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【トラック編①|3000m/5000m】2024年上半期振り返りまとめ|創価大学駅伝部

本稿は、先に投稿した【ロード|ハーフマラソン編】の続き、もしくは対をなすものです。もし前記事を未読の場合は、こちらも併せてご覧いただけると幸いです(但し、かなり長文ですので、目次で気になるところだけでも是非)。

【トラック編】では2024年度の上半期(正確には2024/3/30のTOKOROZAWA GAMES@早稲田大学所沢キャンパスから2024/7/30のOn:Track:Nights: MDC@世田谷大蔵陸上競技場まで)に行われたトラック競技(800m、1500m、3000m、3000mSC、5000m、10000m)に出場した創価大学駅伝部の選手の記録について、主にPB(自己記録:Personal Best)更新や選手権での入賞などに着目して振り返りまとめて自分の備忘録として遺すものです。

 書き進めるといつも以上に分量が増えてしまったため、note上では以下の通り3分割することにしました。

  1. トラック編①概観および3000m/5000mの結果とまとめ

  2. トラック編②10000mの結果とまとめ

  3. トラック編③800m/1500m・3000mSCの結果および全体のまとめ

 本記事【トラック編①】だけでも1万字を超える長文ですので、以下の目次で気になる項目だけでもご覧いただけば幸いです。


0. まず初めに概観|10000m/5000m PBプロットのシーズン前・後での変化まとめ

図1:2024年度トラックシーズン開始前(上)と上半期終了時(下)の10000m PB vs. 5000m PBプロットの比較|10000mの公式記録がない場合は未記載|データラベルの学年(丸数字)・氏名を、PB更新(両種目もしくはいずれかの種の目)や初記録で色分けし、トラック/ロード未出走は黒枠で囲った

 まず図110000mのPBを5000mのPBに対してプロットしたグラフについて、シーズン前(上:新入生は10000mの記録ないので含まれない)と上半期終了時(下:初10000mを踏んだ一年生も含まれる)を比較したものです。図中のデータラベルは学年と氏名を表し、下図ではPB更新や初記録もしく出走なしで色分け・枠表示されています。多くの選手がPBを更新し(黄色もしくは水色)、また新入生の初記録(緑色)がグラフの右上の領域に現れているのが分かります。全般的に言えば、非常に順調で着実な進歩が観られたトラックシーズンであったと言えると思います。

 今季のトラックシーズンの特徴は、以下に引用した榎木監督の談話(吉田響選手についての記事(Web Sportiva)からの引用)が端的に示している思います。(注:太字は強調のため筆者が変更)

 チームとしての手応えも榎木監督は感じているという。

昨年はスピード強化で5000mを中心にトラックシーズンを作ってきたんですけど、今年はそのベースを上げ、5000mと10000mの両方をしっかりと戦える状態を作ろうということで、春からチャレンジしてきました。多くの選手が試合慣れしてきて、28分30秒切りに近づいてきているので、当初のイメージよりよく走ってくれていると思います。

 ただ、3大駅伝で優勝を狙うには青学大や國學院大あたりがライバルになってくると思いますし、強豪校はまだ自分たちの上にいます。夏合宿をしっかりこなして、そこで成長する選手に期待していきたいですね」

https://sportiva.shueisha.co.jp/clm/othersports/rikujo/2024/08/15/post_63/?page=3

 (トラックシーズンを昨年度から見始めたので、認識不足があるかもしれません、という前提で以下記述しておりますのでご注意下さい)
 昨年度は予選なしで三大駅伝すべてに出場する初めてのトラックシーズンということもあり、6月に全日本駅伝予選(10000mに8名の選手が出走する必要がある)が無いのでこの時期に10000mへの対応を仕上げる必要がなく、且つ、これまで比較的苦手とされていた”スピード駅伝”の出雲駅伝に向けて”5000m”トラックに集中してスピード強化を図った形だったと思われます。
 実際、それまで僅か数名しかいなかった5000m・13分台に1年生を含む多くの選手が上半期にPB更新し、夏合宿を経て9月の絆記録会で当時1年生の小池選手が13:34の創大日本人記録更新など多くの5000mのPB更新がなされ、その勢いが出雲駅伝の準優勝(後に失格となったものの)として結実しました。
 他方、10000m・ハーフへのスタミナ・距離対応という意味では、例年よりも後ろズレした感があり、全日本駅伝では正に薄氷を踏むシード確保だったと思われます。その改善のために、「5000mと10000mの両方をしっかりと戦える状態を作ろう」という今季の方針をとったと考えられます。実際、【ロード|ハーフマラソン編】でも触れましたが、4月下旬の東海大記録会で新入生3人を10000mに初出走させ、そこで資格記録を得られた2人が関東インカレ2部のハーフマラソンに出走、更に6月末の函館ハーフにも、と特に一年生の距離対応の前倒しは顕著であると感じました。

