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自作詩

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ナルが書いた自作の詩のようなものたちです。読んでいただけたら成仏できます。
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#浜辺

タチアオイ

思い出していたのは あなたの長い髪と、はにかむような笑顔 じーじーじーじー 懐古の隙間にあぶらぜみ どうせなら波音がよかった あなたがいつも言っていた あの浜辺を探している ふらつく足取り あの日は千鳥足で あなたが見たいと言い出して、ふたり 海までの下り坂 ひぐらしとタチアオイ てのひらの熱 ぼくは今日、ひとりきり てのひらはつめたい じーじーじー もはや耳鳴りと化したいのちの音に 現実に戻される、もどりたくない さっきまでここにいたあなた 幻だったならそれでよかった

朝焼けに消える

愛では足りないような悲しい色 涙を持て余すような寂しい音 波にこの足を忍び込ませる あの日のあなたみたいに 夢だったのは、あの日まででしょうか あの日からずっとでしょうか あなたの笑う日々 あなたのいない日々 3月の風は歌わない わたしはもう祈らない 朝焼けの美しさと それを独りで見る侘しさは あなたはきっと知らなかったでしょう 知らなくて良かったと思うわ 本当にそう思う もう会えないこと、あなたがいないこと それさえもまだ嘘みたいだから 波に預けようとした身体も、あの