Joy for Struggle が良かった話

2nd D.R.B 第一試合オオサカVSイケブクロのバトル曲「Joy for Struggle」めちゃくちゃ良い(語彙力)

3番手対決、2番手対決、1番手対決、トリオ対決、元コンビvs弟ペア、父親vs長男という豪華すぎる対戦カードの詰め合わせ。この2チームでやれる事全部やり切ってる。リリック担当の方に拍手喝采。

まずはおいちゃんと三郎の3番手対決。先行オオサカのリリックがこちら。

よ!3兄弟 調子はどない?
現実はタフだ もし(if)などない
叩かれて、蹴られて、猛り立つ
それがなきゃな、甘えちゃダメになる
頭ん中生半可だなまだ
見せかけだけ実なき徒花
その目覚まさなきゃな 過去にないもの
築き上げてこい 青二才ども

開口一番息子たちへのあいさつ。語尾に「どない?」と徐々に大阪弁に染まりつつあるおいちゃん。

「調子はどない?」に「もしなどない」で韻を踏んでおり、「お前らが絶好調だとしても勝つという仮定はあり得ない」という挑発に聴こえてくるのは僕だけか?

そしてそこに続く「叩かれて、蹴られて、猛り立つ」の語感の良さは異常。アニメOPの「力は口から湧く力」と同じレベルある。でも「頭ん中生半可だなまだ」も勝るとも劣らない語感の良さ。やっぱ詐欺師って口が回るなぁ。

最後は「過去に無いもの 築き上げてこい 青二才ども」でフィニッシュ。全体的に終始上の立場から息子たちをおちょくりつつも、どこか父性を感じられずにはいられない、そんなリリック。

このパパのリリックにアンサーを返すのは末っ子の三郎。こんなの兄ちゃんたちが出るまでもないと勝負を受けるのいいね。

しゃしゃりでんな チンケな詐欺師
口車にゃ乗らねー 死んでなさい
ホラ貝でも吹いてろ 焼け野原
きな臭いぜ 背反 避けろ罠
必要としてない それだけの話
剥がしてみな その化けの皮
俺たちの絆 歴史 土足厳禁
クズはシカトして 努力前進

なんというか、三郎にしてはかなり攻撃的なリリック。僕の中では飴村くんに近いめっちゃ人をバカにしてくるイメージがあったのでちょっと意外。「今さら父親ヅラすんな」という強い意思を兄弟の中で一番感じさせる。まあ中学生って反抗期真っ只中だからね。

第一声から「しゃしゃりでんな」だもんなあ。完全に反抗期の息子のソレよ。「チンケな詐欺師」に「死んでなさい」で踏んでるし。

「きな臭いぜ」「その化けの皮」からも、急に自分たちの目の前に現れたおいちゃんを全然信用してないことが窺える。

最後は「兄弟の絆に踏み込むな、俺たちは俺たちでやっていく」という拒絶の意思をキッパリと示してターンエンド。

これに続いてマイクを手にしたのはオオサカの二番手盧笙先生。

苛立ってますね ブドウ糖不足です
まず補給 ちゃんと朝飯食う
口の利き方から何から勉強
しなおしてきなさいアカデミズム
二郎は二郎で 足らん知能
慎みなさい くだらん私語
足し算引き算からはじめるか
小学生の方がまだマシですか

さすが先生、教師らしく教え諭すようなラップ。

まず朝ごはんはしっかり食べましょうという教訓。あと勉強しなおしてこいって煽りは神童の三郎には結構効きそう。

そして二郎煽り。「足らん知能」と「くだらん私語」をかけることで、「語彙力の無いお前のリリックはせいぜい私語にすぎない」という超絶皮肉。

「小学生の方がまだマシですか」ってのも「中学生の弟以下」だとdisってるかのよう。

さらにこれに対して返すのは高校生の次男坊二郎。先生と生徒の夢の対決。

うっさい先コウ なんか堅ぇーな?
てか名前 なんだったっけーな?
緊張気味かい? なんだっていーが
テメェなど 鼻毛以下
それで俺に授業? 笑止千万
やり直してこい 幼稚園から
これはチワワ対シベリアトラ
俺たちならば 一撃だコラ