 前述の今季トラックシーズンの特徴ー5000mと10000mの両方をしっかり戦える状態を目指すーを念頭におきつつ、次節からはトラックレースを以下のカテゴリーに分類して観ていきたいと思います。

  1. スピード強化|3000m/5000m

  2. 距離対応・スピード持久強化|10000m

  3. 中距離精鋭の進化|800m/1500m、3000mSC

※前述の通り、note上でのこの分類ごとに別記事として分割してあります。

1. スピード強化:3000m/5000m|新規13分台は新留学生Solomon①選手のみも、持ちタイム13分台の主力選手が着実にPB/SB

 例年3月は小林市(宮崎県)での合宿を経て3月下旬の小林市記録会でトラックシーズンイン&新入生をお披露目というのが恒例(例えば2023年は3/25に下記リンクの通り小林市長距離記録会に参加)だったようですが、今年は小林市合宿がなく3/30に開催されたTOKOROZAWAゲームズ2024@早稲田大学所沢キャンパスが実質的なトラックシーズンインとなり、新ユニフォームのお披露目とそれをまとった新入生の多くが大学初出走を飾りました。(私個人もトラックレースの初現地観戦となりました…)
 尚、小林市合宿を行わない代わりに(その予算分を振り替えて)日本GPレース(金栗記念、兵庫RC、織田記念、GGNなど)に選手を出場させたという見方もあり、これも今季の特徴(選抜メンバーにはなるが、多くの経験を積ませる)かもしれません。

・3000m PB更新@TOKOROZAWAゲームズ2024(3/30)

図2:3000m PB更新者@TOKOROZAWAゲームズ2024(3/30)を黄色マークで表示|5000m PB vs. 3000m PBプロット

 図2はTOKOROZAWAゲームズ2024の3000mに出走した選手の3000 mPB(更新反映済み)に対して5000m PBをプロットしたものです。今回の3000mPB更新者はデータラベルの氏名が黄色マークされてあります。新入生を含め多くの選手が出走しPBを更新しているのが分かります。3000mレースについては選手権やオリンピックの種目ではないこともあり、少なくとも大学駅伝部としては5000m/10000mの公式レースに比べれば出走の機会が少ないようです。創価大駅伝部では、トラックシーズン最初のレースとして使われることが多いようで、新入生以外は1年(以上)ぶりの3000mのレースとなり、大幅PB更新となる場合が多いのかもしれません。そういう状況を勘案したとしても、順調なシーズンインと言えるのではないかと思われました。尚、記録の結果詳細に関しては、下記リンクから公式ページをご覧下さい。

 また、図2に示した点線については以下の通りです。
・3000mのタイムを単純に5000/3000倍(×5/3)したのが赤点線(単純比例換算)
・3000mのタイムを×1.68倍したのが緑一点鎖線(5000m・14:00 vs. 3000m・8:20を通る)
・3000mと5000mのWAポイント世界陸連定める各種目でのポイント)が等しい場合が青点線
 
この図2の結果についての著者のXポスト(4/2)を以下に引用しておきます。(註:太字は著者強調)この期待(予測)がどうだったか次節以降ご覧下さい。

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14:00(5000m)と8:20(3000m)を通る直線(緑一点鎖線)を目安と仮定すると、今回PB更新者で今後の5000mPB更新が期待されるのは、
(敬称略)
①八田→14:30?
②大岩→14:10?
②織橋・③黒木・④小暮→13:50ギリ?
④吉田響→13:40ギリ? といった感じか(緑一点鎖線よりもかなり上のプロットのみ)。
また、今回はPB更新ではなかったが、3000m持ちタイムからは、①山口と①西山は13分台へ、①榎木凛は14分一桁へと期待。

