足

癖のあるアドバンテージエンチャントだが、然るべきデッキで使えばその脅威値は《森の知恵》に勝るとも劣らない。増して《溶鉄の渦》との併せ技で相手のライフを詰める都合、《森の知恵》のライフペイの選択肢を狭める格好にもなっている。

盤面のプレッシャーに押されるなかみ、対処を急ぎたいゆえか《森の知恵》から4点ライフペイで追加ドローを選択、《自然の怒りのタイタン、ウーロ》で土地を追加しつつライフをキャッシュバックしていく。

てちは「ウーロ森知恵・・・」と凶悪なアドバンテージコンビネーションにやや唸るが、ターンを受けてドローすると途端に声色が明るくなる。

てち「いいカード引いたなあ・・・でもまあこのターンはいいか・・・

なかみ「え、なんですか。怖」

まあ実際、なかみからすれば不気味以外の何物でもないだろう。
その不安を知ってか知らずか、てちは《不毛の大地》を置いて特殊地形を牽制しつつ《ヴァラクートの探検》を誘発させトップをめくる。
追放されたのは《暗黒の深部》。このターンプレイはできない・・・が、この衝動的ドローはご丁寧に追放されたカードを墓地に送って本体火力に変換してくれるありがたみの極み。当然コンボパーツが墓地に落ちて呻くハメになるのはなかみの方だ。

おまけとばかりに《リシャーダの港》に土地を2枚も寝かされつつターンに入るハメになる・・・が、ただでは返さんとばかりになかみはターゲットとなった土地からマナを捻出すると《突然の衰微》を放ち、《ヴァラクートの探検》を破壊、ひとまずは相手のアドバンテージエンジンを止める。メインフェイズに入り、残ったマナから再びの《思案》でデッキを掘り下げる・・・が。

なかみ「・・・シャッフルで」
てち「っしゃあ!!!・・・ああすいません心の声が」
なかみ「いや今日ほとんどシャッフルなんですよね・・・」

《思案》のシャッフル1つでここまで互いに感情が出てくるのも珍しい。まあメインゲームでなかみのデッキの色からすれば、土地単への有効牌の数は限られているだろうから、シャッフルが増えるのは仕方がないといえば仕方がない。

ひとまずターンが渡って、なかみがの立っている土地を確認。
《不毛の大地》を切ってその唯一のアンタップ状態である《Tropical Island》を破壊にかかる。無論なかみはスタックでマナを捻出するが、きっちりフェイズを跨いでマナを消し、改めてフルタップなことを確認したてちは土地単のキーカード(おそらくは先のターン引いた「いいカード」)《壌土からの生命》をキャスト!

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もう発掘のついてるアンリコみたいなもんだよ(誇張)

《暗黒の深部》ら2枚の土地を回収してセットランド。コンボパーツの片割れが揃い、ここからは発掘でデッキを掘り進めていく構えだろう。

《ヴァラクートの探検》を対処したもののすぐに次の脅威が現れ対処を迫られるなかみ。再びリシャポに土地を寝かされつつターンを受ける。森知恵の追加ドローはなしだが、《悪意の大梟》を送り出してマリッドレイジへのブロッカーを立てつつカードを引きランドセット。
続けざまに墓地のウーロを対象に《発掘》をプレイ。少々珍しいカードだ。

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なかみ「ただの3点ゲイン1ドローですよ~」
てち「なんとなく納得いかない・・・」

墓地からウーロが出てきても、脱出ではないため即座に死亡する。
森知恵のライフペイを補填しつつ土地を増やし、マナ拘束への耐性をつける狙いだろうか。追加のセットランドは《Tropical Island》。

てちにターンが渡ると、もちろんドローは発掘に置換。
落ちるのは《イス卿の迷路》にコンボパーツのピース《演劇の舞台》だ。
てちも「いい落ちかたじゃあないですか」とホクホク気味だ。
早速ロームを唱え墓地から回収し《演劇の舞台》をセット、そのままターンエンド。

先にリーチをかけられたなかみ、ターンを受けてこちらもコンボを・・・とばかりに《セッジムーアの魔女》を送り出すものの、既に設置済みの《溶鉄の渦》の前にブロッカーである《悪意の大梟》共々焼き払われ盤面ががら空きに。

