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自作詩

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ナルが書いた自作の詩のようなものたちです。読んでいただけたら成仏できます。
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#岩手

どうかその目を閉じないでいて いつか闇を舞う、蛍の光を けして見逃さないように どんな暗闇にいたとしても あなたはあなたでいるのだと 失わずにいるその呼吸が あなたの命の証明なのだと だから、もう一度だけ 閉じた瞼を開いてみて 初夏の折爪に舞う姫蛍 その命が浮かぶ暗闇の深さが あなたの命を讃えるだろう どうかその目を閉じないでいて 闇を舞う鮮やかな数多の命が あなたの全てを讃えているから 作中に出てくる「折爪」とは、岩手県二戸市と軽米町、そして九戸村にまたがる「折爪岳

まぼろしを紡いで

もう全部やめてしまおうか キーボードを叩く音が止まる 夏の風ばかりが過ぎる静寂 夜の闇に右手をしのばせる いつまでも変わらない世界に 理想とは程遠い自分に あきらめる癖ばかりついた それでも言葉を紡いだ ニライカナイの夢を見て 湯船に沈めた手首 思い出すのは十府ヶ浦 あの朝焼けのまぼろし 大八洲を駆けるのはこころ ただぼくのこころ 息を吐き出して、静寂を壊した 夏の夜は少しだけぼくに寄り添う あの朝焼けに消えてしまえば もうぼくはきみに会えないのか 認めよう、生きよう