https://x.com/leedsnabe/status/1775149002763411765

 現地観戦した印象と動画速報ポスト(X)を幾つか引用しておきます:
新ユニフォームは青赤ストライプに比べると視認性は劣る(慣れ?)ものの、黒字に青赤ストライプが縦にそして肩ストラップに黄色、そして後ろ姿は赤青ストライプが見やすく、そして全体としての印象は非常に洗練されたものでした。3000m・1組の若狭④選手を認識するのにしばし周回が必要でした…
・2組は新入生が多く正直誰だが誰だかレース中は不明なことが多かったですが、組トップとなった山瀬①選手のダイナミックな走りが印象的でした。
・3組は黒木③選手が貫録の組トップで続いて齊藤大②選手この二人が関東インカレの3000mSCで大活躍することになるとは…。
・4組は吉田響④選手が終始積極的に引っ張り(そして留学生の高校生を置き去りにして)組トップで8:03のPB更新。動画の最後に吉田凌④選手とたたえあう?W吉田の姿が(これはご指摘で気づいた…)。吉田響選手は昨年度上半期最後の学内3000mのTT(タイムトライアル)で山森先輩に引っ張ってもらう形でだした非公式PB(8:03)を公式レースで達成した形に。逆に言うと、今年度のシーズンインでそこまで上げているという好調さの顕れとなりました(本人は課題が多いとの評価でしたが)。

・そして最終5組では、小池②選手が序盤から城西・キムタイ選手、早大・伊藤大選手の先頭集団に付いて1000mを2:34程度で入る積極性を見せ、8分ギリはならなかったものの8:01でまとめたのが印象的でした。これは昨年度の5000m PB(13:34)に十分に相応する好タイムで、響選手同様に上々のシーズインインという印象でした。今年度もイケイケ小池な感じで。

・5000m PB更新@4月・5月|絆記録会と日本GPシリーズ

 ここからは、5000mのPB更新について観てきたいと思います。PB更新だけでなくPBに迫る記録やSB(Season Best and/or Second Best)などもできるだけ言及したいと思いますが、全出走者の記録の詳細については創価大学駅伝部(SUET)公式ページの大会結果を参照下さい(大会ごとの結果のページへリンクを示すようにいたします)。

 まず、4月・5月に更新された5000m PB矢印(緑色)で5000m/3000m PBプロットに図3にまとめて示します。尚、赤点線(3000mタイムを単純比例換算した5000mタイム)よりも右側にある池邊②選手、篠原②選手の3000mタイムはネットで調べた値で参考値且つ実情が反映されていないと考えられますが、ここでは便宜上表示しております。

図3:5000m PB更新者@4月・5月を色分けマークで表示|5000m PB vs. 3000m PBプロット

 第11回絆記録挑戦会(4/6|SUET公式結果配信アーカイブ)では、全般的に青山学院大の選手(特に新入生)が組上位を占めた印象でしたが、その中で5000m 1組で八田①選手がPB更新(14:51.61)を達成。先週の3000mの大幅PB更新に続いて5000mでも着実な結果を示しました。2組では池邊②選手が14分一桁台のPB更新(14:07.30)で組3着。幸先の良いトラックシーズンインとなりました。また、この組では榎木凜①選手がPBに1秒ほどに迫るる記録(14:21.43)を記録しました。最終3組では、黒木③選手が組4着で13:51.98のPB更新を達成しました。先週PB更新した3000mのタイムから5000mでは13:50ギリが狙えると期待と書きましたが(前節参照)、本人のその狙いだったようで悔しさも残ったようです。この後の5000mのレースでは結果的にPB更新とはなっていませんが、着実に13分台でまとめる力がついており、それが3000m SCでの躍進につながっているのは間違いないと思います。

 日本GPの初戦となる第32回金栗記念選抜陸上中長距離大会2024(4/13@熊本|SUET公式結果配信アーカイブ)では主力選手(石丸惇③選手、織橋②選手、小池②選手、Stephen②選手)が今季初5000mに出走し、PB更新はありませんでしたが、3組(配信アーカイブ)に出走したStephen②選手がPBに1秒強に迫るSB(13:30.09)、小池②選手が2度目の13分50秒ギリ(13:49.71)のSBを記録しました。この小池選手の結果について築舘コーチは、”個人的には日本人最高記録が決してラッキーパンチでは無かったのだと証明した事が一番の収穫だと思う”と。小池選手はこの後も日本GPシリーズや大学選手権(関東インカレ・個人選手権)で多くの5000mのレースに出走し、目指していた13:30ギリのPB更新→日本選手権出場はなりませんでしたが、単独走を含む様々な展開のレースでも当たり前のように13分台でまとめる力を示しました(これについては後ほどペース分析のところでも言及したいと思います)。

