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2023年ロシア渡航の手引き

筆者は2023年3月10日から20日までの間、ロシアに渡航していた。昨年2月からのロシアによるウクライナ侵攻により非常に行きづらくなってしまったロシアであるが、現状観光のための渡航は可能である。筆者が確認できた範囲における情報を記事にしておくことで今後渡航する予定の方に役立てばと思う。なお本記事の情報は基本的に筆者がロシアに滞在していた時点での情報である。(最終更新:4月16日)

ロシア渡航は危険か

2023年4月現在、外務省海外危険情報ではロシア全域にレベル3が発令されている。これは渡航の中止勧告であり、基本的にどのような目的であれ渡航は止めるべきであろう。

https://www.anzen.mofa.go.jp/info/pcinfectionspothazardinfo_178.html#ad-image-0

ただこの外務省による危険情報は主に紛争やテロによる危険を対象として扱うため、短期旅行者が実際に遭遇しうるであろう危険な状況とは乖離していることも事実である。その点で言えば、ロシアは警察権力が非常に強い国であり、強盗や暴行など旅行者が直接的な身の危険を感じるような状況に陥る確率は極めて低く、安全な国と言えるであろう。

(とはいえ現在進行形でウクライナ‐ロシア間で戦争が起こっている以上、宇露国境近辺をはじめ、前線への物資供給拠点となっているヴォロネジやロストフ・ド・ナヌーなどの都市への訪問も控えた方がよい。)

さらに現在ロシアは日本などいわゆる西側諸国を非友好国に指定しており、トラブルなどに遭遇したときにこの点がどのようなマイナスの影響を引き起こすかは予想できないことも念頭においておく必要があると思う。

ビザについて

現在、日本人に対する観光ビザは(おそらく)通常通り発行されている。筆者が確認できた範囲では観光ビザを取得する方法は二つある。

(1)ロシアビザセンター(RVC株式会社)に代行依頼する

これが最も簡単な方法である。必要な書類は有効なパスポートと証明写真のみである。

パスポート返送まで含めて24500円~。こちらは観光バウチャーや招待状などの追加の書類を自力で用意しなくてもよい分価格は少し高くなっている。

(2)自力で取得する

ビザ取得に必要な書類一式を自分で揃えて、ビザ受け付けの公式代理人あるいは旅行会社に取得依頼を行う方法である。

こちらは大使館からビザ業務を公式に委託されているロシアビザセンター(1つ目と同じ名前であるがこちらが公式)で取得する。パスポートなどの他に観光バウチャーなる書類が必要である。こちらの方法だと費用は12500円+バウチャー発行費用+(郵送料金など)である。
「ロシア 空バウチャー」などのワードで検索すれば取得方法が詳しくでてくるので必要な方は調べてみてほしい。なおコロナ以前では下に載せたTravel Russiaというサイトが最も手軽にバウチャー発行を請け負っていた。(記事執筆時点で取得できたという話は聞いたが、現在なお取得できるかは確実でない)

他に観光バウチャーを取得する方法としては滞在先のホテルに依頼する方法が存在する。外交人観光客をメインの客層としている高級ホテルなどでは公式サイトでVisa Supportなどという名目で観光バウチャーを発行してくれるところも存在する。ただこの場合そのホテルに必ず滞在するなどの条件がある。

ロシアへの出入国手段について

ロシアに対する経済制裁の影響によって、現在日本や欧米諸国などの航空会社はロシア上空を飛ぶことが出来ない。そのためロシアへの出入国手段は非常に限定されている。
それら限定された航空便の検索についてはskyscannerは使えないが、Googleフライトを使うことで非ロシア系の航空会社の便については検索できる。

(1)東・東南・南アジア経由

日本・韓国・シンガポールからの航空便は停止されているがいくつかの入国方法がある。

2023年4月ごろより中国経由の航空便が続々と復活しだした。同時にトランジット時のビザ免除も復活した。いまだ多少の制限は存在するが、現在最もロシアに近い方法である。
中国国際航空・中国東方航空・中国南方航空はそれぞれ北京、上海、西安などの都市よりモスクワ行きの直行便を運行している。特に中国国際航空・北京首都空港で乗り継ぐ場合はPCR陰性証明書すら必要ない。
また旅行会社を通して予約する必要はあるが、アエロフロート航空がハバロフスク‐ハルビン、モスクワ・ハバロフスク・ウラジオストク‐北京、モスクワ‐上海・広州を週1~3便程度運行している。
これらの中国‐ロシア間の航空便は今後増加していくと考えられるため、適宜最新情報にあたって欲しい。

また韓国・東海港からウラジオストク港までのフェリーの旅客輸送が再開したようだ。(ただ公式サイト経由では日本人は国籍欄に記入できず予約できなかったのでメール等で予約・乗船できるか確認する必要がある。)

