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農業基本法改正

政府は昨日(2月27日)改正農業基本法を閣議決定した。その内容は下記の通り。背景に書かれている通り、「世界の食料需給の変動」、つまりロシアとウクライナの戦争やイスラエル紛争など世界各地で戦争が始まったり、中国が日本産の水産物を輸入停止にしたり、台湾あたりで有事の可能性が高まったりして、食料の多くを輸入に頼っている日本は食料を外国から調達できなくなるかもしれない。ということである。

加えて、近年の気候変動で、これまでとれていたものが不作になったり、洪水などの甚大な被害を受ける懸念が高まっている。巨大地震の発生の可能性も高まっている。

国内では高齢化が急速に進み、日本人の胃袋の数と容量が減少傾向にあること。農業者は高齢化し離農して減少していること。農業の生産性が低いこと。などを法律改正の背景としてあげている。

さらに、最近では国際的な潮流から脱炭素への対応も求められており、法律の改正が必要になった。

日本の食料自給率の低下は、先進国で最低ラインにあるが、この原因は日本の「食」の嗜好変化である。戦後の高度成長期に日本人の食は西洋化が急激に進み、小麦や畜産物などを好んで食べるようになった。数十年という短期間にこれほど食の嗜好が変わった国は他にないと言われている。

食は西洋化したものの、その食材(農産物、畜産物)は日本では作りづらい。結局、パンやパスタなどの材料となる小麦、家畜の餌などの多くは海外からの輸入に頼らなければならなくなった。

一方で、日本の気候に最適化された水稲(米)の消費量は年々低下し、1971年から減反政策が行われるようになった。水田は小麦や大豆に転作され、もう何年も田んぼに水を張っていない。とか、かんがい施設が老朽化して、水を張れない田んぼもある。

肥料原料も多くは海外から輸入している。化学肥料がなければ今の生産量は維持することができないが、食料と同じく有事の際は国内への供給が止まる恐れがある。

農家の減少も課題で、新たな担い手を育てていかなければならない。企業の農業参入なども今後活発になるだろう。

少ない農家が広大な農地を経営することになるが、生産性を高めるために最新のスマート農業技術も必要というわけだ。

国の食料安全保障を担う農業は保護されるべきであり、これまでも保護されてきたが、安全保障のリスクが高まり今回の法律改正に至った。

この改正は、農業者を中心にさまざまな議論を呼ぶことになるが、この内容については昨年の食料・農業・農村白書でも重点的に説明されていたことである。知らなかった。という話にはならないだろう。


#日経COMEMO #NIKKEI

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