 日本GPシリーズのグレード1にカテゴリーされている第58回織田幹雄記念国際陸上競技大会(4/29@広島|SUET公式結果)に4名の選手(若狭④選手、小暮④選手、黒木③選手、織橋②選手)を派遣し、5000m B決勝では若狭選手が粘り切って二度目の13分台PB(13:57.06)を達成し、A決勝では織橋選手が13:50ギリのPB(13:49.30)を達成しました!若狭選手は”今年に入ってからずっと不調で、棄権も考えていたのですが、監督からの誕生日プレゼントで頑張れました!”と。就活とかありますのもね、4年生は。織橋選手は”前半からハイペースでしたが、後半まで粘ることができ、自己ベストを更新しました!関東インカレでも、粘りの走りができるように頑張ります”と。TOKOROZAWAゲームズでの3000m PBから期待された通りに13:50ギリを成し遂げたのは立派です。昨年度13分台に突入した二人が、日本GPのレースで着実にPB更新した結果となりました。

 GGNの愛称で知られる第35回ゴールデンゲームズinのべおか(日本GPシリーズ グレード3:5/4@延岡市|SUET公式結果配信アーカイブ)にも1年生2名(西山①選手、山口①選手)と主力選手3名(石丸惇③選手、齊藤大②選手、小池②選手)を派遣し、5000m E組石丸惇選手が13:45.04で0.7秒ほどのPB更新を達成しました。先頭集団から抜け出した城西大・平林④選手には付けませんでしたが、粘って最後の一周でかなり上げてPBにねじ込んだのが印象的でした。レース後のインタビューでは、”良い流れを作ることができた試合になりました。関東インカレでは優勝争いができるように頑張ります”と。13:30の目標タイムが設定された5000m A組に出走となった小池選手は、大学・実業団のトップ選手と堂々と渡り合い先頭集団に食らいついて、終盤は長野・佐久長聖の大先輩・上野選手(ひらまつ病院)と競り合い、最後は少しおいていかれましたが学生トップの組3着で13:37.54のPBまで約3秒に迫るSB。レース後も上野選手を始めとする実業団選手に積極的に挨拶(握手)をしているのが印象的でした。

 第103回関東学生陸上競技対抗選手権大会(関東インカレ(IC)@国立競技場|SUET公式結果配信アーカイブ(関東学生陸連公式))の男子2部5000mには、4月の日本GPシリーズでPB・SBをマークした石丸惇③選手・織橋②選手・小池②選手が出場し、5/10(Day2)の予選を見事3人全員が通過。5/12(Day4)の決勝では、小池選手が7位入賞(13:55.48)を果しました!最終日のトラックはYouTube配信は無かったので、現地観戦動画(手ブレまくり)をどうぞ↓(註:※着順では8位でしたが、レース後に失格者が出て7位に繰り上がりました)

レース後のインタビューによると、優勝を目指していたものの(連戦の疲れもあってか)走りはじめたら身体が重く、粘って入賞狙いのレースになってしまった、とのことでしたが、ラストに実力者の中央学院・吉田礼選手に競り勝っての入賞でもあり素晴らしいです(現地ではドキドキ感満載でした)。

 関東IC出場が叶わなかった選手達が出走する記録会、通称「もう一つの関カレ」となった第2回早稲田大学競技会(5/18@早稲田大学所沢キャンパス|SUET公式結果)では、5000m 3組で篠原②選手が14:30.41のPB達成し、5組では新留学生のSolomon①選手が14:00.10で初記録となりました。現地で観戦していたのですが、Stephen②選手以上に”淡々とペースを刻む”印象を受けました。わずかに13分台とはなりませんでしたが、あの偉大なる先輩Mulwa選手の5000m初記録は14:05.44(@法政大学競技会2019/6/18|当時1年生)でしたので、留学生も育成という意味では上々の出だしと言えるのではないでしょうか。外周でのアップなどでStephen選手が献身的にサポートしているのが微笑ましかったです。母国語が通じる仲間が身近にいる、というのは想像以上に大きいのでは、というのが実感です。

