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筋肉がつく順番、とける順番

低緊張の子供は育つにつれて膝から下が細く貧弱な形になってきます。これは「立って歩けないから仕方がない」と理学療法士や小児科医に言われていたのですが、どうにも私はこの言葉がしっくりこず「そういうことじゃないだろう」とモヤモヤしている時期が長く続いていました。

最初はやせっぽちでした

なぜなら「ひざ下以外にも細い部分がある」からです。もしも本当に立って歩けないという理由だけでひざ下の筋肉がつかないのであれば、ほかの細い部分を説明できないし、どうしてひざ下だけなのかがわかりません。足全体がもっと貧弱でもいいはずではないのか?!と、私は納得がいかなかったのです。

そして「発作を起こした後はひざ下の細さが増す」という現象もモヤモヤに拍車をかけました。発作を起こしていない時期はひざ下の太さはさほど増減がありません。確かに細いのですが急激に細くなったりはしない。そのかわり大きなてんかん様発作を起こした際には明らかにひざ下だけが細くなっている。

そしてその時子供は必ず背中を反り返り、「背中痛いからさすって」と訴えてくるんです。そして触るとそこは冷たい。当然足先も冷たい。

低緊張型脳性麻痺の子供の筋肉が柔らかくなる瞬間は間違いなく夜中です。夜寝ているときに発作(大きいものも小さいものも含めて)を起こすと必ず体は冷たい部分と温かい部分にクッキリと分かれ、冷たい部分はその後筋肉が柔らかく細く痩せるということを繰り返していました。

明らかに冷たく細くなる部分は

・ヒラメ筋
・脊柱起立筋
・三角筋

この3つです。そしてこの順番は被害の大きい順ですが、寝始めたときに一番に冷たくなるのは三角筋、次が背中、そして低血糖症状を起こさない限りはふくらはぎは冷たく細くはなりません。

これらの3つの筋肉の夜間の解糖対策をしない限り、低緊張は良くならないです。


そもそも筋肉は何をしているのかというと、肉体を形成して移動を可能にするということ以外にも重要な役割があります。それは睡眠時にエネルギー不足で死なないようにするために糖質を保管する場所です。

夜、寝ているときに人はモノを食べることができません。寝ている間にどうして人間が死なないのかというと、血液、肝臓、筋肉に貯蔵した糖質を脳で利用できる仕組みがあるからです。

低緊張の子供も筋肉に貯めたグリコーゲンをグルコースに変換して使う仕組みが上手く使われているなら、夜間低血糖を起こしたりはしません。でも使われれば減ります。減った筋肉は日中食べて動いてそこに糖をため込んでくれればいいのですが、貯めるよりも減るほうが早い場合はその部分の筋肉は痩せたままです。

この原因は「夜間に脳で必要とされる糖質の量が普通の人よりも多い」のか「グリコーゲンをグルコースにするのがへたくそ」なのか「肝臓に貯められるグリコーゲンの量が少ないのか、使われていない」のか医師に問うても「わからない」と言われるだけで何もしてもらえません。でも本当に何もしないわけにもいかないので、まずは「夜間に糖を足す」ということを続けていました。

夜間糖質補給で全身ぷくぷくに

夜中にブドウ糖水溶液を飲ますと、朝になったときに足が細くなっていません。これを繰り返していると、日中動ける量が増えるので、だんだんと足は太くなっていきます。テストステロンの分泌を促すエクソソームは右のひざ下の筋肉の動きから発生すると言われているので、とにかく筋肉をつけるためには歩かないといけない。歩けないうちは椅子に座らせてから自転車こぎのような運動をさせてひざ下を動かしていました。

背中が反りかえるときにさすってやると見事に皮膚の温度が違います。暖かい部分と冷たい部分の境目を触ってやってると、どうもはっきりと筋肉の境目が移動していきます。触ることで体が変わってきているようでした。

冷えている場所

それに気づいてからは冷えている場所の境目をいつも触ってやっていました。特に寝る前に冷えを確認するために触っていたのですが、体の中央部分に近い所を触っていると腕や足の外側のほうが冷たくなっていました。できるだけその冷えの差を確かめるように触ってやっていると、中央部分は冷えなくなってきていました。

この冷たくて硬い部分をどうしてやるべきなのか、試行錯誤を繰り返しました。


まずは私自身に低周波治療器と筋膜ガンをかけてみました。気になることを試したかったのです。

骨の育ちきっていない子供に低周波治療器を当てるのは良くないと言われているので子供にはかけず、大人の私で筋肉をほぐすテストをしてみることにしたんです。

すると可動域が広がり身体は動きやすくなりました。そして一番驚いたのが下半身の冷えた場所をほぐしてやるとかけたほうの足だけ偏平足が治っていて土踏まずができていたことです。

このことから「正しい姿勢で立てていないのは、体の筋肉の一部分が硬直しているせい」だとわかりました。

ではやり方です。

まずは筋膜ガンで足全体をほぐします。黄色いラインに沿って当ててやります。足の角度を変えながら当ててやるとほぐれてきます。私も子供と同じで低緊張タイプなので「やわらかい筋肉を無理をして硬く使っている」ようなところがあります。そのため本来そういう動きをしない部分を無理をして固めて使っているので、硬さのある部分があります。それをこの機械でほぐして本来の姿に戻してやります。

次は背中です。背骨に沿って少し横の部分を上下に筋膜ガンを当ててやると、お尻や足が動きやすくなります。目的は足なのですが、足よりも早い段階で背中をほぐしてやります。お尻の部分も内側と外側計4本のラインで縦にほぐしてやります。