そうして万全のお膳立ての上で登場する20/20の化け物に対して、なかみがなすすべは存在しなかった。

てち WIN! (1-0)


両者順当に手札を展開していったゲーム序盤。
しかしそこから《リシャーダの港》や《不毛の大地》によるマナ拘束、そしてマスト対処置物を次々繰り出したてちに対して、アクションが苦しい上に限られた有効牌を求めてデッキを掘り進めるしかなかったなかみが後手に回ってしまった形の試合展開となった。

サイドボード中、なかみも「リシャポに縛られて黒ダブルが出せなくてスモッグコンボが・・・」とマナ拘束の重さに歯ぎしり。
「ですよね、それを警戒していたので・・・」とてちもそのあたりは折込済みだった様子。

デッキ相性的には土地への対策が難しい色をしているなかみが不利だが、対策カードの入る2ゲーム目以降の勝負の行方は如何に。


・G2

先手は再びなかみ。
1マリガンながら「こういう手札がいいのよ」と満足げなキープ模様。
他方てちはというと「裏目あるんだけどなぁ・・・」とぼやきつつの7枚キープ。
なんとも対照的なキープの表情がどういったゲーム展開をもたらすのか。

まずはなかみ、EXP版の《汚染された三角州》をセットし静かにエンド。

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みんな大好きゼンディカーエクスペディション


てちは「いいデルタですね・・・」褒めそやしつつターンを受けると、《リシャーダの港》を切って《モックス・ダイアモンド》から《踏査》。
そして2枚の《不毛の大地》をセット、と打って変わってド派手な初動を見せつける。

が、そこに突き刺さるなかみの《活性の力》
《踏査》と《モックス・ダイアモンド》を破壊され、てちが絶叫する。

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2:2交換どころではない

無色マナの土地しかなく、色マナをモックスに頼ったキープ故の「裏目」をきれいに踏み抜いてしまった形だ。

1T目にして一気に有利交換に成功したなかみ、勢いに乗らんとばかりに急ぎ足でターンを受けると《冠雪の森》を追加しつつ《思案》。
・・・がこれもシャッフル。本当にシャッフルが多い。

てちも「よぉし!小さな満足!」とガッツポーズ。
やはりキャントリップスペルに恨みでもあるのだろうか・・・?

とはいえ、実際のところてちの方は小さな満足を得ている場合ではなかった。色マナ源を失い、なかみも基本地形しか置いてこない故2枚の《不毛の大地》も機能せず沈黙。何もすることができない。

それを尻目に《森の知恵》を設置しリソースの充填にかかるなかみ。
てちもなんとか返しで《モックス・ダイアモンド》を再び引き込み色マナを回復、《ヴァラクートの探検》から追いすがろうとする・・・も《否定の力》が飛んできて打ち消される。

《否定の力》によりなかみのハンドも細くはなったが、《森の知恵》がある限りリソースは潤沢だ。追加のドローから《ウィザーブルームの初学者》、《自然の怒りのタイタン、ウーロ》を次々にプレイし手札・盤面・マナベースをゆっくりと整えていく。

てちも《壌土からの生命》を引き込み、フェッチランドから色マナ源を確保すると再びの《踏査》、そして墓地から拾った《死者の原野》と《リシャーダの港》で懸命になかみのアクションへ負荷をかけていく。

しかしG1でも見せたウーロ+森知恵がもたらすハンドアドバンテージはあまりにも暴力的。追加4点ペイドローからウーロを脱出させると、更に《悪意の大梟》も追加。2種のフィニッシャーに加え、マリッドレイジへのブロッカー、加えてライフも20以上でワンパン圏外と万全の体勢。
ましてや、《ウィザーブルームの初学者》が鎮座している以上《煙霧の連鎖》1枚でジ・エンド。
G1とは反対に、なかみが横暴なまでのアドバンテージを背景にしててちへリーチを突きつけた。

てちも負けじと《壌土からの生命》の発掘でコンボパーツを掘り当てると、《踏査》の恩恵を受けて一気に《暗黒の深部》+《演劇の舞台》コンボを戦場に揃えきる。
しかし、先の通りなかみのマリッドレイジを迎え撃つ体勢は完璧。

