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AIでお面を描く、表情を理解する
私はあるとき、「能面のデザインをAIにさせられませんか?」と武楽創始家元の源さんという方からお話をいただきました。
https://www.youtube.com/watch?v=Sezh6IKzEWk
AIはマスクを描くのが得意です。
「お面くらいできるでしょ!!」と最初は思っていたのですが、とんでもない…。
AIは「能」に関して学習不足だったので全然上手く描けませんでした。
そもそも源さんはAIアートをご自身の作品に沢山登場させて販売もされていてとても実績のある方です。どんな難しい絵でもかなり描けるのに、あえて「できますか?」と問われるということは相当な難問だったのです。
![](https://assets.st-note.com/img/1678688650705-TF7HGyk6Zq.png?width=1200)
![](https://assets.st-note.com/img/1678688602050-Btft2KwTsI.png?width=1200)
![](https://assets.st-note.com/img/1678688633647-Jv4vdBAXis.png?width=1200)
このように能に関するワードでお面を作ろうとするとカラフルで能面とは違うものになっていたんです。
そこで「AIが知らないものをどうやって描かせるのか?」ということについて考えました。
こういう時、普通なら「1つのAIを大勢で使っているMidjourneyは画像をAIに読み込ませて覚えさせるという作業を個人でできないので、せめてイメージプロンプトで画像を読み込ませて参考画像として使わせる」ということを考えます。
ですがこれは失敗に終わりました。この程度で解決する問題なら源さんは自力でやってのけているはず。
次に考えたのが「面の素材や形状などを細かくプロンプトで指示していく」ということ。これはある程度できたのですが、ヨーロッパやアジアのお面のデザインが入り込んできました。
余計なデザインに関してはネガティブプロンプトで排除していくというのが普通です。ですがこれはあまり効果がなく、モグラたたきのように世界中の国名を入力しなければならずネガティブプロンプトには単語数の上限があるので現実的ではありませんでした。
そしてそれに対応しても「表情が全然能面っぽくならない」という状況に。一体何をどうすれば「能面らしさ」を表現できるのか?!
そこで「根本的に顔というものを考えよう」と決めました。
まずは素体を作ります。
![](https://assets.st-note.com/img/1678686281905-90B3L2Kx2f.png?width=1200)
please draw Noh face wooden mask. white oak. flat. small eyes. low nose. narrow mouth. wide face.simple.32k.photorealistic.High quality.white background.
これがベースになります。
これは能面のベースですが今現在の私のプロンプトの基礎です。このプロンプトを発展させてほとんどすべての絵を描いています。
こうして「木でできた能のお面ですよ」と指示を出します。次に材質、目が小さいなどの形状を指示します。シンプルと入れたのは華美になりすぎると能のお面っぽくないからです。32K以降は画質の設定です。
Noh face wooden mask
Noh face mask
と、したのには理由があります。
能楽のことを「能ダンス」とAIは理解していますが能面を知らないので「Noh mask」と書くと「Noh」はナンバーの「no.」と勘違いされてしまいます。つまりただのmaskになってしまうんです。だからこの部分は必ず装飾が必要でした。
この素体を利用して思い通りの顔を描いていきましょう。
まずもうちょっとフラットにしてみましょう。
Simple and deformed design.
という単語を入れていきます。
flat form.
very wide face.square face
という単語も効果があります。
![](https://assets.st-note.com/img/1678688274669-8hsCgwyASI.png?width=1200)
つるつるになりすぎたかな。
材質を変えてみましょう。性別を女性にして。
![](https://assets.st-note.com/img/1678712201269-9IwLIuML7d.png)
試しに表面加工を施してつるつるに。
![](https://assets.st-note.com/img/1678712323672-Tfz0Dgyy1a.jpg)
ちょっと調子に乗ってつやつやにしすぎました。
![](https://assets.st-note.com/img/1678712387384-F6gxtQ3p0V.png)
光らせるのに有効な単語は「OIL」です。実はこれ油でテラテラなんです。
では素体のプロンプトに「猿」という単語を入れてみましょう。
![](https://assets.st-note.com/img/1678688380613-vD9tMHQYve.png?width=1200)
確かに猿っぽい。もうちょっとデザイン性の高いものがいいですよね。ちょっと工夫してみましょう。
![](https://assets.st-note.com/img/1678713032038-MhRi1rGOWZ.jpg?width=1200)
![](https://assets.st-note.com/img/1678690004490-HDW8hjbUzy.png?width=1200)
これではなんだかお土産物屋さんで売ってそうなお面。しかもこれは「猿」と入れれば誰でも描ける絵です。源さんが求めているようなものではないのだろうと思いました。
![](https://assets.st-note.com/img/1678690129025-fEmfqknlYH.png?width=1200)
![](https://assets.st-note.com/img/1678690204711-GzFDcuQL4Q.png?width=1200)
![](https://assets.st-note.com/img/1678690261814-TVm7p2KOkg.png?width=1200)
少し単語を足して猿を強そうにしてみましょう。
![](https://assets.st-note.com/img/1678690505370-X1QP6uXFZU.png?width=1200)
![](https://assets.st-note.com/img/1678690492460-E5F77niv2H.png?width=1200)
これらはすべてAIが描いた絵としては「ありがち」です。
MidjourneyというAIは「凄い絵はシンプルなプロンプトで簡単に描けるけど、誰にでも同じ絵を描く。その代わり単純な絵はへたくそ」という特徴があります。当然「シンプルな絵のプロンプトほど膨大な単語量」になります。単語の数が増えれば増えるほどプロンプトは難解になります。ミスが起きやすいですし、破綻したプロンプトほどデフォルト画像が出やすいので「みんなと同じ絵」になりがち。
でもそのデフォルト画像は美しくて人気があります。ほらこんな感じ。
![](https://assets.st-note.com/img/1678690418263-qS7oVTb7i5.png?width=1200)
![](https://assets.st-note.com/img/1678723634358-fpnVqeAmi4.png?width=1200)
![](https://assets.st-note.com/img/1678723753984-Jc3IisvzOf.png?width=1200)
![](https://assets.st-note.com/img/1678723646341-7pw6TdY44V.png?width=1200)
これは世間一般では「凄い絵」なのでしょうが、AIアートをやる側からすると「ダメな絵」です。
これらが出た、ということはお面(顔)の造形についてもっと繊細にアプローチしなければ。
人の顔を理解するには基本的な顔の練習をしてみましょう。
まずは老婆をつくってみました。
Old woman.