そして肝心なのがここ。膝上です。低周波治療器を2か所に貼り付けます。この部分をとにかく動かしてほぐしてやります。足全体がよく動くようになります。

次がこちら。くるぶしの横のくぼみというか、足首とふくらはぎの真ん中のくぼみのある部分。この2か所に貼り付けて動かします。指が勝手に丸まるように動いていました。

次がこちら。お尻が2か所あります。左右に分けて描いたのですが、右はお尻の下の方のくぼみと身体の横の部分、左のお尻の場合はちょうど真ん中あたりのお尻のくぼみの外と内側2か所です。この部分は正しく貼れていないと全然効いた感じがしません。正しく貼れていると終わってから足を動かすと可動域が格段に広がっています。


また低周波治療器を使わず、普通に足首を手で固定したまま足先を左右に揺らします。このときにつま先を反らさず伸ばすようにしながらやると良いです。


つま先が反った状態で足首を振ると立位での重心が後ろの方に行きます。つま先を丸めた状態で振ると重心が前の方に行きます。低緊張の場合は力がないのでどうしても突っ張って膝を反らせて立つ傾向があるのでかかと重心になりがち。そうするとお尻の赤い部分が硬直して硬くなり動きが悪くなります。できるだけ体重が後ろ側にならないよう、足の裏全体にかかるように調整します。

お尻の場合も足を青い矢印の方向に動かしながら赤い点の部分を刺激すると良いです。お尻の外側のポイントは1か所固定でいいのですが、内側のポイントはその時々で移動します。足の角度などで変動するので様子を見ながら3か所くらい触ってみて一番効果を感じる場所を使ってやってみると良いです。

全体を流してやったときに足の親指が反っていたら失敗です。親指が反りかえらずまっすぐになっていれば成功です。

足の指が反っているということは足先は外を向いているということ。足先が外向いているなら必ず股関節は前傾しています。前傾した状態で立とうとすればいわゆる反り腰と言われる状態になっているので、腹が出て背中は反ります。そうするとこのような姿勢で立つことに。ちょっとおなか出てますよね。


ちょっとわかりにくいので、体の軸のラインをとってみます。

この姿勢の一番悪い所は、股関節が前傾して太ももが外側を向いていること。そして膝がまっすぐではなく少し角度がついている状態。これを前から見るとX脚になっています。そして外反母趾。これを治すにはまずお尻周辺の硬くなった筋肉をほぐしてやる必要があります。

それで機械を2つ使いました。

偏平足で外反母趾ならちゃんと立てていないしちゃんと歩けていません。だから太るしちょっと運動するだけで凄く疲れます。でも硬い部分をほぐしてやること正しい姿勢になり運動が筋肉に繋がりやすくなります。


人間の身体には「筋肉が寝ている間にグリコーゲンを溶かして細くなる順番」というものがあると思います。それはまさに「筋肉をつけるべき順番」でもあります。筋トレをするときにこの順番に即していないつけ方をすると一見マッチョでかっこよさげな体になりますがすぐに壁にぶち当たります。目立つ大きな筋肉をつけてからそれ以外の筋肉をつけようとしてもつかないですもんね。

よくチキンレッグのトレーニーが「カーフは遺伝で決まるから努力では思うほど筋肥大しないよ」と言い訳したりします。これは夜間低血糖になりやすい体質の遺伝子を持っているかどうかという意味ではそのとおりかもしれませんが、だからといって簡単に諦める必要はないと思います。

夜間低血糖の対策をする
日中の脚トレに励む

この2つの方法でしか克服できませんが、このような足になっている時点で普通に運動しても成果はでません。だからこそ身体の固くて冷たい筋肉をほぐしてやるんです。

「筋肉をつけるためにはほぐしてやわらかくしてやる」というのは「低緊張の身体に筋肉をつけてやる」という目的とは相反するように感じる人もいるかもしれません。でもこれが一番の近道です。筋肉をつける練習をする前に、硬い筋肉をほぐしてやるんです。

ただし筋肉が正常に発達していない子供の身体をモミモミ揉むようなことや機械をかけることはNGな行為。その後の発達を阻害するのでやったらダメ!その代り手で軽くさするような動きで触れてやるだけで十分。皮膚をかいてやるような軽い手さばきでもよい部分もあります。お尻なんかはむぎゅっとにぎってモミモミしてやっても大丈夫。冷たく硬くなっている部分に手で触れて大人の手の熱でその冷たさを取ってやるだけでも十分です。次第に暖かくなってほぐれてきます。

これぞ手当って感じですね。

じんわりと残った足先の麻痺もやがて取れていくことでしょう。

お風呂の中で氷を触るような温冷マッサージは足の麻痺を取ることに効果がありました。足の麻痺は手のひらから取り、手の麻痺は口の中から取るというルールがあります。足にまだ麻痺が残っているからこの温冷マッサージは続けています。

では顔周りの麻痺はどのようにして取るのでしょうか?口元に麻痺があったのですが、直接麻痺がある場所をマッサージしてもよくはなりませんでした。当然手や足も同じです。ですから必要なマッサージの場所は別にあるのだと思いますが、その情報は掴むことができませんでした。

ただ神経のことを考えるなら…。

それは胸の骨のような気がしています。それでお風呂に入ったとき氷を肋骨に触れるように当ててやったりしているのですが、子供は嫌がるのでなかなか難しい。

でもきっとどこかにあるのだと思います。それを何とかして見つけたい…。

ということは、麻痺ができる流れと取る流れもあるということですね。






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