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なぜゲーム分析が面白いのか①〜ゲームに分析が必要な理由〜


株式会社リーン・ニシカタの西方智晃(にしかたともあき)と申します。

はじめましての方も多いと思いますので、バックグラウンドについて紹介させていただきます。私は、ヤフー株式会社でエンジニアとして検索エンジンの開発、その後、株式会社ディー・エヌ・エーではデータアナリストとして、ソーシャルゲームの分析に携わってきました。

一見すると全く異なるドメイン・業種なのですが、ビッグデータから何かしらの規則性を見出して、生活やビジネスに貢献するためのインサイトを導き出すという仕事は両社で共通していました。これらの経験を活かし、現在は起業して、主にスマートフォンのゲームアプリ業界のお客様を中心に、データ分析業務を通じて意思決定のお手伝いをしています。

さて、今日はゲーム分析の面白さをお伝えする前段として、以下のような構成でお話しさせていただきたいと思います。

ゲームのビジネスモデルの変化

ゲーム分析のお話をする前に、昨今のゲームにおけるビジネスモデルについてお話しさせてください。

スマートフォンのアプリゲームが登場する以前は、ゲームといえば家庭用ゲーム機でのプレイを前提としたコンシューマーゲームが中心でした。最近ではオンライン要素が活用されるようになりましたが、当時のコンシューマーゲームのビジネスモデルは買い切り型がほとんどで、売上の多くは発売直後にピークを迎えるため、いかに発売日にたくさんのお客様に購入していただけるかどうかという考え方が主流でした。

例えば、家庭用ゲーム機で発売されたファイナルファンタジーの週次売上本数のグラフを見てみましょう。

図1 歴代ファイナルファンタジーの週次売上本数
出典: https://w.atwiki.jp/ff13funeral/pages/52.html

売上本数の多くがリリース初週に寄っているのがわかると思います。

一方、2009年頃、基本無料で遊べるが、ゲーム内アイテムを都度購入できるようにすることで、リリース後にもマネタイズができるソーシャルゲームが登場しました。黎明期はフィーチャーフォンを対象とした怪盗ロワイヤル探検ドリランド、2012年頃になるとスマートフォンが普及し、その表現力を活かしたパズル&ドラゴンズモンスターストライクといった現在でも続いているヒットタイトルがリリースされました。

コンシューマーゲームでは、ゲームクリアまでに必要な要素を全部最初から詰め込んでリリースするという考えで開発を行う必要がありました。しかし、ソーシャルゲームでは、リリース後のアップデートを繰り返すことで、お客様に長期間にわたって遊んでいただくことが可能になりました。アップデートはインターネットを介して行われるため、ゲームの遊び方もインターネットの利用が前提となり、その中でもユーザー同士のコミュニュケーションを中心とした競争や共闘といった体験がより身近になったことがソーシャルゲームの魅力であると考えています。

その結果、リリース後も継続してお客様を増やすことができ、売上を作れるという、これまでとは異なるビジネスモデルとなりました。

以下の資料では、モンスターストライクでは、リリース後のアップデートにより、遊んでくれるお客様を積み上げていることがわかります。

図2 モンスターストライクの利用者数推移
出典: https://gamebiz.jp/news/156497

このように昨今のスマートフォンにおけるゲームアプリは、リリース後のアップデートを前提としたタイトルが多く、我々が分析として扱うのはこのようなゲームです。

ゲーム分析とは何か

ビジネス観点として第一に追うべきKPIは売上なのですが、あくまで売上は面白さの対価であると我々は考えています。「面白さとは何か」というテーマは、別途お話しさせていただきたいので今回は割愛し、シンプルにお客様に支持されているかどうかを判断する指標として、デイリーアクティブユーザー数(DAU)についてご紹介していきます。DAUとは、特定の日にゲームを1回以上起動したユーザーの数を指します。

さらに、DAUは新規ユーザー数継続率に分解して考えることができます。継続率とは、新規にゲームを始めたお客様が、何日後にどれくらいの割合でゲームを続けているかという指標です。実際には図3のような形で、日毎の新規ユーザーと経過日数ごとの継続率を可視化するケースが多いです。

図3 新規インストールユーザーの継続率
※データは架空のものです

例えば、1日後の継続率が想定よりも低くなってしまっており、原因として以下のような仮説が出た場合を考えます。

  1. ゲームのオンボーディングが長すぎて中断してしまった

  2. 最初に引ける無料ガチャの結果がよくなかったので辞めてしまった

  3. マイページが複雑で、何をすればわからず、中断してしまった

  4. 最初のクエストが難しすぎて、諦めてしまった

どれも当てはまりそうですが、対策をするには、それぞれ違ったアプローチが必要になりそうです。しかし、開発工数は限られているため、優先順位をつけなくてはなりません。この優先順位をつけるための深堀りこそ、我々は「ゲーム分析」だと思っています。

インターネットを利用したサービスの多くは、いつ誰が何をどうしたという行動記録(ログ)をサーバーに蓄積しています。例えば、RPGのようなタイトルで、プレイヤー(にしかた)が、ゲーム内でドラゴンと戦い、4ターンで討伐したというようなケースでは、バトルのログとして、図4のようなファイルが出力されます。

図4 バトルログの一部
※データは架空のものです。今回の例ではわかりやすくするため、列名を記載したり、 player_name, target_name, use_skill_name の項目を日本語表記としています。

このようなログを集計、可視化することで、ゲーム分析が可能になります。

1日後の継続率が想定よりも低いというお話に戻りましょう。例えば、縦軸にゲームインストール以降で想定されているお客様のアクションを上から時系で、横軸に各アクションへの到達率(各アクションへの到達ユーザー数/アプリ起動ユーザー数)を取り、図5のようなグラフを書いてみます。

図5 アプリ起動後から、後続アクションへの到達率
※データは架空のものです

すると、赤枠が示す通り、マイページからクエスト1-1に進むことができずに離脱するお客様の割合が最も多く、最初に挙げた仮説の中では「マイページが複雑で、何をすればわからず、中断してしまった」という仮説が筋が良さそうと判断することができます。

このように、新規ユーザーがどこで離脱しているかを可視化する手法は、ファネル分析と呼ばれています。この手法では、継続率が想定よりも低いという事象に対して、仮説の検証と、その中から影響が大きいものを明らかにすることができます。この結果を受けて、どんな対策を優先すれば良いかを決定することができ、DAU減少の低減、DAUの積み上げにつなげることができます。

以上が、ゲーム分析の基本になります。

おわりに

今回は、以下の2点について述べさせていただきました。

  • ゲームのビジネスモデルの変化

  • ゲーム分析とは何か

そして、最後に簡単なゲーム分析の例としてファネル分析の例を紹介させていただきました。昨今のオンラインゲームは、リリース後もユーザーのニーズに合わせたアップデートが必要であり、アップデート内容について意思決定をするためにゲーム分析が必要になるケースがあるということを知っていただけましたら幸いです。

ゲーム分析は他にも様々な場面で活用されています。
次回は、他の活用事例にも踏み込んで、ゲーム分析ならではの難しさや楽しさについてご紹介できればと思っています。

これは宣伝になりますが、会社立ち上げの経緯など、こちらの方に記事がありますので、もしよかったらご覧になってください。