《自然の怒りのタイタン、ウーロ》のアタックをなんとか《イス卿の迷路》で受け流すがアタック誘発故にドローとゲインは止められない。
てちもワンパンはおろかスリーパンチが必要な状況がわかってはいつつも、ほかに手立てなしとエンド時にマリッドレイジを降臨させるが、やはりアタックは《悪意の大梟》に阻まれる予定調和。

そして返しのなかみが繰り出したのは、かつての青いフェアデッキの象徴ともいえるあのカード

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なかみ「バウンスでお願いします」

レガシーの氷河期を経て、令和の時代にドミナリア氷河期の怪物を平成のPWが討ち取る。


神ジェイス、もとい《精神を刻むもの、ジェイス》はやはり強かった。


なかみ WIN!(1-1)


初動の《活性の力》→《森の知恵》で一気にマウントをとり、アドバンテージでのタコ殴りでマウントポジションを取り続けたなかみ優勢で終始したゲーム展開。

てちが「《活性の力》の裏目をきれいに踏んだのもそうだけど、返しの《森の知恵》が強すぎる・・・」と呻く。
なかみも大いにうなずきつつ「そのために3枚入れてきましたからね、《森の知恵》・・・」と勝利のキーカードを興奮気味に語る。

てちの憂いていた「裏目」をピンポイントかつ迅速に突きつつも失ったリソースを即座に補充する《森の知恵》。その両者が揃えてきたなかみのオープニングハンド、そしてそれをマリガンしてまで手に入れている点を評価すべき試合だったというところか。

しかし最後のゲーム、ついに先手番がてちに渡る。
ここまでのゲーム同様、先にマウントポジションをとったほうがそれを譲ることなくマッチをとるのか。
はたまたそれを取り返す逆転劇があるのか。

注目のサードゲーム、準決勝決着の時だ。


・G3

てちは7枚キープ。
なかみはやはり1マリガン。

まずは両者土地を置くだけの立ち上がりから、先に仕掛けたのはやはり先手番のてち。
《演劇の舞台》から2マナ、《森の知恵》を設置!
ここまでのゲーム散々好き放題されてきたカードによる意趣返しだ。

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この記事だけで何回《森の知恵》って言ってるかな

これにはなかみ、思わず自らのことは完全に棚に上げて「犯罪ですよ!!!」と絶叫。
「いやいやそちらも・・・」と苦笑いするてちのリアクションすら置き去りに、即座に返しで《突然の衰微》を放ちこれを退場させる。
「いやぁ、危ないところでした」と冷や汗拭うなかみ。

しかし、てちの真なる犯罪はむしろこの直後だった。
土地を置く前に《モックス・ダイアモンド》から3マナを確保して姿を現したのは、近代マジックにおける平成の優良クリーチャーが一角、《不屈の追跡者》

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土地はドローに。ドローは土地に。その度にでかくなる。

着地後、即座に《燃え柳の木立ち》をセットして手がかりを得る。
なかみはこれを見て一瞬硬直した後、ぼそりと「あれ、詰んだ?」とつぶやく。どうやら先の《突然の衰微》で除去は打ち止めのようだ。

ターンを重ねるごとに土地を置いては大きくなる《不屈の追跡者》。
手がかりトークンから得たドローによって手に入った土地は、再び手がかりトークンを生む。
おまけとばかりに《ヴァラクートの探検》でさらなるダメージとアドバンテージを戦場に送り出すてち。

悲鳴を上げるなかみ、《活性の力》で対抗するがそれでも《不屈の追跡者》がとまらない。ついにはウーロを超えるサイズにまで成長しようかという勢いのトラッカーを前に、なかみは《ウィザーブルームの初学者》で即死コンボをちらつかせることで延命を図る。
加えて《不毛の大地》を対象に《外科的摘出》をキャストし、潤沢なてちのハンド内容を確認。

無情なことに、その手に握られていたのは《罰する火》。

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スモッグコンボはクリーチャーコンボ。故に、除去で止まる。

なかみは「いや強ぉ・・・これ勝つ方法ある・・・?」と頭を抱える。
しばらく悩み続けてはいたものの、自問の答えは無論否である。

最新鋭のコントロール/コンボ対決に幕をおろしたのは、マリッドレイジでもスモッグコンボでもなく、やはり平成のフィニッシャーだった。

てち WIN!(2-1)

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