・5000m PB更新@6月・7月|日体大記録会とホクレンDCシリーズ

 つぎに、6月・7月に更新された5000m PB矢印(緑色)で5000m/3000m PBプロットに図4にまとめて示します。

図4:5000m PB更新者@6月・7月を色分けマークで表示|5000m PB vs. 3000m PBプロット

 第314回日本体育大学長距離記録会(日体大健志台キャンパス|SUET公式結果)2日目(6/2)の5000mでは、降雨の難しいコンディションではありましたが、多くの選手がPB更新を果しました。
 6組で八田①選手が先月に引き続き14:40.35のPB。3/30のTOKOROZAWAゲームズでの3000m PBに相応しいレベルまで着実に上げてきている印象です。
 8組で岡野②選手が14:24.80のPB野尻①選手が14:38.86のPBを達成。岡野選手は長期故障からの4月下旬に復帰してのPB更新だったようで、響選手志村前主将などの労いのXポスト(やスレッド)がとても印象的でした。また、野尻選手はレース終盤に随分と追い込んで上げたなぁ、という印象でした。
 最も雨脚が強く観戦するのも大変だった11組では榎木凜①選手が14:17.84のPB更新。持ち前のタフネスさを活かした形となりました。13組では齊藤大②選手が13:51.82のPB更新。13:45設定でStephen選手のPM先導で3000mまでは快調に進めましたが、その後の落ち込みを悔いていました(レース後インタビュー)。ただ、苦しくなってからの懸命な走りはいつも通り素晴らしく、意地でPBを約1秒刻んだのは流石でした。

 日本学生陸上競技個人選手権(6/15@平塚|SUET公式結果配信アーカイブ)5000mで、小池②選手が見事優勝!(全日本大学駅伝関東予選会(6/23)を控えた)時期的なこともあり最終的な出走が3名となり、序盤から単独で先頭を飛び出して押し切る形で、PBおよび大会記録更新とはなりませんでしたが、13:47.3(計器故障?で手動計時)でまとめたの流石でした。どんな展開でも13分30~40秒台の高いレベルで5000mを走り切る対応力を身に着けた印象です。

 7月に入ると本州では酷暑が続き、第14回絆記録挑戦会(7/7)第3回富士裾野トラックミート(7/20)では5000mのPB更新はありませんでしたが、夏合宿前の鍛えとなったでしょうか。選抜メンバーは北海道でのホクレンディスタンスチャレンジ(DC)シリーズを転戦しPB更新にチャレンジしました。
 ホクレンDC第2戦網走大会(7/10|SUET公式結果配信アーカイブ)では、OB嶋津選手(GMOインターネットGr)の13:37.35のPB更新にぶち抜かれた形ではありましたが、黒木③選手はPBならずも13:56.77でまとめ、着実に13分台で走れる安定性を示しました。ホクレンDC第3戦士別大会(7/13|SUET公式結果配信アーカイブ)では、先月14分フラットで5000m初記録となったSolomon①選手が13:56.21で早速のPB更新を果しました。この上半期では(留学生ではありますが)唯一の新規13分台PBとなりました(3000mの記録が不明のため図4ではプロット無く、テキスト表示してあります)。
 ホクレンDC第4戦深川大会(7/17|SUET公式結果配信アーカイブ)では、昨年6月の日体大記録会以来の5000mレースとなった吉田響④選手が13:39.94でPBを約20秒の大幅更新を達成しました(レースペースについては後述)。6/30に函館ハーフで61:45の創価大学新記録を樹立してから3週間弱でのレースとなりましたが、本人曰くの”連戦が効かない”という懸念への挑戦でもあったようですが、連戦にも十分に対応がなされているとともに、北海道とは言えこのレース時は決して冷涼な気候とは言えず、改めて暑さへの耐性を示した結果となりました。
 ホクレンDC第5戦千歳大会(7/20|SUET公式結果配信アーカイブ)では、先週10000mに出走し(多くの選手がPB更新)た主力選手が5000mに挑み、今回はPB更新とはなりませんでしたが、織橋②選手がPBに約1秒に迫る13:50.60、石丸惇③選手が13:53.95、そして小池②選手が13:42.24と連戦でも13秒台の高いパフォーマンスを発揮する強さを示す結果となりました。