他に航空便としてはバンコク・プーケット・デリー・ムンバイ・コロンボなどにアエロフロートが乗り入れているので利用できないこともない。(しかしクレジットカードなどの決済手段が使用できないため旅行会社に代行予約を依頼する必要がある。)

(2)中東経由

これが最も一般的な方法であろう。複数のルートが存在するが、日本に乗り入れている航空会社で乗り継ぎ一回まででロシアに到達できる手段としては、エミレーツ・カタール・エディハド・ターキッシュ・エチオピア・エルアル航空が候補となる。行先もモスクワだけでなくサンクトペテルブルグやカザン・ソチなども候補となる。
他に中東方面ではカイロやバクー・エレバンなどからの空路が本数も多く安定している。なお筆者はバクーからアゼルバイジャン航空を利用してモスクワに到達した。
さらにアゼルバイジャンとジョージアからは陸路でロシアに入国できる。(ただしロシア→アゼルバイジャンへは面倒な制限が存在するようだ。)

(3)欧州経由

EU各国からの航空便は停止されているが、欧州方面からロシアに到達する方法は皆無ではない。まず空路ではエアセルビアがベオグラード‐モスクワ・サンクトペテルブルグ間を1~2本/日程度運行している。
他にはバルト三国・フィンランドから陸路で入国する手段も存在する。筆者が確認したところではヘルシンキ・タリン・リガからサンクトペテルブルグとモスクワ行きのバスが運行していることを確認した。日本からの行きやすさであればヘルシンキ経由であろうか。

(4)中央アジア経由

中東経由と並んで一般的な方法が中央アジア経由であろう。もともとロシアと関係の深い国が多いため多くの航空便が就航している。しかし日本から到達しづらいことが難点である。ロシア・日本からともに直行便が存在するのはウランバートルのみであるウランバートルとタシュケントである(ウズベキスタン航空の成田便が週1往復であるが復活した。)他にアスタナ・アルマトイなどで乗り継げばロシアの様々な都市に到達できる。特にロシア中部の主要都市であるエカテリンブルグやノヴォシビルスクなどに到達しやすい。

ロシア資本ではあるがロシア国内線最大手のS7航空がTrip.comをはじめとしたサイトでのオンライン予約が可能となった。S7航空はハブ空港であるノヴォシビルスクからウズベキスタン方面への路線網をはじめ、モスクワやイルクーツクから国際線を各地に就航させている。

またモンゴルとカザフスタンからは陸路でロシアに入国できる。モンゴルからはウラン・ウデやイルクーツクへ、カザフスタンからはオムスクやサマラなどへバスや列車で入国できる。

宿泊予約について

現在、西側資本であるbooking.comやexpediaなどの便利なオンラインホテル予約システムはロシア国内の宿泊施設表示しないようになっている。そのため通常余り使わない方法で宿泊予約をしなければならない。

(1)Google Mapで検索する

西側資本ではあるが、Google Mapを用いて宿泊予約は可能である。宿泊したい地域を表示してホテルを検索し、日付や人数などの情報を入れてやることでホテルを絞り込める。基本的にmap上で値段が出るホテルは何らかのサイトを経由することでオンラインで予約が完結するようになっている。

ウラジオストクでホテルを検索した

このようにして表示されたホテルから条件にあい、かつ支払手段が現地であるようなホテルを探すことになる。筆者のおすすめとしてはホテルが自社の公式サイトを持っているようなホテルは信頼度が高くてよいかと思う。(ただし価格帯は高くなることが多い)

(2)ロシア系の予約サイトを利用する

日本に楽天トラベルやじゃらんのような予約サイトが存在するように、ロシアにも自国資本のオンライン宿泊予約サイトが存在する。その中でも英語表示ができるサイトも存在するので、そのようなサイトを経由して予約を行うことができる。筆者が確認できたサイトを下に示しておく。

こちらはロシア資本かは確認できなかったが(所在地はロンドンになっている)、ロシアでの予約が可能である。

こちらはロシア資本かつ複数の都市にカスタマーセンターが存在する。さらに英語表示も可能である。

こちらは中国旅行でお馴染みC-tripであるが、ロシアのホテル検索も可能である。(中国語だが)

ロシアIT業界最大手のYandexも予約サイトを運営している。(ロシア語のみ)

(3)当日飛び込みで宿泊する

ロシアでも可能である。頑張ってください。

支払い手段について

ロシアに対する経済制裁の一環として、ロシア国外で発行されたVisaおよびMastercardの両ブランドのクレジットカードはロシアでは使うことが出来ない。JCB?そんなブランドは知らないです。
そのため基本的にはすべての支払いは現金を使うことになる。(筆者は銀聯カード持ってるけどね…)

