ヘレディタリーを見たよって話とミッドサマーの悲劇
時は2021年4月下旬。
もう何度目かも忘れてしまった緊急事態宣言の発令により僕の精神は鬱屈した状態に。
そんな自分のメンタルにトドメを刺そうと思い、アリ・アスター監督の長編ホラー映画「ヘレディタリー 継承」を鑑賞したのだった…
アリ・アスターといえば去年くらいに公開した「ミッドサマー」が有名だ。
超大作のホラー映画として大々的に宣伝されたものの、そのオカルティックな内容で実際見た人の感想は賛否両論分かれるものだった。
大衆向けのエンタメ大好きな僕はあんまり好きな作品じゃなかったけれど、ひっそりと小さな劇場で公開してれば伝説のカルト映画になれるポテンシャルを秘めていたとは思う。
そもそもあの手の作品は堂々と表に出てきちゃダメなんだよ。
マイナーだけど一部の熱狂的なファンがいるヤベー映画ってポジションでいるべきなんだよ。
それこそ「ムカデ人間」とかあの辺の知る人ぞ知るグロ映画の類だろうよ。
「お前何映画好き?」「ああ、俺?マイナーだけどミッドサマーって映画すごい好きなんだよね」「なにそれ初めて聞いたわ、今度見てみよう」みたいな会話が発生するはずだったんだよ。
それが今や「自称映画通が好きな映画第一位」の称号をほしいままにしてしまった。全ては大作として宣伝した奴らが悪い。
しかし本作「ヘレディタリー」はミッドサマーほど話題にならなかった(いい意味で)。だが、ミッドサマーが大々的に取り上げられるや否や同監督の前作として再び注目され「ミッドサマーを批判する自称映画通が好きな映画第一位」に名を連ねることになった悲しき映画である。
「ミッドサマーねぇ、あれはちょっと大衆向けに作られてて…正直アリ監督の作品はヘレディタリーの方が上かなあ…」とかちょっと拗らせた厄介映画オタクの格好の餌となってしまったのである。
そんな悲劇の作品「ヘレディタリー 継承」は2018年公開のホラー映画。
雑にまとめるとヤバい儀式やったせいで身の回りの怪奇現象がヤバいって感じの話。
道路にポツンと転がる女の子の生首に小虫が大量に群がっている、というショッキングなシーンは界隈ではそこその有名じゃないだろうか。
ミッドサマーもそうだったんだけど、この映画とにかく見てて嫌な気持ちにしかならない。
開始数分で子供は最悪な死に方するし母親は精神疾患持ちのヒステリーだしなんかわけわからん交霊術やったせいで酷い目合うし。
得体の知れない気持ち悪さのようなものが始まりから終わりまでずっとつきまとってくるような、そんな作品。
オチも、わかりやすく今までの描写を拾ってくれるような優しいものではなく、さらによくわからんものを見せつけてくる。
よくわからないので、頭のいい人の解説を見て「そうなんだ」と無理矢理納得する。そんな作品。
21世紀最高のホラー映画と絶賛されているから、とりあえず面白かったという感想を抱こう、と思わせてくる。そんな作品。
決してつまらないわけではないが、僕のようにエンタメとして映画が好きってタイプはたぶん合わない。
ちなみにアリ・アスター監督はまだ34歳らしい。経験もまだ浅い方だろうに、人間の嫌な部分の描写の仕方がお見事。いつか最高の鬱映画を撮ってくれるはずだ。
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