とベースのプロンプトに入れただけです。女性の肌をきちんと描写されたいのでbeautifully colored.なども加えます。木でできたリアルなおばあちゃんの顔ができあがりました。変な服を着て登場することが多かったのでそれらはネガティブプロンプトで排除します。
![](https://assets.st-note.com/img/1678699551241-P03u6H6iD3.png?width=1200)
怒っている顔や笑っている顔も描き分けられます。
![](https://assets.st-note.com/img/1678699717691-x3CF9Rc8Um.png?width=1200)
![](https://assets.st-note.com/img/1678699705327-RJL29MjuN2.png?width=1200)
ふいに思いついてこの猿のお面に人名を加えてみたくなりました。歴史上の人物です。そして着物を着せてやりました。そのうえで動詞を加えました。するとこのような絵が生成されました。
![](https://assets.st-note.com/img/1678688454384-YYSjm8wdRd.png?width=1200)
主語は能面なのですが、まるで人物のように描けます。
それならと、表情を現わす単語と感情を表す単語を加えてみました。
こちらの記事のプロンプトを使っています。
![](https://assets.st-note.com/img/1678691226387-uWLf9wdLJ0.png?width=1200)
![](https://assets.st-note.com/img/1678724214304-eMcby2Ns1E.png?width=1200)
![](https://assets.st-note.com/img/1678691246625-gGHz2NDO3R.png?width=1200)
![](https://assets.st-note.com/img/1678691273602-NYQVfNBdth.png?width=1200)
![](https://assets.st-note.com/img/1678724410828-KuxnInp9oq.png?width=1200)
人物の顔に表情をつけるよりもお面に表情をつけるほうが反映しやすいのです。このように容易に複雑で繊細な表情をつけられました。
これを利用すると次のような画像を描けます。
マスクに服装を指示して体を作り、動詞をつけ人のように動かすのです。マスクには表情をつけられます。
![](https://assets.st-note.com/img/1678701145629-GBWMmvmsV7.png?width=1200)
大きな顔の人も描けます。
![](https://assets.st-note.com/img/1678701184330-PJ7wLgOvuT.png?width=1200)
あえて、右目と左目の表情を変えるプロンプトを組んでみました。
サスペンスモノっぽい雰囲気の画像を作ってみます。私はこのジャンルの絵が得意かもしれません。
![](https://assets.st-note.com/img/1678701094498-Iz4SOXCkIc.png?width=1200)
プロンプトを弄ってマスクっぽさを消すと見た目は完全にただの人になり、表情の表現を複雑なままにもできます。
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表情に関するプロンプトはマスクに含まれるので、動詞は性別などを表現する別の主語に集中させることが可能です。これは人物を描くときにとても有利なことなのです。
マスクは別の形状のマスクにすることも可能です。あくまでもこのプロンプトの主語はマスクです。マスクをつけている人の内容を記述しますが、直接人物に表情などのプロンプトを加えるよりも画質が良かったり書き込みが込み入っていたりします。
![](https://assets.st-note.com/img/1678700547037-Mq8hiGVnn9.png?width=1200)
![](https://assets.st-note.com/img/1678700556993-W5upfvsKVT.png?width=1200)
主語を人物ではなくマスクにすると、通常では描けない絵を描くことができます。お面なのでいろんなところに顔を配置することが可能に。
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壁の模様もマスクを発展させてめり込ませる暴挙。壁の顔は面白くて癖になっちゃう。お面は首の上に乗っかっているだけの顔よりも、もっと応用がきいていろんなものとして使えるのです。なんにでもなれる。
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お面の素材や古さなどを設定しても雰囲気はこれだけ変わります。
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これは表面を陶器にしています。色と素材の指定がその主題の形状を大きく左右します。良いものが出なければこの2つに関わる単語を変更してテストしていきます。
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嫌いな食べ物が出されて嫌な顔をしている人のマスクも描けます。
とにかく主語をマスクにすると表情が豊かになるんですよ。
それに気づいたとき、私はひらめきました。
能面の表情とは、何を表現させればよいのか。
それを指示してみたらこの通り。
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「能面を描いて」とAIに頼むだけではなく、その面が持つキャラクターの気持ちなどを言葉にしなければならなかったんですね。
能面は単なるお面ではなかったんです。
源さんには、とても勉強になる良い経験をさせていただきました。
それでは能面ではないものの製作過程の失敗作たちをぜひご覧ください。
![](https://assets.st-note.com/img/1678690727191-EoyqGZRf1C.png?width=1200)
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お面は楽しいので、ぜひ描いてみてください。
私はAI面打ち師になりたいと思うほどお面を描くのが好きになりました。
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