生意気な高校生って感じが溢れ出てるね。さっそくあがり症を弄っていくスタイルも良い。でも名前は本当に読めなかった説濃厚。

「鼻毛以下」っていう雑過ぎるdisすき。「小学生の方がまだマシ」「勉強し直してこい」に対して「やり直してこい 幼稚園から」ってまとめて返すのもつよい。

そして何といっても「これはチワワ対シベリアトラ」と「俺たちならば一撃だコラ」の一文まるまる韻を踏むという超絶技巧。ジロちゃん、このテクは兄貴超えてるよ…

一郎への単なる憧れから卒業した、一皮剥けた男の成長を感じさせるリリック。

そしてここで一旦サビを挟んだところで、ついに一番手同士のぶつかり合い。先行はオオサカのお笑い芸人白膠木簓。

満持して登場 俺が主役
お前ら右から ボケナスカス
あつくるしーだけでおもろないわ
たぶん才能ももっともと無いやん?
一郎 血の繋がりだけが
絆やないこの場で確かめな
テンポも 間も ノリも足んない
やり直し五万回 そのトリオ漫才

「俺が主役」を「ボケナスカス」で踏み、格の違いをアピール。実際軽快な曲調はどちらかといえばオオサカのイメージが強く、彼がこの曲の主役といっても過言ではないかもしれない。

渾身のリリックを「暑苦しいだけ」とバッサリ切り捨てる強者の余裕。「おもろない」に「(才能が)元々無い」で踏む事で力及ばないことを強調。

「血の繋がりだけが 絆やない」でブクロの一番の強みであるチームワークをも否定。元とはいえ漫才の相方との絆の方が上だと。

「トリオ漫才」ってのもなかなかパンチ効いた皮肉だよなあ…。「お前らのラップなんて所詮は三人でワイワイやってる漫才」ってことだもんなあ。

この攻めに対する我らがBig Broのアンサーがこちら。

先に言っとく器がちげー
俺は言霊で討つ語り手
ヘラヘラしやがって チンドン屋が天下
とれるわけがねー 聞け鎮魂歌だ
浮ついた言葉 刺さらねえ
俺は才能より努力 戦える
それを証明しにきたぜ 今この場で
お前たちごときじゃ届かねえ

ぬるさらの煽りを「器がちげー」でまず一蹴。さっすが一兄だ。

「チンドン屋」ってのも「お前のラップは単なる騒音」とdisってるようなもんだしなあ。そこに「鎮魂歌」で韻を踏むのも「大人しく鎮まれ」という意思が読み取れてオサレ。

「刺さらねえ」で相手の名前に掛けるのも一郎の実力を感じさせる巧さ。anthemのぬるさらパートで既出ではあるけど。

「才能ない」に「才能より努力」でアンサー返すのもいい。敗北を経験しているからこそだよね。Re:start!!!を聞くとよりグッとくる。

「お前たちごときじゃ届かねえ」でお相手三人にマイクをパス。

全米が泣いた 日本中笑った
絶妙なトリオや ほんわかぱっぱ
前例はナシや まいどやでWUS UP
娯楽の王様 本場だやっぱ
ぼちぼちでんがな 円稼いで
心に火灯してんかBABY
オオサカの空は1000%晴天
俺らが最強のエンタテイメント

ここの三人同士のパートはディスり合いってよりは自分らのアピールタイムって印象。

楽しませてこそ、笑わせてこそなんぼというオオサカ人スピリッツをひしひしと感じさせる。

「娯楽の王様」「最強のエンタテイメント」からはお笑いの本場としての矜持もあるのだろう。

厳つい見た目に反してノリノリでこのリリックを歌い上げる山田のおいちゃんは、生まれはどこか知らないが確かに関西の魂を持っていると言えよう。

こうオオサカにアピールされて、もちろんバスブロも黙っていられないわけで。

心 技 体 息ぴったり
当然すぎて 意識しない
3 6 0 みぎひだり
楽しんでなんぼ きみ次第
邪魔するバカはどいて頂戴
この血は水よりも濃いぜ兄弟
ぶち上げてくぜもうちょいで場外
上がってこう ノリノリでSHOWTIME

やっぱり兄弟だけあって、絆の強さや団結力の強さを全面にアピール。実際チームワークで言えば全ディビでもダントツやろなあ。

あとは「俺らが笑わせたる!」みたいなスタンスのオオサカに対して「俺たちと一緒に楽しもうぜ!」みたいなイケブクロのスタイルの対比も印象的。若さ溢れるフレッシュな感じがする。

「ノリノリでSHOWTIME」でサビに突入するのなんてもうズルじゃん。こんなんボルテージMAXでサビいくしかないじゃん。最年長が19のチームでこのマイクパフォーマンスよ。盛り上げ方も心得ていらっしゃる。萬屋の依頼でたまにDJ任されたりもしてるんだろうなあ。