・ペース分析①|吉田響④選手の5000m PB@ホクレンDC深川と小池②選手の5000m主要レース

 吉田響④選手のホクレンDC深川での5000m PB更新に関連した上記記事から以下抜粋引用します(太字は著者が強調のため追加)。

「小池莉希(3年)が13分34秒(82)の創価大(日本選手)記録を持っているので、それを更新するのが目標でした」
 その目標に向かって、蒸し暑さが残るなか、吉田選手は13分35秒に設定された先頭集団で積極的にレースを進めました。
3000mまでは自分の予想通りにいけたのですが、3000mから5000mはどうしても耐え切れずにペースが落ちてしまった」と振り返るように、目標には惜しくも届きませんでしたが、終盤も粘りのレースを見せました。

https://news.yahoo.co.jp/articles/a55b43073aa1ebc793a82f91f3582029d8010807

この引用の内容を受けて、ホクレンDC深川での吉田響選手の5000m PBを、小池②選手のPB@絆(23.9)とホクレンDC網走でのOB嶋津選手(現GMO)のPBとのペースを比較してみました (図5)。

図5:吉田響④選手の5000m PBのペース分析|小池②選手・OB嶋津選手PBとの比較
縦軸|1㎞あたりのラップタイム(通過タイムから換算
縦軸|400m(1周)ごとのラップタイム  軸|距離(1000mごと)
※例)1000mにプロットされたラップタイムはスタートから1000mまでのラップを示している
データラベル|1000mごとの通過時間(mm:ss)とFinishタイム(mm:ss)
※タイムは配信映像から目視で判断した参考値(誤差を含む)

この図は【ロード|ハーフマラソン編】でも示したもので、1000m毎のラップタイム(mm:ss)を左縦軸にとり、横軸の距離(m)に対してプロットしたものを”ペース分析”と称しております。縦軸は400m(トラック1周)あたり換算のラップタイムを示し、両縦軸ともに反転(軸の上側がラップタイムが小さい=速いペース)しているのにご注意下さい。また、データラベルには1000mごとの通過時間(mm:ss)およびFinishタイム(mm:ss)を表記しております。
   レース序盤の入り方に違いはあるものの響選手の3000m通過は8:08で小池PBとほぼ同じでしたが、4000mまでに若干ペースが落ちているのが分かります。ただラスト1000mはしっかり上げて13:40ギリを達成。気候やPMの有無およびレース展開の違いの影響もあるのは留意しつつも、図中に示した黄色矢印の差がタイム差に直結した結果になっています。
 一方、嶋津選手はウェーブライト(WL)設定(2:45-45-47-47-41|13:45)のPMの後ろでガマン?して進めて、3000mは8:17通過。この後、PMの前に出てラスト2000mで2:43-2:37と爆上げして、念願の13:40ギリのPBを達成しております!前週のホクレンDC北見で3000mを8分ギリした好調を活かしたネガティブスプリットは見事です。
 尚、昨年9月の絆記録会での小池選手のPBは、最初の1000mを2:38で速く入り、その後Leakey選手の先導で2:45-2:43/kmで最後まで押し切り見事な13:34。3000m以降もペースが落ちていないのが顕著です。

 小池選手は上半期は5000mのPB更新こそならなかったものの、関東インカレの予選・決勝を含めて6本の5000mに出走しました。その主要レースのペース分析を図6に示します。

図6:小池②選手の主要5000mレースのペース分析(2024年上半期)
左縦軸|
1㎞あたりのラップタイム(通過タイムから換算)
右縦軸|400m(1周)ごとのラップタイム  横軸|距離(1000mごと)
データラベル|1000mごとの通過時間(mm:ss)とFinishタイム(mm:ss)
※タイムは配信映像から目視で判断した参考値(誤差を含む)

 実は、GGN(5/4)やホクレンDC千歳(7/20)のレースでも4000m通過はPB(昨年9月の絆記録会)とほぼ同じ(10:51-53)だったのですが、ラスト1000mで上げることが出来ずPBには至りませんでした(それでも13:40前後の好タイム)。GGNでは終盤に上野選手(ひらまつ病院)と競る展開でしたが及ばず、ホクレン千歳では先行していた中央大・岡田選手に終盤で追いつきましたが、連戦の疲れもありそこで”足を使い切った”感じだったと思います。

