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言葉を想う。

言葉について。

時折、”面白い言葉”に出くわすことがあります。

側溝の溝に木片が差し込んであり、表面に赤いペンで乱暴な大きな字で
『取るな、バカ!』
と書かれているのを見たことがあります。
(その木片を取ると、側溝に溝が出来て危ないのか、側溝のふたが不安定になるのかはわかりません。当然、取ってみたい衝動に駆られました。でも、我慢しました。バカ!っていうそのくだりが怒りに満ちています。赤字に!マークもついているし)

また、木造アパート前に路上駐車してある原付バイクの後ろに、なにやら張り紙がしてあることがありました。近づいてのぞき込むと、黒マジックで
『こんど、ガソリン抜いたら殺すからな』
と書いてあり、急いでその場を離れたこともあります。
(路上駐車するなという意思表示に誰かがガソリンを抜いたのか、単なるイタズラなのか?バイクの主の”こんど”という言葉だけが平仮名なのが謎すぎます。殺伐としたその言葉に平仮名のインパクトがすごい)

また、随分と前のことですが、ある家のポストに
 『お願いですから、新聞を取らないでください』
という貼り紙を見つけたことがあります。
(ヒトの家の新聞を盗む泥棒に”お願いです”って、下から言うのは、家主さんは相当、まいっているんじゃないかなぁ。取らないであげてくださいと願いました。でも、ちょっとだけニヤニヤしてしまいました。すいません)

”言葉”って難しいけど面白い。

書いた人が垣間見える気がします。

10年前、風邪をこじらせ、長い間、咳がとまらないことがありました。
(今だと人目が怖くて外は歩けない)
僕は風邪になると、長引くことが多いのですが、その時は特別でした。
何度も医者に通いましたが、まったく改善しません。
病院を変えることにしました。
初めて行く病院ですした。
不安を抱え、診察室に入りました。
年配の女医さんでしたが、僕の咽喉の奥を見て、こう言ってくれたのです。

「最終コーナーを回ったところですね。大丈夫。もうすぐ、良くなります」

何かの競技に喩えたその言葉に僕の肩の力がふっと抜けました。
気持ちが一瞬で楽になりました。
咳き込みがあまりにひどくて、食べたものを戻してしまうこともありましたから、飲んだり、食べたりするのが怖い感じもしていましたし、僕はだいだい楽観的な人間なのですが、この時ばかりはちょっと、気分が落ちていました。
ですから、その”何気ない言葉”に希望を見出し、ホッとしたのかもしれません。
その女医さんの宣言通り、まもなく、咳も止まりました。

「大丈夫」

言葉には”魔力”があります。

新型コロナ・ウィルスに翻弄され、踏みにじられようとしている現在、僕たちすべてがこの言葉「大丈夫」を言える日が来ますように。