とまあ、テンションブチ上げのサビを終えるとまさかの漫才パート。

「先生 ウチの二郎学校でどないです〜?」
「宿題やってこおへんのですよ〜 
クラスメイトからも顰蹙大ですわ〜」
「それやったら内申書にも響くんとちゃいます?」
「落第させんのが 楽だい 内心しょう思うてます〜」
「じゃあ三郎の方はどないですか?」
「あんなんお兄ちゃんの犬ですわ
今ごろ緊張で ドッグ ドッグいうてるんちゃうんかな〜」
「犬だけにな、って…もうええわ!」

すでに解散してしまった幻のコンビの漫才。
先生役と保護者役に分かれて弟ペアをネタにしていく。先生役はぬるさら。いや本職差し置いてお前がそっちやるんかい。

disって相手をオトすだけじゃなく笑いのネタへと昇華するオオサカのスキルの高さよ。

ダジャレとライムをごっちゃにするのはHIPHOP界隈的には複雑な思いあるかもだけど、ディビジョンごとの特色を出す上では無視できない要素だと思うし、僕的には期待通り漫才パート挟んでくれたのは素直に嬉しい。

これを受けてネタにされた弟ペアはすかさず反撃。

笑えねんだよ 張り倒すぞ
実力もセンスも無い カスども
低俗な芸人と ダメな先コウ
お遊戯会レベルじゃ勝てませんよ
湯の中で屁が浮いたような声だ
ぬるくてなんか退屈なオペラ
ぶっちゃけ敵じゃねんだ けしかけんな
的な喧嘩じゃ 無敵だdanger

「笑えねんだよ」とか「退屈なオペラ」ってdisはたぶん芸人特効ついてる。

「実力もセンスも無い」も正統派系のラップを武器にしてるブクロからしたら「所詮はお前らはリズミカルにダジャレ言ってるだけでラップじゃ俺らに遠く及ばない」って感じだろう。「敵じゃねんだ」とも言ってるし。

「お遊戯会レベル」ってとこは先コウに倣って学校行事を引き合いに出してるのだろう。

そしてついに大目玉の対戦カード父親VS長男の親子喧嘩ラップバトル。まずは父親から。

まぁいいさ一郎 てめーはこの先
どう生き抜くのか今一度
考えろ 俺には俺の真実と
答え それを信じるどこまでも
後悔はない 誰だろうと
立ち塞がるやつ砕くだけだ今日も
圧倒的な差だこれで実証
ガキどもまとめて一掃

「どう生き抜くのか今一度考えろ」からは「決別を選んだけどお前本当にそれでええんか?」となんだかんだ息子たちを気にかけている親父らしさ。

「俺には俺の真実」や「立ち塞がるやつ砕くだけだ」あたりから、中王区周りの深い事情を知ったうえで、何か強い意志を持って子供と離れたのだろうと推察される。一体おいちゃんは何を知ってるんや‥‥

そして「ガキどもまとめて一掃」で反抗的な息子にわからせにいく。ここの力強いフロウはまるで父親のゲンコツ。

これを受けて最後は一郎のアンサー。子供の自立宣言。

必勝 俺には 俺の正義
貫くだけ それを提示
親父のように自分勝手には生きらんねー
兄弟のため日々完徹
ぶっ潰す 遠慮なしで
戦闘態勢 Buster Bros!!!免許皆伝
限度はないぜ団結のPower
これが俺からのベストアンサー

「俺の正義」と「それを提示」でライミング。自分なりに見つけ出した父親とは異なる正義を掲げ、今一度離別の意思を露わに。

「生きらんねー」と「日々完徹」で踏んで家族を顧みずに出て行った父親との違いをさらに強調。

「遠慮なしで」「戦闘態勢」「免許皆伝」「限度(は)ないぜ」の四連続怒涛のライム。前二つは親子関係を抜きに一人の男として迎え撃つ決意、後二つは弟たちはもはや対等な実力の仲間でありチームの力は計り知れないという自信。

それを踏まえた「(団)結のPower」と「ベストア(ン)サー」のライム。兄弟三人で支え合って互いの力を高め合うことこそが「俺からのベストアンサー」なのだ。

これで掛け合いのパートは全て終了。全体的には先行のオオサカが余裕ある態度で攻め、それに対して後攻のイケブクロが全力で応戦する流れ。どの掛け合いも素晴らしいが、やっぱり零vs一郎の親子対決がベストバウト。

「これが俺からのベストアンサー」ってリリックは流石にカッコ良すぎるでしょ。しかもそれでいてしっかり韻を踏んでいるしこれはもうイケブクロの勝ちでは?

とにかく僕はブクロの勝利が見たい。以上。

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