 一方、3人のみの出走になった個人選手権(6/14)では、最初の1000mは2:40とかなり速く入り序盤から大逃げを打った形(本人曰く”駅伝のつもり”)でしたが、徐々にペースが落とし特に3000m-4000mが2:52となってしまったのを本人も反省しておりましたが、ラスト1000mはしっかりと切り替えて2:40でカバー(特にラスト1周は約61秒)し14:40秒台後半でまとめました。前述の通り、築舘コーチの”個人的には日本人最高記録が決してラッキーパンチでは無かったのだと証明した事が一番の収穫だと思う”(金栗記念(4/13)後のXポスト)から始まった今季の5000mでしたが、PMなしでも、序盤から突っ込んでも、集団走の競り合いでも、単独走の大逃げでも、といろいろな展開でしっかりと13:30~40台でまとめられる力がついていることを証明して余りある上半期だったと確信しております。

 小池選手本人も認める今後の課題-ラストの切り替え・ラストスパート-の克服の道しるべとして、今年のホクレンDCシリーズでのラストが印象的だった、SUBARU・三浦選手@深川(7/17)、駒大・篠原選手@千歳(7/20)と図5で示したOB嶋津(GMO)選手@網走(7/10)を小池選手のPBと一緒に図7に示します。

図7:ホクレンDCシリーズでラストが印象的だったスバル・三浦選手、駒大・篠原選手、OB嶋津選手の5000m ペース分析

 パリ五輪で3000mSCで二大会連続の入賞を果たした三浦選手の渡仏前最後の調整レース。リラックスしたペースで4000mまでを11分弱でカバーしてラスト1000mを2:33/kmでカバーして13:31。特に、ラスト2週は59秒→61秒で気持ちよく流した感じでした。
 また、駒澤大の篠原④選手は先頭集団のハイペースには付かず、2:42/kmペースで3000mを8:06で通過して4000mまでを2:44/kmで”貯めて”から、ラスト1㎞を2:37でカバーし課題だった13:30ギリを達成。特にラスト1周は約58秒の切れ味でした。

・【トラック編①|3000m/5000m】のまとめ

 3/30のTOKOROZAWAゲームスでの3000m PB更新を反映した図2をベースに、図3(4月・5月の5000m PB更新)および図4(6・7月の5000m PB更新)を反映した後の5000m PB vs. 3000m PBのプロット(2024/7末時点)を図8にまとめとして示します。

図8:2024年7月末(上半期終了)時点での5000m PB vs. 3000m PBプロット
※基本的に今季3000m and/or 5000m出走者のみ記載。但し、3000m PBが不明(ネットに情報がない)場合は載せていない(除く、5000m PB更新のSolomon①選手は図中に記載)

 本記事の冒頭で紹介した榎木監督の談話の通り、このトラックシーズンの方針は、(5000m中心だった昨年に比べて)「今年はそのベースを上げ、5000mと10000mの両方をしっかりと戦える状態を作ろう」でした。これを念頭におき、本記事の3000m/5000mトラックレースの結果について、以下の通りまとめました:

  • (小林市合宿を行わず、その代わりに寮内合宿を経て)3/30のTOKOKROZWAゲームズ3000mで多くのPB更新あり(図2)順調にシーズンイン

  • 大学等の記録会に加えて、選抜メンバーが日本GPシリーズ(金栗記念、小田記念、GGN)に出場し多くの経験を得た

  • 昨年に比べると(これまでのところ)5000mの新規13分台PBは少ない(新留学生のSolomon①選手のみ)が、

  • 昨年度13分台PBに突入した主力選手の多くが今季すでに5000mのPB更新をしている(図8の黄色マーク)。もしくは、

  • 今季5000mのPB更新に至っていない主力選手(13分台)も10000mでのPB更新をしている(図8のオレンジ枠)。→詳細は【トラック編②|10000m】を参照のこと

  • 14分台後半から中盤へのPB更新が多くの1・2年生でなされたが、14分1桁へのPBは少ない(池邊②選手のみ)が、夏合宿明けの記録会(絆 or 日体大)での新規13分台PBに期待したい!と思います。


【トラック編①|3000m/500m】は以上です。
 ここまで1.3万文字を越えているため、本稿はnote上では3分割しております(後記事が公開次第、下にリンク貼る予定)。現地やネットで観戦・応援した自分の備忘録としてまとめているとは言え、閲覧数/「いいね」が今後の執筆の励みになることは否定できませんので、宜しければ是非「いいね」お願いいたします。
 ここまでお付き合いいただき有難うございました、お疲れ様でした。【トラック編②・③】も是非よろしくお願い申し上げます。



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