現在ロシア政府は外貨を国外に持ち出されることを非常に嫌がっているので、出国時には再両替出来ないものと思って計画的に両替する必要がある。モスクワやサンクトペテルブルクの市内で確認したかぎりでは米ドルとユーロについては市内でも両替が可能であるが、日本円を両替できる場所は空港以外では確認出来なかった。
筆者が入国したモスクワ・ドモジェドヴォ空港では到着ロビーにある両替所は非常にレートが悪かったが、2階のズベルバンクでは市内より少し悪い程度のレートで両替出来た。

参考までに両替時のレートを確認できる範囲で置いておく。
公式レート(3月10日):1US$=76.20露ルーブル
           1€=80.28㍔
                           100¥=56㍔
空港ズベルバンク :1$=71.35㍔
          100¥=42㍔
空港到着ロビー両替所:1$=1€=60.00㍔
市内両替所(3月14日):1$=76.00㍔
           1€=81.00㍔

モスクワ市内では確認した範囲では↓の銀行のレートが比較的良心的であった。(北朝鮮レストラン・コリョのすぐそばにある)

日本から直接ロシアに行く場合には、空港のあまりよくないレートで円⇒ルーブルに両替するか、日本で一度ドルやユーロに替えてから再度ルーブルに替えるかの手間が必要なので、可能であれば日本国内でルーブルに替えていってもいいかもしれない。

その他

インターネット規制について

渡航前に予期していたよりはネット規制は少ない&ザルである。Google系のアプリ一式は日本と同様に使えるので地図や検索、メールなども特に問題ない。SNSは使えないものもあると聞く。筆者が利用しているものではTwitterは使えなかったが、LINEは問題なく利用できた。
ただしこれらのネット規制は突然厳しくなったりすることも予想されるので、渡航前に事前にVPNを用意しておく&ロシアでも問題なく使えるアプリをインストールしておくのが無難ではないかと思う。
筆者が利用したVPNは下の二つである。ExpressVPNは高速だがしばしば繋がらなくなった(結構いいお値段するのに…)、一方でセカイVPNは中速(低速ではない)だが安定していた。なおどちらのサービスも初回利用で最初の一か月のみの利用の場合は無料で利用する方法がある。

国内移動について

ロシア鉄道の公式サイトは国外からは利用できない。時刻を検索したければロシアにサーバーを持っているVPNを利用するしかない。しかしクレジットカードが使えないのでどちらにしろ切符の事前手配は出来ない。アエロフロートやS7航空などの公式サイトは日本からも閲覧可能であるが、やはり購入は出来ないS7航空はOTUサイト経由で購入できるようになったようだ。どちらもロシアに入国してから現地窓口で購入するか、あるいはロシアにコネを持つ旅行会社を通せば日本からでも予約できる。

戦争の影響について

筆者はモスクワ・ニジニノヴゴロド・サンクトペテルブルクの3都市を訪問したが、これら大都市を常識の範囲内で観光している限りにおいては戦争の影響を感じることは一切ない。ロシア国内での徴兵でも地方部に重点的になされていたりと、都市部と地方部では戦争による影響に非常に大きな格差が存在する。わざわざ見に行こうとしなければ戦前と同様の観光旅行を楽しむことが出来るだろう。ただし今後の戦況次第では市民生活に影響が出てくる可能性もあるので渡航の際は十分に注意してほしい。

ロシア旅行を扱っている旅行会社

ここまで個人ですべて手配することを前提に述べてきたが、このような状況でもロシア旅行を扱っている旅行会社はいくつか存在する。その公式サイトを下に載せておく。

多少の手数料はかかるが、アエロフロートなどの航空券やロシア鉄道のチケットなど旅行会社に依頼するしかないものも存在するので適宜利用してほしい。

まとめ

以上のように2023年3月現在、日本人が観光でロシアに渡航することは可能である。
ただし先ほども述べたようにロシア全土で外務省危険情報レベル3が発令されていたり、日本が非友好国に指定されていたり、さらには侵略戦争を遂行中の国に渡航することの倫理的な是非もあり、渡航をおすすめできる状況ではない。私はロシアという国も、そこに住む人々も、そこで培われてきた文化も好きであるが、現在の状況で渡航することは一切推奨しない。渡航の是非を自己の責任でもって判断し、適切にリスク管理を行うことができる方以外は、いま渡航すべきではないだろう。
この世界にはロシア以外にも面白い国や地域はたくさんあるので、そちらへの渡航を優先した方が建設的であると思う。

ではでは皆様もよき旅ライフを。

サンクトペテルブルクの夜景

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